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16話 環状七号線

 目が覚めると、イザベラさんが丁度トイレから出てきていた。


「起きたんだ」

「今何時だ?」


 スマホを取り出して時間をつけると、トップ画面には避難情報が出ていた。


「指定の場所に避難?」

「どこになってるの?」

「近くだと日比谷公園だ」


 問題は近くまでどうやっていくかだ。徒歩だと……確実に襲われる。バイクは……店長が事故ってもう使い物にならなくなっているだろう。車しかないな。


「とりあえず部屋から出るぞ」

「う、うん」


 扉近くの精算機でお金を払うと、扉の鍵が開いた。ゆっくりと扉を開けると、誰も居ない廊下が広がっていた。ひとまずフロントに向かおう。


「大丈夫なの?」

「そんなの知るわけないだろ」


 ゆっくりと進むと、廊下の端のほうに来た時には無かった血溜りがある。誰かがここで襲われたんだろう。もしかしたら建物内に襲った犯人が居るかもしれない。気をつけて進もう。


「誰か倒れているよ」


 イザベラさんが指を指す先で女性が倒れている。良く見ると、服はボロボロで血に染まっている。足で軽くゆすってみるが反応が無い。死んでいるか、気絶している。


「助けないの?」

「そんな余裕は今は無い」


 ボロボロの女性がゆっくりと立ち上がった。何だ。目を覚ましたのか。だったら、一緒に避難所まで……様子がおかしいぞ。腕を前に突き出して「あーうー」しか言わない。しかも、倒れていたときはうつ伏せだったから気がつかなかったが、胸に包丁が刺さってる。


「イヤアアアア!」


 一応捕まれないように押さえておくか。


「あ?」


 何だ!?力が強すぎる!こいつ、人間か!?


「おい!イザベラ!助けてくれ!」


 イザベラさんの方を見ると腰を抜かして泣きじゃくっている。クソッ!


「どおおりゃあ!」


 巴投げで何とか投げ飛ばした。投げ飛ばした先には丁度階段があって、ボロボロの女性は階段を転げ落ちていった。階段の下を見ると、女性の首が変な方向に曲がっている。確実に死んだ。……正当防衛だよな。


「殺したの……?」

「しょうがないだろ!あのままだと俺が襲われていたんだ!」

「そう……だよね」


 死んだ女性の横をそっと通り過ぎて外に出ると、明らかに様子がおかしい人が沢山うろついている。みんな何処かを怪我している。


「早く行こうよ!」

「あぁ!分かってる!」


 こんな状況で徒歩なんて無理だ!何処かに車!あった!扉が開いたまま放置されいている軽自動車だ!


「あの車まで走れ!」

「うん!」


 走って軽自動車に向かうが、周りの変な人はノロノロと近寄ってくるだけだ。もっと、ダッシュしてくると思ったんだけどな。

軽自動車のエンジンをかけようとキーを捻ると、力なくセルモーターが回るが、エンジンはかからない。バッテリーが上がったんだな。


「早くエンジンかけてよ!」


 一応セルモーターは回ったんだ。何とかかかってくれ!


キュ……キュキュブォン


 エンジンがかかったのと同時にシフトレバーをドライブに入れるとアクセルを踏み込んで目の前のおかしい人を跳ね飛ばした。フロントガラスにヒビが入ったが、どうせ人の車だしな。

 少し大きな通りに出ると……マジか。店に車が突っ込んで、そこに怪我をした人たちが群がっている。道の真ん中では倒れた人を襲っている……違う。食べてる。


「げええええええ」


 隣でイザベラさんがドアを開けて外にゲロを吐いた。その音に気がついたのか数人が寄って来る。とりあえず同じ場所に留まるのはヤバそうだ。


「ごめんなさい」

「気にするな。俺もコンビニで吐いていただろ」


 どうやったらこんな事になるんだ?ラジオを聴いてみるが、23区の避難場所を延々と述べているだけだ。日比谷公園はもうすぐだ。こんな状態で避難所なんて機能してるのか?


「見て!あれパトカーじゃない!?」


 公園の入り口付近にパトカーが止まっているが様子がおかしい。……ってか、おかしい事ばっかりだな。


「近くにいるの警察じゃない?」

「あぁ。でも、腕が無いぞ」


腕の無い警察官がこっちを見て、ゆっくりと近づいてくる。お腹からは腸が垂れ下がっている。何であの状態で歩いていられるんだ?公園に人影が見えるが、どの人もゆらゆら歩いている。……この公園はダメだ。


「この公園はダメだ」

「じゃあ、どうするの?」

「東京から離れよう。東京以外では暴動が起きてないらしい」

「それなら早く行きましょう!」

「言われなくても」


 高速道路に乗ろう。高速道路なら変な奴らの数も少ないだろう。あと、ネットで見た環状七号線のフェンスも気になる。高速道路なら環状七号線も大丈夫だろう。

近くのインターから高速道路に入ると、思っていた通り人の数は少ない。というか、いない。所々で車が乗り捨てられているぐらいで走行に支障は無いだろう。


ズズン


「今、すごい音しなかった?」

「あぁ。地面も揺れてた」


 しばらく走ると地下のトンネルから地上に出た。防音壁の向こう側からいくつもの黒煙が上がっているのが見える。高速道路を進むと、インターやジャンクションで合流してくる車がいる。同じような考えで逃げてきたんだろう。車内を見ると、家族連れや、男1人など様々だ。

結構長い距離を走った気がする。そのうち、渋滞に巻き込まれて進まなくなった。前を見ると、車から降りて前へと歩いていく人が居る。ここら辺には変な人たちはいないようだ。


「ちょっと見に行かないか?」

「うん」


 車から降りて進行方向に歩いていくと、人だかりが出来ていた、この辺りって環状七号線があったような。とりあえず近くの人に聞いてみるか。


「何かあったんですか?」

「高速道路が落ちてるんだよ。しかも、環七にフェンスが立てられてるんだよ。気になるなら見てきてみろよ」


 親切に教えてくれた男性の言葉を信じて前に進むと、高速道路が崩れ落ちていた。その下では、環状7号線の中央にフェンスが立てられていた。その奥には自衛隊や、警察、機動隊が銃を構えてこっちを見ている。その奥には……装甲車や、戦車も止まってる。


「何か言ってるよ」


『フェンスから離れてください!これは最終警告です!』


 道路の中央のフェンスに人が集まっている。いろいろ野次を放ってる。


「こんなことして許されると思ってるのか!?」

「こんなことより暴動を抑えろよ」


『撃て!』


 フェンスの向こう側の自衛隊や警察が銃を撃ち始めた。

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