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66話 ガス欠寸前

 トラックに乗り込んでエンジンをかけると、すんなりとエンジンがかかった。すぐにトラックを銃声のした方向に走らせる。


「車を手に入れたのはいいが、どうするつもりだ!?」

「そんなの考えてません!」

「嘘だろ!?」


 本当に何も考えてない。こっちの武器は中村が持っている小銃だけだ。予備の弾もどれだけあるのかわからない。そのまま走り続けると、銃声が大きくなってきた。それに唸り声も聞こえる。近い。


「ちゃんと作戦を練ろう!そうじゃないと共倒れだ!」

「じゃあ、代わりに考えてください!」

「……もうこのまま見捨てるのは……?」

「無しに決まってるじゃない!」


 中村が窓を開けて身を乗り出した。交差点を曲がると、その先には筋肉モリモリなゾンビに追いかけられている2人の姿が見えた。

 中村が立て続けに撃った。すべての弾を筋肉モリモリなゾンビにすべて叩き込んだ。もしかして、見られてない時なら弾を充てることができるのか?筋肉モリモリなゾンビが立ち止まってこっちを見た。すぐにバックしてUターンする。


「おい!こっちにひきつけてどうするつもりだ!?」

「知らないわよ!このままだとあの二人がやられるでしょ!」

「くそっ!こんなことなら一人で逃げればよかった!」


 アクセルを踏み込んでスピードを上げるがどんどん上げるが距離が迫ってくる。このままだと追いつかれる!


ガシャン


 トラックの煽部分をつかまれた。さらにアクセルを踏み込むが、速度が全くでない。むしろ下がっていく。


「早くあいつを撃て!このままだと車ごと持ちあげられるぞ!」

「わかってるけど残り少ないの!」


 中村が後ろの煽を掴んでトラックを押さえつけている筋肉モリモリなゾンビに向かって撃つ。途中で弾が切れた。バックミラーを見ると、少し仰け反ってはいるが筋肉モリモリなゾンビはまだ健在だ。必死にアクセルを踏むが、全く進まなくなった。むしろ空転しているような感じだ。


「あとは頑張れよ!」

「おい!逃げるのか!?」


 後部座先の池田さんがトラックから降りてトラックの正面に逃げだした。そのまま走っていくと、放置車両の影からゾンビが池田さんに飛びついているのが見えた。


「うわああああ!助けてくれ!」


 そのままゾンビに首元をかまれている。最初はもがき苦しんでいるが次第に動かなくなって最終的に動かなくなった。ざまぁ見やがれ!逃げるからこういうことになるんだ。


「どうするの!?いつまで張り合ってるつもり!?」

「知らねぇよ!あいつに聞いてみろよ!」


 メーターを見ると、残りの燃料がどんどん減っていく。しかも元から入っている燃料が少なったのかすでにEの位置よりも下に下がっている。アクセルを踏んでもエンジン回転数が上がらなくなってきた。


「大隅!このまま耐えて!」

「は!?どういうことだよ!」


 中村に言われるままアクセルを思いっきり踏みなおした。エンジン回転数がレットゾーンまで一気上がった。そのまま踏み続けるといきなり後ろから衝撃が伝わってきた。バックミラーを見ると、後ろに大型のSUVが筋肉モリモリなゾンビの後ろに見える。身を乗り出して後ろを見ると、SUVの運転席を見るがエアバックが開いていて見えない。運転手がエアバックを退かすと、そこにはイザベラが座っていた。助手席の方には高田さんが座っている。何となく状況は把握できた。SUVとトラックで挟み込んでいる状況だ。筋肉モリモリなゾンビがトラックの煽から手を離した。後輪が地面に接地した。すぐにバックギアに入れて完全に挟む。

 すぐに中村がトラックから降りると、後ろのSUVから散弾銃を二丁持った高田さんが下りてきた。片方の散弾銃を中村に向かって投げる。中村が受け取ると、二人で筋肉モリモリなゾンビの頭に向かって撃った。筋肉モリモリなゾンビが力なくトラックの荷台に倒れた。それと同時にトラックのエンジンが止まった。


「終わったのか?」

「終わったよ」


 中村がこっちに向かって散弾銃を向けてきた。


「ちょっ!」


 後ろから物音がした。振り向くと、死体が横たわっていた。あ、これは池田さんを襲ったやつだ。存在を忘れてた。トラックから降りて後ろのSUVに近づくと、運転席からイザベラが降りてきた。


「ようやく終わった~」

「全く、無茶する女だ……」

「よくこんな車見つけてきたな」

「逃げてる途中で見つけてたの。ただ、乗り込む暇なかったけどね」


 高田さんが首を押さえてる。そりゃ、あれだけの衝撃だったんだからむち打ちにもなるだろうなぁ。俺も覚悟しとかないと。さて、トレーラーに戻ろうにもかなり離れてしまった。トラックはガス欠で動かないし、SUVの方はぶつけた衝撃でフロント部分が完全に潰れて白煙が上がってる。それに、日が暮れてきた。これ以上の移動は危険だろ。


「これ以上の移動は危険だと……」

「そうだな。大隅の言う通りだな。どこかに家にでも籠城して明るくなってからでもいいだろ。そこまで大阪に行くのを慌てる必要ないからな」


 とりあえず、近くの家の玄関の扉を開けてみると、すんなりと開いた。家の中に入ると、玄関はかなり荒らされていた。とりあえず家の中を見て回るか。


「俺は2階を見てくる」

「私も」


 イザベラと高田さんは玄関横の階段を上っていく。俺と中村で1階の部屋を回っていく。最初の部屋は和室だ。真ん中に机が置いてあるだけのシンプルな部屋だ。……特に異常なしっと。

 次は向かい側の部屋だ。ドアを開けると、脱衣所か?洗濯機と、洗面台が並んでる。洗濯機の中は衣類が入ったままになっている。


「ねぇ。風呂場に誰かいない?」


 風呂場の曇りガラスには血痕が付いている。これは誰かいる。だが物音が一切しない。中村と無言で顔を合わせると、風呂場のドアを開ける。浴槽に腕を突っ込んだまま死んでいる血まみれな女性がいた。自殺か。浴槽の中の水が真っ赤に染まっている。


「……これはこのまましとこう」

「そうだね」


 風呂場のドアを閉めて廊下に出ると、ちょうどイザベラと高田さんが階段から降りてきた。


「上はどうだった?」

「特に異常はなかったよ。そっちは?」

「風呂場に自殺した遺体があったくらいかな。次が最後の部屋になるのかな?」

「よし。先頭は俺が行く」


 高田さんが廊下の突き当りのドアノブに手をかけた。そして勢いよくドアを開けると、素早く中に入っていった。部屋の中は少し争ったような形跡はあったが、誰もいなかった。この家は安全だな。


「なにか食べ物はないのか?」

「探してみる」


 それぞれ冷蔵庫を開けたりして食料を探す。冷蔵庫を開けたイザベラが顔をしかめた。


「くっさ!」

「早く閉めてくれ。匂いがこっちまでくる」


 そりゃ、長い間電源が入ってない冷蔵庫の中に放置されていたんだ中のものが腐っていてもおかしくはないだろ。キッチン周りを探した結果、水が4リットル見つかった。まぁ、何もないよりもましか。食器棚からコップを出すと、みんなで分け合って飲み始めた。


「生き返る~」

「なぁ、池田の奴がトラックから飛び出して逃げてたが、どこ行ったんだ?」

「あの人は……」


 池田さんの最後を伝えた。


「そうか……それはなんかすまん」

「いや、高田さんが誤るようなことじゃないですよ」

「そういってもらえると助かる」

「そういえば2階に布団とかなかったんですか?」

「あったけど、血まみれで使えそうになかった」


 それじゃあしょうがないな。周辺のゾンビもそこまで多いわけではないから、このまま見張りを交代で続ければ大丈夫だろ。


「それなら、交代で見張りをつければ大丈夫だろ」

「最初は俺がやる」


 散弾銃を持った池田さんが立ち上がった。


「何時間交代にしますか?」

「時計なんて誰も持ってないよ」

「いや、スマホ持ってる」


 池田さんがスマートフォンを机の上に置いた。画面をつけてくれたが、圏外になっていてただの端末と化している。なんで持っているんだ?


「一応玄関付近にいるから2時間交代くらいでいいだろ」

「オッケー」


 イザベラがそそくさとソファーに向かって行って横になった。中村は椅子に座ってコップに水を注いで飲んでいる。その向かい側に座る。


「水飲みたいの?」

「いや、今のところは大丈夫」

「胸辺り途中押さえてなかった?大丈夫?」

「ん?あぁ、大丈夫。運動不足なのかなぁ?」


 肋骨が折れてると思ったけど、気のせいだったのか。本当に運動不足なのかなぁ。そんなことを話している間に高田さんが返ってきた。


「そろそろ交代の時間だろ」


 机の上に置いてあるスマートフォンをつけてみると、2時間たっていた次は俺が行くか。池田さんから散弾銃を受け取ると、玄関へと向かった。

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