67話 運転手
散弾銃を持って玄関に行くと、玄関の扉から月の光が差し込んでいる。たまに前を何かが通るってことはゾンビがすぐそこにいるってことなんだろうな。このタイプの散弾銃はどうやって使うんだろうか?多分、引き金を引けば弾が出るんだろうけど、どうやって弾を入れるんだろうか?テレビとかで特殊部隊が持っているのを見たことがある。
それにしても、石川県に向かうつもりが結構な遠回りになったなぁ……。別に大阪の避難所が良ければそこにとどまってもいいかな?でも、行った避難所がことごとく壊滅してるし……。いや!気のせいだ!……ちょっと見回りでもするか。
散弾銃を持って2階に上がる。階段を上って目の前の部屋の扉を開けた。すると、ベットの上で死体が横たわっていた。しかも、腐敗が進んでいるのか、少し臭う。確かにこれだと使い物にならないな。さて、もう一つ部屋があったな。部屋の扉をゆっくりと閉めると、次の部屋の扉を開けた。……女の子部屋か。かわいらしいぬいぐるみとかで埋め尽くされている。もしかして風呂場の死体ってこの部屋の人物か?
机の上にノートパソコンが置いてある。開いて、電源ボタンを押すと、画面が光った。まだバッテリーが生きているんだ。でも、パスワードを入れないとまともに使えない。どうせなら持っていくか。ノートパソコンの電源を切って閉じると、正面玄関へと戻る。玄関へと戻ると、中村がすでに座っていた。
「なにしてたの?さぼり?」
「ちげーよ。ほら、使えそうなノートパソコン。ま、ロックがかかっていて使えないけど」
「充電ケーブルは?」
「あ、忘れてた」
「それ取ってきたら見張りの交代ね」
もう一度階段を上ってさっきの部屋に充電ケーブルを取りに行く。充電ケーブルはコンセントに刺さったままになっていた。コンセントから充電ケーブルを引き抜いて、束ねて部屋を出た。階段を下りて玄関にいる中村へと散弾銃を渡す。
「2時間がんばるね」
「いや、静かにしてれば何も起きないから」
リビングへと戻ると、高田さんがいびきをかいて寝ている。……さすがに起こすか。高田さんの体を揺らす。……起きない。もっと強く揺らすと、いびきが止まって起きた。そして起きた。
「……なんだよ」
「いや、かなりでかいいびきかいてましたよ」
「マジで?」
「マジです」
「ちなみにいびき止まったりしてなかった?」
「いや、しないと思いますよ」
「良かった。昔、睡眠時無呼吸症候群?ってやつになっててな」
「へーそうなんですね」
「興味ないだろ」
「そりゃ……俺にはどうしようもないですからね」
「まぁ……そうなんだけどさぁ……もうちょうい反応があってもいいんじゃないか?」
「そういうの昔から苦手なんですよね」
机の上のペットボトルの残り少ない水をコップに全部入れて飲み干す。外はうっすらと明るくなってきている。イザベラも起こすか。ソファーで寝ているイザベラの体をゆすって起こす。
「……見張り交代?」
「いいや、もうすぐで出発するぞ」
「もうそんな時間?……あれ?水無いの?」
「もうない」
玄関で見張りをしている中村を高田さんが呼びに行った。さて、トレーラーまではそんなに距離はないはずだ。昼までにはたどり着くことはできるはず。
「さて、行くか」
散弾銃は高田さんとイザベラが持ったままだ。中村はリビングに置いていた小銃を手に取った。
「なに?使いたいの?」
中村が小銃をこっちに差し出してきた。無理に決まってるだろ。今持ってる拳銃ですらまともに当てることできないんだから。
「中村が使ってくれ」
「それじゃあ、行くぞ」
高田さんがゆっくりと玄関のドアを開けた。幸いゾンビは見当たらない。……いた。向かい側の家の窓にこっちを見ているゾンビがいる。こっちに気が付いたのか窓を叩き始めた。窓を割られる前に以下いないと割れた音でこっちに集まってくるかもしれない。
「こっちだ」
先頭を進む高田さんについていく。途中で筋肉モリモリなゾンビが倒れている現場を通った。昨日倒したままの現状で残っている。確かこの先の放置されている車両付近で……あれ?池田さんの死体が消えてる。あぁ、ゾンビになってどっか行ったんだな。
「トレーラーの周りにまだゾンビいるかな?」
「どうだろうな?あ、この先にゾンビいる」
「私が行ってくる」
いつも通り、散弾銃を持ってイザベラがゾンビにフルスイングをかました。ゾンビの頭が90度へしまがって倒れた。
「一体、あんな華奢な体でどんな力してるんだよ……」
高田さんが散弾銃を持ちながらつぶやいた。いい加減にしとかないと、隠しきれなくなる。大阪の方では浜名湖での話が伝わっているのかどうかわからないけど、変な噂がたってもめんどくさいことになるだけだ。
「ねぇ。イザベラさんどうするの?あんな調子で暴れられたら隠しきれないよ」
後ろをついてきている中村がこっそり話しかけてきた。
「いや、わかってるんだが……俺たちが倒しに行っても数倍は時間かかるぞ」
「……私たちが足手まといになってるのは知ってる」
「……どうした?」
前を歩いている高田さんがこっちを向いた。
「いや……何でもないですよ」
横の中村は苦笑いしている。多分、俺もしてるんだろうな。そんなことをしているうちに料金所まで来ていた。よく見ると、料金所の中に作業員らしい人が、窓を叩いている。俺たちが逃げているときからいたんだろうけど、そんなの気が付かなかった。高速道路の本線へと進んでいくと、本線の合流地点に大量のゾンビの死体があった。どうやらゾンビが増えてることはないようだ。
「おい。トレーラーの所見てみろよ」
高田さんが指さす先には俺たちが乗っていたトレーラータイプのタンクローリーのそばにゾンビがいた。よく見ると、あの服装……池田さんだ。姿が見えないと思ったら、夜のうちにここまで歩いてきていたんだな。高田さんがゆっくりと歩いていくと、散弾銃をトレーラーに当たらないように池田さんに撃った。そのまま倒れる池田さんを見た後、静かに手を合わせた。
「さ、行くぞ。今日中にはたどり着きたい」
「そうですね……あれ?誰がトレーラー運転するんですか?」
全員が俺の方を見てきた。え?俺?
「え?俺が運転するんですか?」
「他に誰がいるの?」
イザベラがこっちを不思議そうな顔をしてみている。
「はいはい。運転すればいいんですよね」
「大隅にはこっちのキャリアカーの方を運転してもらう。タンクローリーは運転には少しコツがいるからな」
「そうなんだ」
「そうだぞ。中の液体が車の動きと反して動くことがあるんだ」
「へーそうなんですね」
「どっちか俺の方に乗ってくれないか?さすがに一人だと何かあったとき不安だ」
「じゃあ、私が行く」
イザベラが手を挙げた。そのまま、イザベラと高田さんがタンクローリーの方へと乗り込んだ。俺と中村もキャリアカーへと乗り込む。横を見ると、横倒しになった軽トラックに押しつぶされている富士さんの死体が見える。この戦闘で2人の命が失われたけど、名古屋の被害を考えると、かなり少なく済んだ方なんだろうな。
トレーラーのエンジンキーをひねると、すんなりとエンジンがかかった。エンジンをふかしてみると、なかなか良い感じで老けあがる。ちゃんと整備している証拠だな。隣のタンクローリーが前の車を避けるために少し下がって進みだした。そのあとに続くようにアクセルを踏んでトレーラーを進めた。
高速道路に出発した当初はゾンビが数体歩いていたが、しばらく走ると、ゾンビの姿は見えなくなった。きっと、料金所から上がってきていたんだろな。そのまま前を走るタンクローリーについていく。すると、助手席の方にある無線機から声が聞こえてきた。
『この先のインターで高速降りるって。』
「なんで?このままいけばいいじゃん」
『封鎖が完了してなくて事故車両もかなり放置されてるらしいの』
そんな話をしている間に、前のタンクローリーが左ウィンカーを出した。ここで降りるのか。遠くには本線上で横倒しになっているトラックが見えた。あれで道を塞いでゾンビが入らないようにしているのか。反対車線にはこっちに向かって来ようとして中央分離帯にしがみついているゾンビが数体いる。そんなゾンビをしり目に高速道路を下りた。
高速道路を下りると、そこはド田舎だった。たしかにゾンビは少ないけど、かなり大阪まで距離があるんじゃないのか?
『ここからだいぶ道が狭くなる。あまりぶつけないように気をつけろよ。あと、今日中に到着は無理かもしれない』
前のタンクローリーが目の前の交差点を左折した。




