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26話 バリケード

東京で起こったことを全て中村さんに話し終えた。


「……なんかごめんね。つらい思い出だったかもしれないけど」

「別に大丈夫ですよ。つらい思いをしたのは俺だけじゃないですからね」


 フードコートから裏の従業員の休憩スペースに移動する。


「今日はもう寝ましょう」


 中村さんとイザベラは布団で寝て、俺は休憩所に有ったソファーで眠ることになった。しばらくすると、2人から寝息が聞こえてきた。……トイレに行きたいな。

 2人を起こさないように休憩所を出てトイレに向かっていると、見回りをしている自衛隊員に出くわした。


「どうしました?」

「トイレに行くだけですよ」

「そうですか。出来る限り外出は控えてくださいね。……もしかして」


 自衛隊員が何かを言いかけて詰まった。そして、顔をじろじろ見てくる。


「今日、軽自動車で避難してきた方ですよね」

「え?あ、はい」

「丁度良かった。あなた達の車に乗っていた銃について詳しく聞きたいんですよ」


 その場で、自衛隊員に銃の入手経路をごまかすことなく伝えた。


「そうですか。それは大変でしたね。ですが、治安維持のためにも銃は回収させてもらいました」


 まぁ、ここにいれば自衛隊が対処してくれるし、入り口は全部バリケードで塞がれていてゾンビが入ってくる心配も無いだろ。


「わかりました」


 トイレに行って、部屋に戻る。ソファーで横になると、眠りについた。




「起きて!大変だよ!」


 中村さんに叩き起こされた。何かあったのか?イザベラの姿が見えない。どこに行ったんだ?


「何かあったのか?」

「こっちにくれば分かるよ!」


 中村さんに手を引かれながら屋上駐車場に行くと、銃の発砲音が聞こえてくる。もしかして、ゾンビに屋上駐車場のバリケードを突破されたのか?

 屋上駐車場に出ると、出入り口のスロープのバリケード越しに銃を撃っている自衛隊員が数名いた。スロープをゾンビが上がってきているんだろう。


「外見て!」


 向かう先にはイザベラがショッピングモールの駐車場を眺めていた。その横に立って周りを見ると、昨日いたゾンビが所狭しと駐車場に押し寄せていた。軽く見ただけでも100……200……それ以上のゾンビがショッピングモールを囲うように押し寄せいていた。


「君達!危ないから中に入ってなさい!」


 自衛隊員の人が後ろから声をかけてきた。


「大丈夫なんですか?」

「今、浜名湖にいるヘリに救助要請をしているが、こっちよりも酷い避難所があるらしくてそっちに向かっているらしい。だが、大丈夫だ。1階からゾンビが入ってくることは無いよ」


 自衛隊員の言う通りに建物内に戻る。だが、この避難所も終わりだろう。自衛隊が対処しているが銃声でゾンビをどんどん呼び寄せいている。このままじゃ、ジリ貧だ。


「やばいかもな」

「どうするの?逃げるの?」


 逃げようにも、1階から外に出れば建物を取り囲んでいるゾンビに襲われるだけだ。かと言って、屋上駐車場から逃げようとしても、スロープのバリケードが邪魔だ。周りを見渡すと、避難してきた人が不安そうに身を寄せ合っている。


「やっぱり、一箇所に留まるのはダメだね。ゾンビが集まってくるよ」


 イザベラがさらっとつぶやいた。ゾンビには人が居るのを察知する能力でもあるかのように同じ場所に長いこと留まると徐々にだがゾンビが集まってくる。一回だけだが高層マンションの最上階で過ごしていたときに部屋の前にゾンビが数体集まってきたことがあった。それ以来、長く留まったとしても3日間を限度として動いてきた。


「私も、隠れていたとき集まってきたこと有ったよ。でも、2日間ぐらいでいなくなったよ」


 まだまだ、ゾンビには謎が多い。個体差もあるのか?……今考えることじゃないな。未だに、屋上駐車場のほうからは銃声が聞こえてくる。


プァン


 銃声に混じってクラクションの音が聞こえてきた。何か嫌な予感がする。


「今、クラクションの音が聞こえなかったか?」

「聞こえた。もしかしたら助けがきたのかも」


 他の避難民の人も聞こえたのだろう。数名、屋上駐車場に向かう姿が見える。


「外の様子見ようよ」


 もう一度、屋上駐車場に行くと下の駐車場に向けて小銃を撃つ自衛隊員が数名いた。だが、明らかにゾンビに小銃運を向けいているわけでは無さそうだ。自衛隊員が撃っている方を見ると、1台のマイクロバスと小型のタンクローリーがショッピングモールに向けて走ってきていた。良く見ると、どちらの車にも数体のゾンビが張り付いている。


「撃て!こっちに突っ込んでくるぞ!タイヤを狙え!」


 良く目を凝らすと、タンクローリーの運転手はすでにハンドルにもたれかかっていて、すでに死んでいるのが分かった。マイクロバスの方は運転手が車内でゾンビに襲われている。一緒に乗っていた人がゾンビになって襲い掛かってきたんだろう。マイクロバスはスロープの方に進路変更をしたがタンクローリーはそのまま真っ直ぐ走ってくる。マイクロバスの運転手はまだ、助けてもらう気なんだろうがこっちとしては迷惑だ。

 脱出の準備をしたほうが良さそうだ。乗ってきた軽自動車のドアを開けると、鍵は刺さったままだった。


ガシャアン


 1階のほうから大きな音と振動が伝わってきた。タンクローリーが突っ込んだんだろう。


ゴシャアン


 今度は、屋上駐車場に続くスロープのバリケードを突き破ってマイクロバスが入ってきた。側面にしがみ付いているゾンビを振り落とした後に自衛隊の装甲車に衝突して止まった。


「おい!2人とも乗れ!」


 イザベラと、中村さんが車に乗り込んできた。マイクロバスを見ると、数十体のゾンビが外に出ようと、内側から窓を叩いているのが見える。スロープの方を見ると、壊れたバリケードからゾンビが入ってこないように自衛隊員が小銃を撃っているが、すぐに弾切れになって、リロードをしている隙にゾンビに襲われている姿が見えた。

 タンクローリーが突っ込んだほうを見ると、空に黒煙が上がっているのが見える。すでに屋上駐車場の自衛隊員はゾンビの対処を諦めたのか他に停めてあった車両に乗り込んで逃げる準備をしている。


「後ろ!」


 後ろを見ると、屋上駐車場に続く階段から建物内にいたであろう人が逃げてきた居る。そのうちの1人の男性が車の助手席のあけようとしてきたが、すかさずロックをかけて乗り込んでくるのを防いだ。男性はこっちをにらんだ後、他の車に向かって走っていった。


「乗せてあげないの?」

「1人乗せると、他の人も乗せてくれと来てきりが無い。あの人には悪いが自力で頑張ってもらうしかない」


 すでに屋上駐車場では残っている車の取り合いになっていた。取り合いをしている間にも壊れたバリケードからはゾンビが続々と入ってきている。


ドンドン


「おい!乗せろ!」

「乗せてください!お願いします!」


 ゾンビよりも先に生きている人に囲まれ始めた。アクセルを吹かすと、ひかれると思ったのか周囲の人が車から少し離れた。その隙にギアをドライブに入れて車を発進させた。

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