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1話 襲撃

以前、連載していた作品とは関係ありません。ご注意ください。

 あの日から一ヶ月が経った。ゾンビから逃げて日本を移動し続ける生活には慣れた。


「何してるの?片付けて出発するよ」

「お、おう」


 一ヶ月前までは俺は、大隅おおすみ はじめという名前で中央区のコンビニで店員をしていた。


「はじめー!早く!」


 そして、隣でバックパックにキャンプ道具をつめているのが、あの日に逃げいている途中で出会ったイザベラ ミラーだ。話を聞く限り観光でヨーロッパの聞いたことの無い国から来ていたらしい。日本語は俺よりも上手いかもしれない。


「どうしたの?」

「いや……最初は震えまくっていたのに一ヶ月でこんなに、たくましくなって……」

「しょうがないじゃない。帰ろうにも、日本国内の空港は使い物にならなくなったんだから」


 日本国内どころか、海外の状況すら把握できないんだけど。

 バックパックに寝袋を積めて、唯一の武器であるバールを手にして、ライダースーツを着てっと。後は車の鍵か。


「今日はどうするの?」

「いつもと同じだけど?元人口密集地を避けて進んで頑丈そうな建物で眠りに付くんだよね」

「同じ場所に留まるとゾンビが集まってくるからな」


 ゆっくりとマンションの扉を開けて廊下を確認するとゾンビの姿はいない。


「今のうちだ」


 廊下を進んで非常階段の扉を開けると、真上の階にゾンビが居るのが足音で分かった。階段の狭い場所だとバールは戦いにくい。かと言ってイザベラの持っている金属バットもダメだ。ここは静かに降りてやり過ごそう。


「静かに行くぞ」

「うん」


 ゆっくりと階段を降りると非常階段の入り口の柵にゾンビが一体しがみ付いている。


「どうしよう?」

「勢い良く柵を開けるから倒れたときに頭をしとめよう」


 柵越しにゾンビに近づくと、こっちに気が付いたのか柵越しに掴んでこようとする。


ガシャァン


 柵を蹴飛ばして開けるとゾンビが地面に仰向けで倒れた。すかさずイザベラが頭を叩き潰す。頭を叩き潰されたゾンビはピクリとも動かない。


「早く車に乗るよ」

「そう急ぐな。ちゃんと車の下も確認しないと」

「一週間前だっけ?車に乗り込もうとしたら足をつかまれたんだっけ?」

「あの時は終わったと思ったよ」


 車の下を確認すると、空き缶が一個転がっているだけだった。風で転がってきたのか?……そんなことはどうでもいい。さっさと出発だ。


キュキュキュブルン


「今日はどこ行くの?」

「今が熱海市だから……富士市に行きたいな」

「結構な大きさの町じゃなかった?どうして行くの?」

「銃砲店があるんだ。この混乱の中じゃ、荒らされているだろうけど」

「銃ね……多少なら使えるよ」

「マジで!?」

「故郷で少しだけ使っただけだよ」


 そんな話をしている間に沼津市に入った。道路が所々事故車両で通れないな。この車にはカーナビが付いてないからあまり裏道には入りたくない。迷うのもそうだし、狭い道でゾンビに囲まれればこの軽自動車のパワーじゃ脱出できない。


「また、トラックが道を塞いでるよ」

「隙間無く埋められてるな。しょうがない。裏道に行くか」


 住宅街に入るとゾンビが増えてきた。車のエンジン音に気が付いたのかこっちにヨタヨタと、歩いてくる。まぁ、この改造した軽自動車なら標準体型のゾンビなら引いても大丈夫。窓には警察の護送車みたいな網をつけて、フロントには自作のカンガルーバーをつけてある。


「あまり無茶しないでよ。デブを跳ね飛ばしたときに一台車潰したんだから」

「あの時は調子に乗りすぎた」


 イザベラが言っているのは一週間前のことだ。初代の自作装甲車のセダンでバイパスを走っていたときに、体格のデカイゾンビを跳ね飛ばしたら車が大破したんだよな。あの時は死ぬかと思ったよ。


「それにしても、この町は事故車両で道がよく塞がれているな」

「……これって誘導されてない?」

「え?」


 目の前の道が大型トラックで塞がっている。バックするしか無さそうだ。ギアをバックに入れると、後ろからワンボックスカーが迫ってきて停車した。


「誰か出てくる!」


 車から降りてきた人達は散弾銃や拳銃で武装している。そして、頭にはフルフェイスのヘルメット。あぁ。終わった。


「おい!エンジンを切れ!さもないと撃つぞ!」


 運転席の窓越しから散弾銃を突きつけられている。逃げようと車を動かせば頭が吹き飛ばされる。ここは大人しく従うしかないだろう。

 エンジンを切って両手を挙げながら車から降りると、後ろで小さく悲鳴が聞こえた。


「ぎゃっ!」


 後ろを振り向くとイザベラがボンネットに押さえつけられながら痙攣していた。一体、何をしたんだ!?


「何しやがった!?」

「安心しろ。殺しはしねぇよ」


 首元に何か当てられたと思った瞬間に……あれ?体が痺れて……。


「まだこいつ意識があるみたいだ」

「顔面殴っとけ」


 意識が飛ぶ前に見たのは散弾銃のストックをフルスイングする男の姿だった。

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