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15話 始まりの日

今日もいつもと同じ日々が続く。毎日同じ弁当を買いに来る人、この時間なら眼鏡のサラリーマンが疲れた顔で栄養ドリンクを買いに来る時間だ。


 ピロリンピロリン


 ほら。来た。


「助けてください!」


 ……金髪のネーチャンがカウンター越しに話しかけてきている。はいはい。とりあえず裏にいる店長に警察でも呼んでもらおう。


「てんちょー。警察呼んでください。また来ましたよ」

「あぁ?どうしてこんなに厄介ごとばっかりなんだ?」


 適当にあしらってスタッフルームのほうで店長に任せよう。……それにしても、日本語ペラペラだ。日本には長いこと住んでいるのかな?


「あー、裏の方で店長が今、警察を呼んでいるんでスタッフルームで待っていてください」

「警察じゃダメなの!」


 いきなり大声出すから奥で飲み物を見ていた男がこっちを見てるだろ。


「あの……お客様。他のお客様の迷惑になるので……」

「おい!大隅!何か繋がらないぞ。ちょっとバイクでひとっ走り行って来い」


 スタッフルームの方を見ると、店長がスマートフォンに釘付けになっている。一体何を見ているんだ?


「何見てるんスか?」

「何か結構近くで暴動だってよ」

「暴動?この日本で?」


 店長が動画を見せてくれた。確かに、車は燃えて人が襲われている。暴動だ。ただ、人を喰っているように見えるのは俺だけか?おっと、カウンターに金髪のネーチャンを残したままだ。


「店、閉めたほうがいいかな?」

「自分で考えてくださいよ」

「きゃああああああ!」


 悲鳴が聞こえたほうに行くと、さっきまで奥で飲み物を選んでいた男性が入り口付近で数人の人に襲われている。


「クソッ!離せ!……うぎゃああぁああぁ!」


 襲っていた一人が喉元に噛み付いて肉を引きちぎった。マジで!?気がつくと、金髪の人が腕にしがみ付いていた。とりあえず逃げよう。今の状況はまともじゃない。バイクでひとまず逃げよう。この金髪の人も見捨てるわけにも行かないし……。


「着いて来い!俺が安全な所まで送ってやる!」


 あれ?何か思わず余計なことを言った気もするが、どうせ警察署に送れば大丈夫だろ。ふと、入り口の方を見ると襲われていた男性が数人の人に喰われている。1人は腸を、もう1人は腕……うえっ。


「おげぇぇえぇ」


 思いっきり店内にゲロをぶちまけた。しかも、今ので襲っていた奴らがこっちを見ている。急いでスタッフルームに入って扉を閉めると、横にあるロッカーを倒す。


ガァン


 扉が激しく叩かれる。


「ねぇ。どうするの?」

「俺のバイクで警察署……自衛隊の基地まで行こう」


 あんなの警察じゃどうにかできるレベルじゃない。ましてや、外にはあんな奴らが、うじゃうじゃいるだろうし。……あれ?俺のバックが机の上に出ている。ロッカーに閉まったはずなのに……まさか!


「無い」

「何が無いの!?早くしないと扉が破られるよ!」

「バイクの鍵が無いんだ!……まさか!」


 外に飛び出ると、そこには俺のバイクに跨っている店長がいた。こいつ!俺のバイクを盗む気だ!


「悪く思うなよ!」


 店長はそのまま俺のバイクで走り出して、大通りに出た。


ガシャン!


 ……店長が大通りに飛び出たのと同時に乗用車に跳ね飛ばされた。もしも、俺が金髪に人を後ろに乗せて出発していたら同じことになっていたかもしれない。


「前から来てる!」


 大通りからゆっくりとだが、明らかに様子がおかしい人が近寄って来ている。ってか、所々怪我をしているぞ。その後ろの大通りからは悲鳴が聞こえてくる。今は大通りから逃げよう。


「こっちだ!」

「え?どこに行くの?」

「人気の無い所に行く!」


 とは言ったものの、東京23区で人が居ないところなんて有るのか?とりあえず頑丈そうな部屋でも探すか。でも、もしかしたら入ろうとした部屋に変な奴らが居るかもしれない。そうなれば、コンビニで襲われていた男性みたいになるだろう。


「あの華やかな建物って何?」

「あれか?あれはラブホテルだ」

「普通のホテルじゃないの?」

「……男女が夜の営みをする場所だな」


 ……まてよ。ラブホテルならフロントの画面で空室かどうか判断できる。これなら、中に変な奴らが潜んでいる心配もないだろう。


「あのホテルに行くぞ」

「え?こんなときになんて考えを……」

「いいから着いて来い!」


 周りを見ると、変な奴らがすぐ近くまで迫っている。さっさと、ラブホテルに入ろう。

 中に入ると、フロントにタッチパネルが設置してあった。そのうち半分の部屋は入っていた。一応安めの部屋でも選ぶか。いざ出ようとしてお金を払えなかったら部屋から出れないからな。


 選んだ部屋に入り、しばらくすると扉にロックがかかった音がした。部屋に中は……普通だ。大きいベットが有って、大型テレビが置いてある。そして、ガラス張りのシャワールーム。


「始めて入ったけど、豪華な部屋だね」

「まぁ。こんなもんだろ」


テレビをつけると、どの番組も緊急放送をしていた。アナウンサーが同じ言葉を繰り返し伝えている。


『テレビの前の皆さん。自宅に戻り、家の戸締りを厳重にしてください。可能ならば出入り口を家具で塞いでテレビ、ラジオの情報に注意してください』


「一体どうなってるんだ?」


 外からはサイレンの音や、悲鳴が聞こえてくる。時々聞こえてくるのは銃声か?外は相当カオスなことになってそうだ。


「これからどうすればいいの?」

「その前に自己紹介と行かないか?これから行動を共にするんだろうから、名前ぐらい」

「分かった。私はイザベラ・ミラー。ジュピア共和国から観光で来たの」


 聞いた事無い国だ。……まぁ、地理なんてまったく分からないけどな。


「今度はそっちの番」

「俺は大隅 一だ。出身は石川県だ」

「いしかわけん?」

「……とりあえず今日は休もう。暗くなってきた。明日になれば警察が動いてくれるだろ。それでも無理なら自衛隊が出てくれる」

「じえいたい?」

「軍みたいな物だ」


 テレビでは相変わらず同じ文面を伝えている。


「同じベットで寝るの?」

「……ソファーで寝る」


 イザベラさんがベットで眠っている間にスマホで情報収集だ。こういうときは掲示板が一番情報が集まりやすいんだよな。


『外でカップルが襲われてるwざまぁww』『何か環状7号線にフェンスが立っているんだが』『噛まれたんだがどうすれば良い?』『ワイ噛まれて咽び泣く』『肩パット買うの忘れた』


 色々情報がありすぎて何を見ればいいか分からない。とりあえず変な奴らは噛んで攻撃をしてくるみたいだ。あと、このことが起こっているのは東京だけみたいだ。いくら調べても他の県のことは出てこない。環状7号線にフェンスってのが気になるけど、それは明日起きてから見に行こう。


 目を閉じると意識がすぐに飛んだ。

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[気になる点] ベッドがベットに パッドがパットになっている
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