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57話 バッテリー上がり

ゾンビの首が変な方向に曲がった。イザベラの体力測定をしてみたいものだ。近くにあった家に入る。運よく玄関の鍵が開いていた。家の中は奇麗なままで人の姿はなかった。……人の姿があっても困るんだけどな。


「どうするの?駐車場に止まってた車を使うんでしょ」

「そのつもりだ。カギを探すぞ」

「はいはい」


 手分けをして車の鍵を探す。中村は2階。俺とイザベラは1階を探す。リビングの棚を探していると、家族写真が出てきた。千葉にある大きな遊園地で家族そろって写っている。小学校低学年の男の子と女の子が父親と母親の間に挟まれてピースしている。この家族もこんなことが起こる前は幸せだったんだろうな。


「何見てるの?」

「家族写真」

「……この人たち生きてるといいね」

「あぁ。もしかすると、この先の自衛隊基地にいるかもしれない」

「……まぁ、バリケード内のゾンビの数を考えると……ね」


 上の階から物音がした。中村は何してるんだ?イザベラと一緒に上の階へと上がり、音がした部屋へと入る。


「あ、大きな音してた?」

「何やってるの?」

「机の上の花瓶落としちゃった」


 机の下を見ると、粉々に砕け散った花瓶が落ちている。何やってんだよ。


「カギは見つかったか?」

「見つかったよ。壁にかけてあるスーツから出てきた」

「そうか。それなら早くいくぞ」


 日が暮れる前に何とかしてたどり着かないと、暗い中車での移動は自殺行為だ。

 車のカギを持って車に向かう。ゾンビは今のところ少ない。車のカギについている扉を開けるマークのボタンを押すが反応がない。


「カギの電池切れてるんじゃない?」

「鍵穴にさして開けてみる」


 カギを運転席側の鍵穴にさして回すと鍵が開いた。乗り込んでカギを刺してひねるが、何も反応がない。メーターパネルもどこも光らない。……もしかしてバッテリー上がりか。そりゃそうだ。かれこれ2か月近く放置していたんだ。バッテリーも上がるよな。


「……だめだ。バッテリー上がってる」

「他の車探せば?」

「……ほかの車も同じようにバッテリーが上がってるかもしれない。このまま歩いて行ったほうが早いかも」

「そうだね。ほかの家も同じように車のカギが置いてあるとは限らないかもね」


 車から降りようとすると、目の前からゾンビがゆっくりと歩いてきた。そしてそのままボンネットに倒れた。


「え!?何!?」


 ボンネットにゾンビが倒れた時の音でほかのゾンビがこっちに向かって歩いてきた。


「早く降りろ!」

「でも……この数は」


 ……ヤバい。囲まれた。ゾンビたちは車の窓ガラスをバシバシ叩いている。叩くたびに車が大きく揺れる。


「どうするの!?降りる!?」

「馬鹿!今降りたらゾンビが流れ込んでくるだろ!」


 ビシッ


 フロントガラスやサイドガラスにヒビが入った。このままだと、ガラスが割れて車内にゾンビが流れ込んでくる。


「……2人とも私にしっかりと着いて来て」

「おい!何する気だ!」


 イザベラが後部座席のドアを少し開けると、力を込めてドアを外した。本当に馬鹿力だな。そのままドアを持って助手席側のゾンビを外したドアで押し退け始めた。


「今のうちに行くよ!」


 ゾンビが少なくなった助手席側から降りると同時に運転席側のガラスが割れてゾンビが車内になだれ込んできた。危なかった。もう少し遅れていれば食われていたかもしれない。


「早く着いて来て!」


 イザベラが進む道を外れたドアでゾンビを押し倒して道を作ってくれている。だが、ドアはどんどんボロボロになっている。


「これ使って少しは自衛して!」


 散弾銃をイザベラが投げて渡してきた。受け取ったと同時に、すぐ近くにいるゾンビの頭にフルスイングする。が、一発で倒れない。


「くそっ!」


 もう一度フルスイングすると、ようやく倒れた。体力的にあと数回で限界だ。イザベラはあんなにドアを振り回しているのによく体力が持つな。体力のほうも強化されてるのか?


「右!」


 中村の声で右を見ると、ゾンビが両手を前に突き出して迫ってきている。そのゾンビに散弾銃をフルスイングした。


「あぁ……あ」


 ゾンビがよろけたところに散弾銃を脳天めがけて振り下ろす。スイカ割りをした時のような感触が散弾銃を通して伝わってくる。何度やってもなれない感覚だ。ゾンビはその場で崩れるように倒れた。自衛隊の基地まであとどれくらいなんだ?

 進むにつれてゾンビが少なくなってきた。もう自衛隊の基地が見えてもいいころだ。


「見えた!」


 イザベラが持っているドアをゾンビに向かって投げ捨てた。投げ捨てたドアはゾンビを数体吹っ飛ばして地面を滑って行った。車のドアはフライングディスクじゃないんだぞ……


「自衛隊の基地!」


 イザベラが指さす方向には川の向こうに高いフェンスが並んでいる。その向こうには学校のような建物が並んでいる。建物横には自衛隊の車両がドアを開けたままの状態で放置されている。この様子だと、中には生きている人間がいる可能性は低いだろうな。


「そこのフェンスを越えよう。わざわざ正面に回る必要はない」

「そうだね。中に入ればゾンビは少ないみたいだからね」


 川の脇にあるフェンスを上って敷地内に入る。敷地内のゾンビは比較的少ないが、自衛隊員のゾンビが多い。そのせいで頭部にはヘルメットをかぶっている。頭を殴っても効果はなさそうだ。そうなると……どこを狙えばいいんだ?


「自衛隊のゾンビを倒すのってどうすればいいんだ?」

「首の骨をへし折ればいいんじゃない?」

「簡単に言うなよ。お前ほどの力を持ってる奴なんてごく少数だ」


 だとすれば、相手にしないことが一番だ。


「武器庫てきな場所はどこかな?」

「とりあえず探すしかないだろ。一般の人がわかるようなところにはないはずだ」


 目の前に見えている校舎みたいな建物にはないだろう。もっと厳重なところに保管しているはずだ。だが、こんな状況で武器が残っているとも思えない。ただ、ここまで来たんだ。見てみる価値はあるだろ。校舎っぽい建物の裏側に回ってみると小さな盛り土があった、その盛り土の中に扉が開いた状態で放置されている。怪しいな……。

 周囲を見ると、比較的離れた場所にゾンビがいる。行くなら今のうちだ。

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[一言] 更新してくれないから 新型コロナされちゃったと思ってました
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