7話 作戦メンバー
今日は叩き起こされる前に起きることが出来た。流石に少しだけ疲れが残っている。
「おはよ」
「あぁ、おはよう」
イザベラはすでに起きて散弾銃を点検している。完全にイザベラのものとなったな。どうせまともに扱えないから良いんだけど。
「それで、ここに永住するの?」
「イザベラ的にはどっちが良い?」
「……私としては永住は無しかな」
「やっぱり?」
「昨日の対処を見てて思ったんだけど、銃の扱いは私以外は素人ばっかり、多少使い方を知っている程度。昨日より多い数のゾンビが襲撃してきたときは、多分この施設終わるよ」
「俺も似たような意見だ。もう1つ加えるなら食料だな。あの調子だと、ここら辺の保存食は食い尽くしているんだろう。だから、大型トラックを使って遠くから運んでいるんだろ。……あくまで推察だが」
方針が決まったところで田所さんに報告しに行くか。車が完成するまではお邪魔させてもらうけど。
初日に連れて行かれた部屋に行くと、田所さんや他の人たちが何かを話し合っていた。
部屋においてあるホワイトボードを見ると、箇条書きで今後の問題点と書かれていた。内容を見る限り、食料と武器の調達に関することだった。どうやら、ここら辺のスーパーやコンビニの食料は無いようだ。武器の面に関しては、警察署や交番の拳銃は全て持ち出されており、弾薬はもう無いらしい。
「どうしました?」
「申し訳ないんですが、明後日にはここを出発しようかと考えています」
「そうですか。それは残念です。それで、相談なんですが」
どうせ町に食料を取りに行ってくれとか、武器を探しに言ってくれとかだろ。
「町にバスを取りに行ってほしいんだ」
「バス?乗り物の方ですか?」
「……ほかに何がある?」
「本当は客人に頼むのは気が引けるが、昨日の活躍を見て気が変わった」
「え?俺は別に……」
「大隅さんも、手馴れた様子で素晴らしかったですよ」
その後は、勝手に話が進んでいった。この施設を捨てて、浜名湖にあるらしい生存者の基地に行くらしい。そこには自衛隊が主導となって周辺のゾンビ排除、基地内の治安維持をしている。
「そこで、先日改造させていた2台のSUVを使って6人で行って貰う。残りの4人には、この話はしてある」
「出発は明日の朝だ。武器は警棒と拳銃を持たせる」
話の後、部屋に戻るとすでに昼食が置いてあった。今回もカレーか。カレーを食べていると、扉を叩く音が聞こえた。
「どうぞー」
4人の男女が入ってきた。4人ってことは明日、一緒にバスを取りに行く人か。
「あ、イザベラちゃん」
「樹ちゃん」
「知り合いか?」
「昨日、銃の扱い方を教えたの」
「自己紹介しますね。中村 樹です」
見た目はスレンダー……言い方を変えれば貧乳だ。本人には言わないけど。
「どうも、堅田 一です。27歳です」
いかにも、運動してますって体をしてる。こいつになら別に拳銃を渡さずに、金属バットだけでもいいんじゃないか?ってか、同じ名前か。この作戦の間、イザベラには苗字で呼んでもらおう。
「山崎 榛名です」
ナイスバディのねーちゃんだ。どこかのアイドルグループに所属でもしていたって言われても、信じるレベルだ。
「馬場 高次です。元、警察官です」
元警察官は心強い。まぁ、職業を強調する必要性はわからないけどな。
「それで、何のご用件ですか?」
「明日の打ち合わせにでもと、思いまして」
打ち合わせするんだ。ぶっつけ本番だと思ってた。んで、仕切るのは元警察官の馬場か。予想は付いていたよ。
「明日、バスが置いてある場所を知っているのは堅田さんのみです。なので、先頭のSUVの運転は堅田さんに任せます。後ろのSUVですが、完成しませんでした」
「え?じゃあ、一台で行くのか?」
「そこで、大隅さんが乗ってきた軽自動車を使います。そのため、必然的に運転者は大隅さんです」
「マジで!?」
「……マジです。バスが置いてあるのは街の小さな観光バス会社です。鍵も会社の中を探せばあるはずです」
不確定要素が多いなぁ……。後ろについていくと見せかけて逃げようかな?
「一。逃げようなんて考えたらダメだよ。一応、恩は返さないと」
「では、明日の朝食後に作戦が始まりますので」
四人が部屋から出て行った。明日に備えて寝よう。
「ねぇ、まだ起きてる?」
「起きてる。さっさと寝ろ」
「明日で死ぬかもしれないんだよ。少しくらいいいでしょ」
「……なんだよ?」
「私達の出会いって少し変わってるよね」
「そうだよな。お前が急にコンビニに入ってきたと思ったら第一声が「助けてください」だもんな。……いや、別に初めてじゃないな」
「え!?初めてじゃないの!?」
「バイト初めて間もない頃にストーカーに追われてるとか言う女が来たんだ」
「あの頃は、私をリードしてくれていたのになぁ……チラッ」
「もう無理だ。ってか、お前が変わりすぎなんだよ!」
「ナンノコト?」
「あー、やめやめ。寝る!」
「おやすみー」
本当に明日が陣し最後の日にならないように祈ろう。