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38話 報告

……雄介さんが首を吊って死んでいた。近寄ってみると、排泄物の匂いがする。ここまで行くと、もう駄目だろう。……加奈ちゃんの死体を運んでいる最中に気でも変わったのだろうか?もはや、それを知ることはできない。俺も、身近な人が死んでしまったらこんなことをしてしまうのか?……そんなことを考えるな。それよりも散弾を集めよう。






 店の外に出ると、すでにゾンビはかなり近くまでやってきている。バイクのエンジンを素早くかけると、すぐに出発した。ゾンビがバイクのエンジン音に気が付いてこっちにヨタヨタと近寄ってきているが、すぐに距離が開いていく。来た道を引き返せばゾンビも少なかったし、何とかなるだろう。……最悪の場合、肩に担いでいる散弾銃を使えば……。ここら辺で試し打ちしとくか弾は15発もある。一発くらいいいだろ。


 バイクを道の真ん中に止めて、肩に担いでいる散弾銃を構える。その先20メートルにはゾンビが1体だけこっちに向かって歩いてきている。一応撃ったことはあるけど、チェーンを至近距離で破壊するために撃っただけだからな。これは前に撃った散弾銃とは違って上下二連式か。引き金を引くと、何も反応がない。あ、もう撃ち尽くしていたのか。上のレバーを操作して銃身を下げると、空薬きょうが飛び出してきた。そこに新しい弾を入れてすぐに構えなおす。


ドン


 1発目はゾンビの右腕を吹っ飛ばしただけだった。こんなに反動でかかったか?それとも、銃が違うからか?今度は少し右を狙ってみる。


ドン


 胸部周辺に命中した。そのまま前にゾンビは倒れた。右に銃弾がズレたのはこの銃の癖なのか?それとも、何かにぶつけて銃身が右に曲がっているかだ。とりあえず、少し右を狙うことを覚えておこう。

 周囲を見渡すと、遠くのゾンビや、店の中にいるゾンビがこっちに向かって歩いてきている。これ以上射撃の練習はやめておこう。弾も節約したいし。


 来た道を引き返してバイクを走らせていると、郷田さんの死体が見えた。誰も、遺体や所持品には誰も触っていないようだ。バイクも、道の真ん中に倒れたままだ。結局、このピアノ線を仕掛けた犯人まではわからなかった。韓国軍の奴らなのか、それともほかの集団なのか?……まぁ、それも含めて戻ったら報告しよう。


 ……このまま戻って報告したところで信じてもらえるのだろうか?……韓国軍がいたとか、道の真ん中にピアノ線が張られていてそれに郷田さんが首を跳ねられたなんて、そうそう信じられないだろ。そんなことを色々、考えている間に浜名湖周辺に近づいてきた。すでに辺りは薄暗くなっていた。そんな中、浜名湖に浮かぶ島を見ると家や、ビルのところどころに明かりがついている。今いる避難所って今まで行った中では、制度はクソだけど環境としては最高なんだよな。


 最初に入ってきた有料橋の料金所にたどり着いた。もうすでに真っ暗になっていた。料金所の前でバイクを停めると料金所の上から自衛隊員が覗いてきた。


「おい。ほかの奴らは?」

「……やられました」

「……今、バリケードをどかす。早く入れ。ゾンビがこっちに来ている」


 トラックをどかしてもらって中に入ると、屋上にいたのとは別の自衛隊員が無線機で誰かと話をしている。よく見ると、最初にここにいた自衛隊員と同じ人だ。


「ここに来た時に入った民家があるだろ。覚えてるか?」

「覚えてます」

「そこに行け。詳しいことはそこで話してもらう」


 バリケード代わりのトラックを動かした奴隷の人がこっちを見ている。あの人も、一応元気そうだ。

バイクで橋を渡り、言われた通り事情聴取を受けた家に入った。すでに玄関にはかなりの数の靴があった。そのまま進んで部屋に入ると、自衛隊の偉そうな人たちが机を囲んで座っていた。……この人たちに今から説明するのか。


 椅子に座ると、メイド服を着た女性がお茶を出してくれた。この人も最初に来た時に飲み物を出してくれたよな。よく見ると、顔に痣がある。あの男にひどいことされているんだろうな。……偉そうな人たちがこっちをずっと見ている。


「どうした?座っていいぞ」

「あっ、はい」


 椅子に座ると、いきなり地図を広げられた。この浜名湖周辺の地図だ。東区も書かれている。浜名湖から東区のショッピングセンターまで赤いマジックで通った道が塗りつぶされている。


「君が通ったはずの道だ。どこか大型車が通れなかった道はあったか?」


 ……確かポケットに郷田さんの持っていた地図が入っている。途中まではすでに記入してあるからここから先をは説明しないとだめだろう。地図を取り出して机の上に置いて広げる。


「ここには郷田さんが生きている間に書いてくれた情報が書いてあります。それ以降に関しては説明します。」


 自衛隊の偉い人たちは地図を見て色々話し合っている。……早く終わらして今日は休もう。


「あの、先のことを話していいですか?」

「あぁ。すまない」

「その先の確か、この辺にピアノ線が道の真ん中に張られていました。それにより、2人首を跳ねられました」


 言い終わる前に場がざわついた。


「そのあと、郷田さんの装備を回収してショッピングセンターに行きました。そこで……」

「どうした?続けていいぞ」


 雄介さんや加奈ちゃんのことを話しても大丈夫だろうか?……いや、話さないほうがよさそうだ。このことを話せば、雄介さんたちとの関係も聞かれる。そうなればここに来た目的も完全に隠し通せる自信もない。ここは濁しながら話すとるか。


「ショッピングセンターに入ると、すでに先客がいました。そこで、少し話をしていると3人ほど元猟友会らしき人が来ました。そこでその人達に食料を分け与えることになって……」

「ちょっとまて」


 ……いまので不審な点あったか?……いや、いっぱいあるな。


「先客はどんな人だった?」


 やっぱり濁しても無駄か。この人は最初にここにたどり着いたときに面接をしてくれた人だ。


「少年と少女が1人ずつです」

「そうか。話をさえぎって悪かった。続けていいぞ」


 ……バレてないよな。


 そのあとは、韓国軍らしき人たちが襲撃してきたこと、それによって俺以外の人が死んでしまったことを話した。


「かなり大変な思いをしたようだな。すまない。本当はこんなことになるなんて予想してなかったんだ。」


 眼鏡をかけた30代ぐらいの細めの男が話してきた。


「……私は霧島と言います。今回の偵察の情報をもとに隊の編成を組みます。まぁ、そこらへんはこちらに任せてもらって、君はゆっくりと休むといい。家までは乗ってきたバイクで戻るといい。バイクは差し上げるよ」


 そういわれて部屋を追い出された。

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