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48話 家の中

家の中に入ると、真っ暗だったが、目が慣れてきて周囲の様子が見えるようになった。そこら中に血がこびりついている。だが、ゾンビの姿は見えない。


「行くよ」


 部屋の扉を開けると、何かを叩くような音が聞こえてきた。それも、複数だ。ゾンビがいるのかもしれない。


「中村、気をつけろよ」

「うん」


 中村が散弾銃を構えなおした。ゆっくりと、廊下を進むと階段が見えた。2階にゾンビが居ないってことは階段にバリケードでもあるのだろう。先に中村が階段を覗いた。


「階段は大丈夫みたい。踊り場にバリケードがある」


階段を覗くと、踊り場に家具で作ったバリケードがひもで固定されている。ゾンビがバリケードに体当たりするたびに、バリケードが大きく揺れている。もうそろそろで崩れそうだ。


「早く通り過ぎようよ」

「そうだな」


 背後の部屋から数人の話し声が聞こえてきた。自衛隊の奴らが家の中に入ってきたのか。そのまま、廊下を進むと、一つの部屋に突き当たった。扉を開けると、そこには物が散乱していた。だが、家具は一つもない。階段のバリケードの家具はここから持って行ったのか。


「いたぞ!」


 後ろで声がした瞬間に部屋に入って扉を閉めると、扉の何か所に穴が開いた。自衛隊の連中、殺す気満々じゃねぇか!


「金髪の女は不死身だから弾を当ててもいい!周りの取り巻きは殺せ!」


 足音がこっちに向かってくる途中で何か大きな音が聞こえた。


「津田さん!階段のバリケードが!」

「うわああああ!」


タタタタタタタ


 銃を乱射足ている音が聞こえる。どうやら、バリケードが崩れてゾンビが自衛隊の奴らを襲っているんだろう。ちょうどいい。その間に逃げよう。


バン


 俺たちがいる部屋の扉にもゾンビが体当たりしてきた。早く逃げたほうがよさそうだ。


「ここからなら出られそうだよ」


 中村が窓を開けたところはベランダになっている。ベランダに出ると、すぐ隣にバリケードの山が見えた。バリケードには数十体のゾンビが集まっている。……結構見た目に反して頑丈にできているんだな。運よく、ベランダの下にはゾンビはいない。少し高さはあるが降りれないことはない。先に俺と、中村さんが下りてイザベラを受け止めよう。


ゆっくりとベランダから降りる。下が土のおかげでダメージは少なかった。上を見上げると、足を引きずりながらイザベラがベランダの柵を超えようとしていた。


「受け取ってよ!」


 イザベラが柵からずり落ちた。それを、俺と中村で受け止めた……いや、下敷きになったと言ったほうが良い。


「大丈夫!?」

「大丈夫だから早くどいてくれ」

「ごめん」


 まだ、家の中から銃声が聞こえる。そんなにゾンビがいたのか。もう少し遅かったらゾンビの群れに襲われていたんだな。運がよかったんだ。


「これからどうするの?今のところ、周りのゾンビは家の方に向かってるけど、襲われるのも時間の問題だよ」


 周りを見ると、ゾンビが銃声のしている家の方に向かって歩いている。そして、そのまま、壁に向かって歩き続けている。とにかくこの家の敷地から出よう。イザベラを背負って、出口を探すと、開いたままの裏口があった。ゾンビが入ってきているのはここか。


「早く出よう!」

「そうだな。外に出れば車ぐらい見つかるだろ。流石に、疲れてきた」


 ゾンビが入ってこないことを確認してから、敷地の外に出ると、バリケードの内側とは真逆の光景が広がっていた。電気が消えている街灯、道を我が物顔で歩くゾンビ。


「あそこの家に行こうよ!カーポートに車も止まってるし」

「そうだな。あいつ等も追いかけてこないし、あの家でいいだろう。先頭は任せた」

「はいはい」


 幸い、ゾンビは自衛隊の連中が発砲してくれているおかげで、こっちには気が付いてない。このまま音を立てないように家の中に入ろう。家の玄関の前まで来たが、扉が少し開いている。しかも、家の中に向かって血の跡が続いている。


「家の中にいるぞ。気をつけろよ」

「いわれなくても分かってる」


 扉をゆっくり開けると、目の間には死体を貪り食う大柄なゾンビだった。


「ヒッ!」


 中村は散弾を大柄なゾンビの腹部に叩き込んだ。だが脂肪が厚いのか聞いてない。最悪なことに、今の音で外のゾンビがこっちを向いて歩いてきている。


「早く頭を撃て!」

「うわああ!」


ダァン


 次に撃った弾は頭部を吹き飛ばした。頭部のなくなった大柄なゾンビはその場で立ったまま動かなくなった。


「早く扉閉めて!」


 イザベラの言葉で後ろを振り向くと、少し開いた扉からゾンビが迫ってきているのが見えた。急いで扉を閉めて、鍵とチェーンをかける。そのあとすぐに扉を叩いたり引っかいたりしている音が聞こえる。だが、結構頑丈な扉だ。ガタガタ音はしているが、壊れることはなさそうだ。


「危なかった……」

「気を抜くのは早いよ。まだ、この家の中にゾンビがいるかもしれない」

「そうだね。弾頂戴」


 イザベラがポケットから散弾を中村に渡す。残りは3発か……まぁ、大丈夫か。


「とりあえず、休める部屋を探そう」


 外から入ってくる月明かりを頼りに家の中を探索するが、1階のリビングや和室には大きな窓があってゾンビの襲撃には耐えられそうにない。2階しかないな。


「2階に行くしかないね」

「あぁ」


 2階は部屋が2つしかなかった。一つは物置として使われている。もう一つは寝室だ。イザベラを寝室のベットに寝かせると、中村と二人で寝室の本棚を階段の踊り場に置いた。あとは物置となっている部屋から持ってくればいいだろ。


「自衛隊の人、探しに来ると思う?」

「来ないだろ。来たとしても、明るくなってからだろ」


 二人で物置にあった棚を階段に運ぶ。しばらく運ぶと、階段の踊り場が完全に埋まった。これなら大丈夫だろう。寝室に戻ると、イザベラがベットに座っていた。

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