3話 武器入手
「あぶねっ!」
危なかった。ゾンビと一緒に跳ね飛ばされるかと思った。助けに来てくれたのか?
少し遠くで車がUターンをして戻ってきた。助けてくれている訳では無さそうだ。
「一!逃げて!」
そんなの分かってる!とりあえず朝礼台にでも上ってやり過ごすか。
「何で上るの!」
「え?逃げ場ってここしかなくね?」
ガシャァン
車が朝礼台に体当たりしてきた。その反動で朝礼台から落ちた。車からは、顎鬚を生やした男が降りてきた。その手には散弾銃が握られている。
「お前のせいで……儀式が台無しだ!」
「待てよ!誰にイザベラを捧げる気だったんだよ!」
「あの化け物どもに若い娘を捧げれば、神が……」
勝手に説明を始めてくれた。俺は神とか信じないから関係ないんだけど。説明に夢中なのか、後ろからゾンビが迫っているのに気が付いてない。このまま放っておけば勝手に食われてくれるだろ。
「気が付いてないと思ったか?」
ダァン
顎鬚男が後ろを振り向いて近づいてきたゾンビを吹っ飛ばした。だが、おかげで注意がそっちに反れた。散弾銃みたいな長物なら懐に飛び込めば!
「何!?」
「うらぁ!」
シャベルを振って顎鬚男の顔面にぶち込んでやった。流石に死にはしないだろうが鼻の骨は折れただろう。
「ぎゃあああ!いてええええ!」
鼻を押さえながらのた打ち回ってる。今のうちにイザベラを助けよう。朝礼台に上って拘束具を外す。
「早く逃げよう!」
「そんなの分かってる!」
一応、この男の持っていた散弾銃は貰っていこう。弾は……流石にのた打ち回っている男から回収なんて出来ない。まぁ、弾が無くても鈍器として使って、いざとなれば脅しの道具としても使えそうだ。
「早く乗って!」
「お前が運転するのか」
後部座席に散弾銃を放り込んで助手席に乗り込む。朝礼台のほうを見ると、ゾンビが顎鬚の男に群がっている。まぁ、そうなるよな。
グラウンドを走り回っているがなかなか出口が見当たらない。
「出口だ!」
「門が閉まってる!俺が開ける!」
車から降りて、まずは周囲の安全確認だ。門の付近にはゾンビはいない。グラウンドの方からは、50メートルぐらい先から3体ほど歩いてきているが門を開けるぐらいなら放っておいて問題ないだろう。
ガシャン
門がチェーンで固定されている。チェーンの先は南京錠が付いている。散弾銃で壊すか。車の後部座席から散弾銃を取り出すと、少し離れたところから南京錠に向ける。えーと、このレバーを引いて薬きょうを排出して、引き金を引く。
ダァン
南京錠とチェーンが粉々に破壊された。これで門が開くはずだ。
「早く乗って!もう限界!」
力いっぱい門を引くと勢い良く開いた。一応、車一台通れるほどのスペースは出来た。これで謎の団体とはおさらばだ。一体、何がしたかったんだろう?
「一体、なんだったんだろうね?」
「分からん。とりあえず、近寄ることは無いだろうな」
しばらく夜の街を走ってみたものの、暗すぎて側面に近づいてきたゾンビすら気がつかないほどだ。空を見ると、満月が分厚い雲に隠れている。一雨来そうだ。
「雨が降りそうだな。とりあえず、あいつらからは離れることが出来たみたいだし、どこかで休むか」
「そうだね。比較的民家も綺麗だし」
窓があまり割れていなさそうな民家の前で車を停めると、エンジンを切って玄関に向かうが当たり前のように鍵がかかっている。
「どうする?他の家探す?」
「いや、この家で良い。裏に回って見よう」
後ろのイザベラは武器が無い。何とかして見つけたいところだ。だが、先に裏口を見つけることが先だ。
「あった」
「鍵が開いているといいんだが」
裏口の扉には鍵がかかっていなかった。これはラッキーだ。室内をライトで照らしながら進むが、荒らされた形跡は無い。家主は出かけている最中に襲われたんだろう。
「ゾンビはいないようだね。」
「そのようだ。何か食べれそうな物がないか探そう」
キッチンを漁っているとカップ麺が数種類と、卓上コンロ、ミネラルウォーターが出てきた。今夜の夕食には困らないだろう。
「寝室はどこかな?」
「2階だろ」
2階に上がると、幾つも部屋があった。まず最初は、子供部屋だ。勉強机に教科書が幾つも並んでいる。次は、何も無い。使われていない部屋だろう。最後は……夫婦の寝室か。ベットも2つあるしここで寝れば大丈夫だろう。