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21話 添い寝

「君達大丈夫か?」


 集団の中のメガネをかけた男性が声をかけてきた。


「助けていただいて助かりました」

「あの……いきなりで申し訳ないのですが、食料を持ってませんか?」

「……持ってません」

「そうですか」


 赤ちゃんを抱っこした若い女性が肩を落とした。ごめんよ。こんな状況で食料を確保している暇なんて無いんだ。


「外の状況はどうだったんだ?」


 ここまでの状況を話すと、皆の表情が暗くなっていくのが分かる。まぁ、近くの自衛隊が救助活動をしているところまでいければ良いんだけど、子持ちの女性がこれだけいればたどり着くのは……。


「そうか。何処かへ急いでいるところ呼び止めて悪かった。裏口から外に出れる」


 階段へと案内され、メガネをかけた男性についていくと、裏口へと出た。


「どこまで行くつもりですか?」

「横浜の沿岸部にあるホテルまで行きます」

「横浜ですか……実は私達は1日前までいたんですよ。ただ、酷い状況でした。そこらじゅうで人を遅い、襲われ、そこらじゅうで火災や事故が多発してました。地獄とは、あのことですね」


 扉を開けてあいつ等がいないことを確認してから外に出た。外に出ると、扉が閉まり、鍵をかける音が聞こえた。もう戻れそうに無い。


「ねぇ、大丈夫なの?」

「……今日中にはホテルにはたどり着きたいところだが、日も傾いてきた。何処かで寝たほうがよさそうだ」


 周りを見ると、電柱についている街頭が点灯しはじめている。ここら辺は停電して無いようだ。車を探そうにも、鍵がついた車なんてなかなか見つからないだろう。


「明るいうちに少しでも進もうよ」

「……そうだな。暗くなってきたら、近くの家で一晩過ごそう」


 民家の間を通って事故車両がいるのとは別の道に出た。こっちの通りにはあいつ等の姿が見えない。……見えないだけで横の家の中を見ると、部屋の中で血まみれの男性がうろついているのが見える。そのほかの家も、窓に血の手形がびっしりついている。


「泊まる家を探すのにも注意しないといけないな」


 30分くらい歩くと、かなり暗くなってきた。もう限界だ。何処かの家に避難しよう。周りを見て、見た目が綺麗な家を選ぶとしよう。


「ねぇ。あの家良さそうじゃない?」

「あー、良さそうだ」


 イザベラさんが指を指している家を見ると、一軒の白い家が見える。駐車場らしき部分には車の破損したパーツと、タイヤ痕が続いている。家の住人は車で慌てて、逃げ出したんだろうな。その証拠に、玄関の扉が少し開いたままになっている。


「気をつけろよ。あいつ等が居るかもしれない」

「あいつ等って言ってるけど、もうゾンビでいいんじゃない?」

「あ……うあ……」


 後ろから声が聞こえて振り返ると、あいつ等……ゾンビが近づいてきている。家の中に入るしか選択肢は無いようだ。

家の中に入って扉を閉めて鍵をかけると、数回扉を叩いた後、音がしなくなった。何処かに行ったか。


「何か食べる物ないかな?」

「……俺はトイレがしたい」


 廊下の奥のほうにある扉をゆっくりと開けてみると、洋式トイレがあった。これで安心だ。用を足した後に、便器のレバーを引くと、水が流れた。まだ、上下水道は生きてるみたいだ。あとは、ガスだ。

廊下に出ると、イザベラさんの姿が無い。家の中でも探索してるんだろ。


ガダッガダッ


 ……なにか上で物音がしたな。イザベラさん何してるんだ?2階に上がって、物音の下部屋に入ると、イザベラさんの手には拳銃が握られていた。


「それ、本物か?」

「違うよ。モデルガンだね。精密に出来てるね」


 壁を見ると、色々な銃が、かけられている。これを揃えるのにいくらかかったんだろうか?


「持っていく気か?」

「持っていかない。こんなのでゾンビ達を倒せるわけ無いじゃない」

「……食べれそうな物を探しに行きましょう」


 1階のキッチンや冷蔵庫を探すと、カップ麺や冷凍食品が出てきた。これだけ有ればかなり腹は膨れるだろう。……余った分は持って行きたいところだけど、かなりの量になりそうだ。やめておこう。

 イザベラさんが電子レンジで、冷凍食品を暖めている間、外を眺めていると、塀の向こうに人影がちらほらと見える。


「庭に見えるのって、バイクじゃない?」


 イザベラさんが見ている方向にビックスクーターが置いてあった。あれを使えばイザベラさんの両親が居るホテルまであっという間だろう。問題は鍵だ。多分、イザベラさんがモデルガンを見つけた部屋に有りそうな気がする。あんなバイクに良い年した子持ちの夫婦が乗っているとは考えにくい。あの部屋は息子の部屋だろうな。


「ちょっと鍵を探してくる」

「わかった。気をつけてね」


 モデルガンの置いてある部屋に行くと、引き出しを開けて探すがなかなか見つからない。クローゼットを開けてみると、革ジャンやジャージ、ジャンパーがかけられていた。革ジャンのポケットを探してみるとバイクメーカーのロゴが入った鍵が出てきた。


 キッチンに戻ると、テーブルの上に冷凍食品や、カップ麺が並べられていた。


「鍵は見つかった?」

「見つかった。後はエンジンがかかるかどうかだ」

「そうね。でも、今日のところは明日に備えて寝ましょう」

「そうだな」

「奥のほうに寝室があったからそこで寝ようよ」


 イザベラさんについていくと、大きなベットが1つあった。布団に入ると、イザベラさんがくっ付いてきた。……良い臭いするな。


「離れろよ」

「いいじゃん。それとも欲情しちゃった?」

「うるさい。そんな事、言ってるとマジで襲うぞ」

「……ごめん。冗談のつもり」


 しばらく、天井を眺めていると、横から寝息が聞こえてきた。イザベラさんは寝るの早いな。少し離れようとすると、腕をイザベラさんにがっちりホールドされている。……今日はこのままでいいか。

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