52話 米
「何か見つかった?」
部屋に入ると、バスタオルで頭を吹いている中村がいた。
「全然。荷物はどう?」
「一通り運び終わったよ。運んだだけで整理はできてないけどね」
「それはこれからやればいいよ」
雨の音が強くなった。これって、大丈夫か?
「雨、すごいね。土砂崩れとか起きないよね」
「さぁ?どうだろ?」
イザベラが食料の山からカップめんを取り出した。
「おい。カップ麺ばかり取るなよ。米炊こう」
「え?やだ。めんどくさい」
「……わかった。俺がやる」
「できるの?」
「何回かは鍋で炊いたことあるから大丈夫だと思う」
鍋に米を入れて水を入れる。米が浸るくらいまで入れて30分程放置する。
「オカズ何にする?」
「鯖缶がいい」
「じゃあ、私は焼き鳥」
食料の山からそれぞれご飯のお供を選んだ。そんなことをしている間に米に十分水がしみ込んだ。今度はそのまま少し水を足して中火で煮込む。
「あれ?米、洗ったりしないの?」
「本当は洗ったほうが良いんだけど、水の節約のためだ。洗わなくても食べれるだろ」
しばらくすると、鍋が沸騰して蓋から泡が吹きこぼれ始めた。ここで、火を弱めては駄目だ。そのまま3分程放置した後、少し火を弱める。
「ガス臭くない?換気扇つけようよ」
「電気が来てないんだからつくわけないでしょ」
「窓を開ければ大丈夫だろ」
キッチンの窓を全開にして、リビングの窓も開ける。リビングの窓を開けると、風が家の中を通る。かなり風通しがよくなったな。キッチンに戻ると、さらに鍋の火を弱める。
「まだー?」
「もう少しだから待て」
そのまま7分ほどおいてからふたを開けると、米が綺麗に炊けていた。我ながら会心の出来だと思う。味の方は……まぁ普通。イザベラと中村がやってきた。
「ちゃんと出来てるじゃん。意外な才能」
「まぁ、今の時代炊飯器があるからな。鍋で炊くなんてそうそうないから」
飯を昨日食べたカップ麺の容器に入れる。少なく米を炊いたつもりだったけど、意外と量が多いな。今回だけで食べきれないかもしれない。食べきれなかったらおにぎりにでもするか。
「「いただきます」」
飯を食べ終わると、再び流しに食べ終えた容器を持っていく。空の容器を洗うのは外の井戸水で大丈夫だろ。今は雨が降っているから雨が止んだら水でも汲みに行くか。
「雨、止まないね」
「天気予報見れればいいんだけど」
リビングの窓から外を見ていると、屋根から滝のように水が流れている。本当に雨、すごいな。梅雨はもう開けててもいい時期なんだけど……。異常気象ってやつか?
「今日は荷物の整理ね」
「あぁ」
イザベラと中村は食料品を仕分けして、俺は自分で積み込んだ日用品を仕分けする。こうして仕分けしていると、いろいろな物を詰め込んだんだな。あの時は急いでいて何を詰め込んだかなんて確認してなかった。医療品は消毒液とか、絆創膏ぐらいしかない。あとは……下着や歯ブラシ……お泊りセットみたいな日用品だ。気が付くと、後ろにイザベラが立っていた。
「整理できた?」
「一応。ほら、下着だ。ブラはないけど我慢しろよ」
「ありがと。持って来た中に虫よけスプレーとか、蚊取り線香ない?部屋に蚊がいるの」
「確か……ここに……あった。ほら」
イザベラに虫よけを渡す。部屋にワンプッシュで虫がいなくなると謳っている奴だ。本当に効くのかは分からないが。
「この部屋にもやっとくね」
イザベラが封を開けてワンプッシュすると、霧状の液体が少しだけ出た。イザベラが部屋から出て行った後に、日用品を整理していると、傍らで蚊が1匹死んでいた。しっかりと効いてるみたいだ。そのあと、中村が来てくれて整理はすぐに終わった。外を見るがまだ雨は降っている。
日が暮れてきた。ランタンをつけて部屋を灯す。そういえば、昼食べた時に使った容器を洗うの忘れてる。でも、この雨の中井戸の水を汲みに行くのはなぁ……ってか、汲むのにバケツとロープがいるな。納屋を探せばありそう。
「暇だね」
「いや、井戸水汲みに行けよ」
「え?めんどい。中村さんは?」
「しらね」
それにしても暇だ。娯楽がないのがこんなにキツイとは思わなかった。雨も止まないし。外をボーっと眺めていると、外に人影が見える。もしかして、ゾンビか?
「ゾンビいるよ」
「本当だ。」
ゾンビはこっちには気が付いていないようだ。服装はどこかの会社の作業着を着ている。偶然迷い込んできたのか?そのまま様子を見ていると、どんどん家に近づいてきている。
「おい。散弾銃使えよ」
「だめだって。最後の一発だよ。大切に使わないと。何かで殴ればいいじゃん」
「じゃあ、散弾銃で殴るから貸してくれ」
「はいはい。言うと思った」
イザベラが散弾銃の中に入っていた散弾を取り出してから渡してきた。散弾銃を受け取って、銃身をもってゆっくりとゾンビに近づく。濡れるがしょうがない。散弾銃を振り上げてゾンビめがけて振り下ろす。
グシャッ
ゾンビが地面に倒れた。……こいつが何か持ってないか調べるために軒下まで引きずっていく。
「え?連れてきたの?」
「いや、何か持ってないかな~って」
ゾンビの死体を漁ると、ポケットから携帯電話が出てきた。ほかには車のカギ、財布、ボールペンが出てきた。財布の中には免許書や保険証が入っていた。が、こんな世界じゃ無意味だ。
「この人の車ってどこにあるのかな?」
「晴れた日にでも道の先に行ってみるか」
「そうだね」
携帯電話の方は電源が入らない。バッテリー切れというか、水没だろうな。雨に濡れていても、ポケットに入っていたんだもんな。そして、いい加減に雨、止んでくれないかなぁ。本当に土砂崩れとか起きそうで怖くなってきた。
「暗くなってきたし今日はもう寝ようか」
「だね」
1階の窓と雨戸を閉めると2階に行く。今日は見張りはいるかな?雨戸閉めてれば大丈夫なような気がする。一か所鍵壊れてるけどな。
そのまま、誰も見張りをせずに無事に朝まで過ごすことが出来た。




