表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/94

44話 再会

さて、体育館の屋根に上ったのは良いけど、どこから侵入しようか?天窓なんて都合のいいものなんて見当たらない。もちろん、ロープなんて万能な物も見つからない。しばらく屋根を歩き回っていると、端の方で屋根のトタンがはがれて、その上にブルーシートが掛けてあるのが見えた。あの場所は校舎から見ると反対側にあるから気が付かなかったんだ。なんで屋根がはがれているんだろうか?


 ブルーシートをめくって中の様子を見ると、いろいろな機材が置いてある。その中には鎖で柱に固定されている人が数人見える。よく見ると、一番端につながれている人は殺人鬼のあの男だ。こんなところに連れてこられていたんだ。とりあえず、中に侵入しよう。

 ブルーシートの下は体育館の二階部分になっていて、簡単に侵入することができそうだ。二階部分は使われていないようだ。まぁ、ブルーシートだけだと、雨とか入ってきて機材が駄目になるんだろうな。床も、濡れてるし。そのまま、二階から様子を見ていると、殺人鬼の男のところに研究者が数人集まっている。何をしているんだろうか?


「……してみるか」

「……応援を……いいんじゃないか?」


 何かを話しているようだが所々聞こえない。研究者のうち1人が注射器を殺人鬼の男の腕に刺した。そのあと、研究者たちは少し距離を置いて様子を見ている。殺人鬼の男は注射器を打たれた直後は様子は変わらなかったが、5分ほどすると苦しみ始めた。さらに5分後、殺人鬼の男は、ただうなるだけのゾンビとなった。なんだ?ワクチンの研究をしているんじゃないのか?それとも、ゾンビ化するワクチンでも日本中に配って全滅させるつもりか?とのかく、イザベラを見つけ出さないと。


 通路を進んで階段まで来ると、階段下で書類をあさっている長髪の男の研究者の姿が見える。……こいつを人質にして色々聞き出すか。ただし、発砲は厳禁だ。発砲した瞬間に外の自衛隊員が突入してくるだろう。足音を立てないようにゆっくりと近づいて背中に銃口を押し付けた。


「妙な真似はするな。少しでも変な動きをすれば胴体にでかい穴が開くことになるぞ」

「……自分が何をしているのかわかっているのか?外には見張りがいっぱいいるんだ」

「俺の質問に答えろ。金髪の外国人がこの体育館にいるはずだ。どこにいる?」

「……あの女なら、奥の倉庫にいる」

「ありがとよっ!」


 研究員の後頭部を散弾銃で思いっきり殴った。研究員はその場で倒れた。まずい。殺してしまったか?首に手を当てて脈を確認してみると、ちゃんと脈はあった。ただ、後頭部から出血している。ど素人が映画の真似をするもんじゃないな。死んだらごめんなさい。

 さて、倉庫はどこだ?遠くからは話し声が聞こえる。そっちの方向に進んで、物陰から様子を見ると、数人の研究員が何かを話し合っている。こっちには何もなさそうだ。反対の方は確か、柱に固定されている人たちがいる方向だ。探索ついでに様子でも見てみるか。上から見た装置の配置を思い出しながら進むと、柱に縛り付けられた人たちがいた。その奥には鉄の扉があった。その上をよく見ると、体育館倉庫と書かれたプレートが張ってあった。イザベラがいるのはあそこだろう。柱に縛り付けられている人たちの目線はこっちに向いている。その中にはゾンビになった殺人鬼もいる。


「あぁああ」

「うあー」


 柱に縛り受けられている人は殺人鬼も含めて5人だ。頼むから大きい音を立てるなよ。

なるべく大きな音を立てないように横を通り過ぎようとする。ゾンビを見ていると、年齢や、性別はバラバラだ。見た感じ、下は10代から上は50代までそろっている。体育館倉庫の手前の奴はよく見ると、セーラー服を着た少女だ。こんな若い子まで実験体にしているのか。


「があうあ!」


 いきなりセーラー服の少女のゾンビが暴れだした。縛り付けている鎖が音を立てている。頼むから静かにしてくれ。研究員たちがこっちに来てしまう。


「おい、なんか騒いでるやつがいるぞ。様子を見て来いよ」

「えー」


 ここは一気に体育館倉庫に入ってしまうか。今なら扉を開けても暴れているゾンビの鎖の音でかき消されるだろう。扉を開けて体育館倉庫に入ると、部屋の中は真っ暗だった。明かりのスイッチはどこにあるんだろう?扉付近の壁を触っているとスイッチらしきものを触った。スイッチを押してみると、体育館倉庫の明かりが点いた。


「……ん!」


 明かりをつけたときに後ろから声が聞こえた。この声は聞いたことがある。イザベラだ。振り向くと口にタオルを巻いたイザベラが椅子に縛り付けられていた。その横には手術道具が乱雑にテーブルに置かれている。しかも、どの道具にも血がついている。とりあえず、イザベラの口に巻かれているタオルを取る。


「なんでここにいるの!?」

「静かにしてくれ」

「あ、ごめん」


 縛り付けている鎖を取ろうとするが南京錠が付いていて取れそうにない。鍵が必要だな。イザベラは見た感じ怪我はしてないみたいだ。だが、横に置いてある手術道具を見る限りこれで色々実験されたあとなんだろうな。そして、イザベラの持っている超回復で怪我は全部治ったわけだ。


「すまん。この鎖は取れそうにない。鍵を探さないと」

「それにしてもよく来たね。どうやって来たの?」

「そんな話はあとだ。鍵は誰が持っているんだ?」

「確か長髪の男の人だったよ。もう、爪を剥がされたり指を切断されるのは嫌。早く鍵を持ってきて」

「そんなことされていたのか。悪かった。もっと早く助けに来ればよかった」

「ううん。来てくれただけでもうれしいよ」


 待てよ、長髪の奴って、俺が気絶させた奴の事じゃないか?一度、戻って調べる必要があるな。


 パァン


 扉の向こう側から銃声が聞こえた。なんだ?扉に耳を当てて外の様子をうかがう。


「おい。銃を使うなよ。警備の人がすっ飛んでくるぞ」

「大丈夫だって、もう話はしてある。残りの奴らも片づけてしまうか」

「ん?倉庫内の電気ついてないか?」

「本当だ。もしかして、あの女が逃げ出したのか?」

「ちょっと様子でも見てみるか」


 ヤバイ。こっちに入ってくる。どこかに隠れないと。

周りを見渡すと、掃除用具を入れているようなロッカーが置いてあった。隠れるようなところはここしかないな。ロッカーを開けると、掃除用具がそのまま入っている。日本がゾンビで崩壊する前のままなんだろう。そして、臭い。


「いいか、俺がいることを悟られないようにしろよ」

「任せて」


 ロッカーの中に入って通気口から外の様子を見る。ロッカーに入ってすぐに倉庫の扉から2人の研究員が入ってきた。そのうち1人の手には拳銃が握られている。さっきぶっぱなしていたのはこいつか。拳銃を持ってる研究員の奴、見るからにやばそうなやつだ。なんて言うか……世紀末にヒャッハーしてそうな人だ。


「ただ、電気の消し忘れだろ。あれ?口に巻いていたタオルが取れてる」

「お前の縛り方が緩かっただけだろ」

「そういえば最近ストレス発散してなかったな」

「またやるのか。一人でやっててくれ」


 そう言って、まともそうな研究員が出て行った。あぁ、歯止め役がいなくなった気がする。


パァン


 突然ロッカーの通気口隣に丸い穴が開いた。通気口から外の様子を見ると、拳銃をこっちに構えている研究員がいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ