14話 ショッピングセンター
浜松北インターから高速道路を降りると料金所で一台の大型トラックが横転していた。運転席部分にはゾンビが群がっていた。あのトラックって、無理やり合流してきたトラックに似てないか?
「運転手の人無事かな?」
「もう駄目だろ」
良く見るとトラックの後部から火の手が上がっている。早く通り抜けないと火が広がって通れなくなる。
「結構都心部を抜けないと浜名湖にたどり着けないよ」
「分かってる。覚悟を決めとけよ」
料金所を抜けると早速事故車両で大通りがふさがれている。ゾンビも多い。流石に、この数はこの車じゃ突破できないな。こりゃ裏道を通った方が良さそうだ。
「裏道に行くぞ」
裏道に入るとゾンビはそこそこ歩いているが、道を塞いでいるような車はいない。こっちの方が比較的安全に通れそうだ。ゾンビを押しのけながら進むと、目の前に大きな川が現れた。何て言う川だろう?
「大きい川だね。……ゾンビが歩いているけど」
川は水深が浅いようでゾンビが川を渡っている。川の中州も安全というわけでは無さそうだ。まず、雨が降れば増水するし、無理か。
「どこに向かえばいいか分かってるの?」
「さぁ?このまま行けば着くんじゃないのか?」
「このまま行っても海にしか着かない!」
どこかで地図を見つけたほうが良さそうだ。このまま街中を回っていてもガス欠で車が止まってゾンビが群がってきて終わりだな。川沿いを進むが工場しか見つからない。どこかに本屋でもないかな?コンビにでも良い。
「あ、あそこに見えるのってコンビニの看板じゃない?」
「本当だ。そこで地図でも手に入れよう」
コンビニの看板が見えている方向に進むと真っ黒に焦げたコンビニが見えた。店の中に車が1台一緒に黒焦げになっていた。コンビニに突っ込んで炎上したんだろう。
「どうする?探す?」
「無理だろ」
「カーナビが付いている車を探した方が早いんじゃない?」
「だな」
車から降りると、それぞれ付近の車を覗き込む。早速、近くのミニバンを覗き込むとカーナビが付いていた。だが、鍵がない。田所さんみたいにエンジンをかけることは出来ない。こういうときは、近くのゾンビが鍵を持っていることがあるんだよな。
「鍵付いている車あったよ」
イザベラが一台の軽自動車の横で手を振っている。最近流行のミニバン型の軽自動車だ。
「ガソリンもいっぱい入っているみたいだから大丈夫そう」
「私後部座席で」
イザベラと、中村さんが後部座席に座った。運転は俺かよ。運転席に座ってエンジンをかけると、少しい遠くにいたゾンビがこっちに近寄ってきた。車を発進させると、ゾンビが車の進行方向に向かってきた。
ボフン
ゾンビを跳ね飛ばすと運転席と助手席のエアバックが作動した。ビックリした。心臓が止まるかと思ったよ。でも、運転に支障は無さそうだ。少し、しぼんだエアバックが邪魔だけど……。
「簡単に開くんだね」
「ここまで簡単にエアバックが開くとは思っていなかった」
「どこか広い駐車場を見つけてそこでカーナビで浜名湖を検索しよう」
広そうな駐車場を探しながら走っていると、かなり大きい建物が見える。その周りには広い駐車場が広がっている。何だこの建物?
「よくあるショッピングモールだね。もしかしたら生存者が居るかもしれないよ」
「入り口近くで止まって中の様子を見てみよう」
車を正面の入り口付近に停めると、入り口のシャッターは閉まっていて、その奥には商品棚が積み重ねられている。確実に中に生存者がいる。
「ねぇ!屋上に誰かいるよ!」
屋上で、誰かが必死に指を指している。その方向にあるものは、屋上の駐車場へと続くスロープがある。入り口はそこしかないのか?スロープの方へと向かい、上ると屋上付近で商品棚や、車で作られたバリケードが行く手を塞いでいる。しばらく待っていると、バリケードの中の車が1台動いて、車1台分通れそうなスペースが出来た。
「早く入ろう。後ろからゾンビが上ってきているよ」
後ろを見ると、普通の歩くスピードよりも遅いが、確実に登ってきている。早くバリケード内に入った方が良さそうだ。
バリケード内に入ると、迷彩服を着た人たちが小銃を持って寄って来た。どこのグループも、銃は持っているもんだな。案外、日本って銃を手に入れやすいのか?……まぁ、俺も拳銃を持っているんだけどな。
「エンジンを止めてゆっくり車から降りてきてください」
どこも警戒心が強いな。
「どこか怪我をしているところは有りませんか?隠しても、後の身体検査で分かるので今のうちに仰って下さい。身体検査のときにバレれば、その場で射殺です」
「今言っても射殺だろ」
「いえ、ここから立ち去ってもらいます。拒否すれば……」
「はいはい。好きに調べろよ」
イザベラ。上手く隠せよ。
別室で、持ち物検査と。体の隅々まで調べられた。もちろん、拳銃やバール、金属バットは没収。車の鍵も持っていかれた。ショッピングモール内のフードコートで座っていると、中村さんがやって来た。イザベラの姿はない。
「あ、いたいた。広い建物だから探すの一苦労したよ」
「イザベラは?」
「今、検査中。もうすぐ終わると思うよ」
話をしていると、イザベラがフードコートにやって来た。こうしてみると、周りの人たちからは浮いて見えるな。金髪で結構な長身だからな。
「東京での出会いの話を教えてよ」
「まずは中村さんからだ」
「え?私なんて話すことないよ。自分の住んでいたマンションでひたすら篭城していただけだよ。食料はベランダから隣の部屋に確保していたの。飲料は貯水タンクに残っていたのを飲んでいたよ。まぁ、食料も尽きて水も腐ったから逃げたんだけどね」
何か根性があるって言うか、運が良いのか?
「さぁ!話してよ!」
「分かった。話すよ。ただ……人が少ないところでな」
ショッピングセンター内にはかなりの人がいるが、裏の従業員用の部屋にはあまり人がいない……ってのを自衛隊の人に教えてもらった。
関係者以外立ち入り禁止の扉の先にある部屋に入ると、そこは従業員用の休憩スペースだった。ここでいいだろう。
「俺は……東京のコンビニでアルバイトをしていたんだ……」




