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30話 案内

目が覚めると、すでに外は明るくなっていた。今は何時だろうか?部屋を見渡すと、目覚まし時計が置いてあった。10時のようだ。久しぶりに時間を気にしたような気がする。今までは暗くなったら寝る。明るくなったら行動を始めるって感じだったからな。


コンコン


「どうぞ」

「あ、起こした?」


 部屋に入ってきたのは俺と、歳が離れていなさそうな男性が部屋に入ってきた。


「隣の部屋に住んでいる井上いのうえ 達也たつやだ。案内するように言われてるんだ」

「どうも。大隅 一です」

「早速だけど、飯でも食べに行くか」


 そう言って、井上は鍵をくるくる回している。そのまま付いていくと、家の横に停めてある車に乗り込んだ。


「ご飯が食べたいときは今から行くところに行けば色々な物を食べることが出来るぞ。レトルト食品ばっかりだけどな」


 車を走らせると、途中広大な太陽光発電所を通った。これだけ広ければ電気も使い放題だな。それにしても、上下水道も普通に使うことが出来るのだろうか?外を、眺めているとまた、農作業をしている奴隷が見えた。これだけ広い土地を手作業で耕すのか。耕運機とかは使わせてあげないのだろうか?こんなご飯を食べに行くくらいでガソリンを使っているほうがもったいないような気がするな。


「付いたぞ」


 井上が車を停めたのは、町の公民館らしきところだった。入り口にはすでに何人もの人が列を成していた。


「やっぱり、並んでるか」


 列の最後尾に並んで待っていると、20分ほどで順番が回ってきた。中に入ると、飲食店らしく、机と椅子が並んでいた。対応自体は普通の飲食店と変わりは無かった。ただ、接客してくれた人たちは奴隷となっている人だった。


「何頼む?大概のレトルト食品なら揃ってるよ」

「じゃあ……カレーで」

「決まりだな。すいませーん」


 井上が呼ぶと、すぐに店員がやって来た。


「ご注文、お決まりでしょうか?」

「えー、カレーライスと親子丼で」

「かしこまりました」


 店員が注文表を持って裏に消えていった。どうせ電子レンジでチンするだけだからそこまで時間は掛からないだろう。


「これからどうする?気になる場所とか有るか?」


 急にそんなこと言われても……この避難所にどんな施設が有るのか分からないから答えれない。


「まぁ、急に言っても答えれないよな。……俺のお勧めの場所に行かないか?」

「お勧めの場所?」

「まぁ、車に乗れよ」


 言われるがまま車に乗り込むと、車を走らせ始めた。時々通り過ぎる車の中には自衛隊や警察官が乗っている。本当に俺達が車を乗り回していいのか?しばらく走ると、浜名湖に架かる橋を渡り始めた。本土に掛かる橋が崩れ落ちている。崩れ落ちた手前ではゾンビが渡りたそうにうろうろしている。端の先には小さめの埋立地が見える。その上には住宅が密集するように並んでいる。


「あそこには何があるんです?」

「大隅さんは、最近、ヤったか?」

「やったて……性行為のことですか?」

「今から行くところは可愛い子と色々出来るぞ」


 確かに最近やってなかったが別に、そこまでしてやりたいとは思わないな。……でも、たまには大切だよな。

 島に入る前に検問が敷かれていた。どうしてこんなところで検問なんてやってるんだ?


「あれ?富士見さん。何で検問なんてやってるんですか?」

「ほれた女を逃がそうとして物資と一緒に車に女を乗せて強行突破しようとした奴がいたんですよ。それ以来検問を敷かしてもらってます」


 結局調べられることも無く、すんなりと島に入ることが出来た。


「この島のビルに入って、好きな部屋を選ぶといい。どの子も可愛いから安心しろよ」


 井上さんはそういって、ビルの前に車を停めると、すぐにビルの中に入って行ってしまった。結局来てしまったが、一体どういうシステムなんだ?カウンターとかないのか?


「いらっしゃいませ」


 入り口付近に若い男性が立っていた。男性はスーツを着て身だしなみをちゃんと整えていたが首輪が付いていた。この人も奴隷だ。男性は、ここの受付的な存在で、開いている部屋の番号を教えてくれた。とは言っても、2つしか開いてなかったんだけどね。

 ビルの階段を登り部屋の前に行くと、扉をノックする。


「はーい」


 ……何処かで聞いたあることの声が聞こえてきた。

扉が開くと、目の前にいたのはネグリジェ姿の中村さんだった。


「え?お前、何してんだ?」

「こっちの台詞よ!」


 周りを見て、誰にも見られてないことを確認すると、部屋に入った。部屋の中はカーテンが閉められて薄暗くなっていた。部屋の中央にはベットが1つだけ置いてあった。中村さんはベットに腰掛けている。


「何でこんなことしてるんだよ」

「別に好きでこんなことしてる訳じゃないって」


 中村さんが首輪を見せ付けてきた。


「前から思ってたんだが、そんな首輪外せば奴隷かどうかの区別なんて付かないよな」

「そう甘くないの」


 中村さんが首輪を取ると、首には黒く、首輪の跡が残っている。何だこれ?きつく閉めすぎたせいで跡が残ったのか?


「何か特殊な塗料を首輪の内側に塗られていたらしくて、いくら洗っても取れないの」

「触ってみていいか?」

「いいよ」


 触ると、ペンキが付いたみたいな感じになっているが、擦っても爪で引っかいてみてもはがれそうにない。


「ちょっ……痛い」

「ごめん。イザベラはどこに行ったか知らないか?」

「分からない。少なくともこの島にはいない。ってか、私この島から出れないし」

「そうか……無事なんだと良いけど」

「……良く無事だったね」

「お前達が連れ去られた後、近くに住んでいる少年に助けてもらったんだ。そんで、ここにたどり着いて、バイクが運転できる理由で奴隷を免除になった」

「へー私も、何か免許を取って置けばよかった」


 隣の部屋から声が漏れてくる。声を聞く限り無理やりヤられている感じだ。女性の方は奴隷だろうし、拒否権は無いんだろうな。そう考えてくると……ヤバイ。中村さんの方を直視できなくなってきた。


「ねぇ。一発抜いとく?」

「は?何言ってるんだ?この淫乱女」

「別に私も好きでやってるわけじゃないの!」

「……とりあえず、お願いします」


 結局、やってしまった。


「これからどうするの?」

「イザベラを探し出して、見つけ次第何とかして逃げる。お前はどうする?」

「お願い。私も、こんなことずっとしている気はないから」

「まぁ。いつでも会いにこれるだろうし、逃げ出す前には伝えに来るよ」


 ビルを出ると、すでに日が傾いて夕方になっていた。車の中で井上が運転席で座席を倒して寝ていた。窓をノックすると、起きて鍵を開けてくれた。


「ずいぶん長かったな。絶倫?」

「……そんな事言わないでくださいよ」


 実は知り合いで、脱出する計画を立ててました。なんて正直に話す訳にはいかないだろ。話せば、奴隷生活に転落するかも。

その日は、そのまま部屋に帰ることになった。移動中の車の中、外を眺めていると中村さんがいた島のほかにも電気がついている島が見えた。


「向こうに見える島ってなんですか?」

「今回行った島のほかにも、あの付近には4つ島があって、今通るキャンプ場がある島が男の奴隷がテントを張って生活している。弁天島駅がある島は、自衛隊のお偉いさんや、金持ち連中が住んでる島。あとは、自衛隊や警察官が住んでいる」

「女性の奴隷はどこに住んでいるんですか?」

「さっき行った島だ。残りはお偉いさんや、金持ちがメイドにしたりして、好きにしてるよ」


 ……考えてみれば、この日本で金髪のそこそこ可愛い女性なんていないからな。明日にでも、捜索してみるか。いろいろ考えているうちに家に到着した。

 玄関で靴を脱いでいると、リビングから中年男性がやってきた。


「帰ってきたか。新入り、明日1時までに駅に行ってくれ。近々大きな作戦があるらしい。」

「良かったな。上手く、功績を出せばお偉いさん達の仲間入りも夢じゃないぞ」

「はぁ……」

「行くときは俺のバイクを使うといい。鍵を渡しておく」


 鍵を受け取ると、部屋に戻って布団に入ると、すぐに寝ることが出来た。

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