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3話から本編開始と、とっていただければ幸いです。
「なぁ、カズマ。これをこうしたら、上手くいくんじゃないのか」
ケイトは糸を結ぶと解く動作をしてみせた。
「俺もそう思った。だけど、覚えてるか。あそこはそんな簡単に崩れる場所じゃない。『好夢機関』――知ってるよな」
「もちろん。好きな夢を見させては人をたぶらかし、金を貪る永久機関……だっけ?」
カズマは頷くと、バックパスを表示した。
ここから目的地の「サウランド・ヒップ」までだ。これがあれば容易に、疲れずにたどり着ける。
「あれがつながっているんだ。裏でな」
「よくある話か。裏では『好夢機関』が、表では大手ゲーム会社ときた。最強コンビじゃないか、仮想世界で夢を見させて、それを収益とする。それに人は気づかない、ゲームをしながら好きなコンディションを作り出しプレイする。終了時間がくるまでね。病みつきになり中毒者が多数だそうだ」
「ゲーム名は『星の涙』。感動的なタイトルから伺えないようなストーリーと、レーザー銃での銃撃戦が楽しめる。プレイヤーはその中で二つの勢力にわかれる。星を守り奪還する側と星を奪い敵を倒す側。大した差はないらしいが、人気なのは星を奪う側――クラウズだな」
ひゅ~と、ケイトが賞賛に口笛を吹いた。
「物知りだな。やったことあるのか」
「まさか。だけど動画はみて、基本知識は知ってるいるよ。見た感じはスターフォーズのような感じだ。帝国軍と反乱軍、プレイヤーはそのどちらか。決まった服装もあるが、自由だ。武器も、兵器も、カスタマイズができるそうで、興味をそそられたよ」
「さすがは同時に一億人がやってるゲームだ。感心感心! だが、それを俺たちもするんだろ?」
造作無くカズマは頷く。
「だからの「サウランド・ヒップ」だ。そこでなら安全かつ、機関の目をすり抜けられる」
「目的はそのゲーム内に存在する『エンターブレイン』の確保と……」
思い出せないケイトの口を次ぐようにカズマが言った。
「ゲームを楽しみ、このゲームの戦いを終わらせるんだよ!」
いつになく楽しみな様子。
それはケイトも同じだった。ゲームが好きなもの同士、未知のものに目がないのだ。
「オーライ。でもあれは終わるのか? 終わらないようにできてるんじゃ」
「言ったろ。どちらかで勝利すれば終わるんだ」
「なるほど。じゃあ、星を奪うか、相手を倒しきれば終わるのか」
「そうだ。だから、俺たち二人はそれぞれの軍につくとしよう」
「てっきし、同じ側でするかと思っていたよ。まあ、そっちのほうが面白いか! それで、どっちがいいんだ」
ここでカズマが提案する。
「一斉のせで言うというのはどうだ。同じならジャンケンか話し合い、お互いが分かれているのなら励まし合う」
ニッとケイトは笑うと
「なぁ、カズマ。確かお前はシスが好きだよな、あとトルーパーが」
「もちろん。あのトルーパーのフォルムと暗黒面の強さ、憧れを持たざるにおけないじゃないか!」
ここから脱線しても、カズマの一人喋りが続くためにケイトは切った。
「なら答えは決まってるな」
「そういうお前は決まったのか?」
「もちろん!」と自信満々でケイトは答えた。
「じゃあ、せーのっ!」
答えが分かれる。それはケイトの想像道理に運んだ。
もちろん、自分が反乱軍が好きでXウィングのようなパイロットに憧れたからでもある。
「これでお互い敵同士だな。お互い、頑張ろうや」
ケイトが手を差し出すと、力強くカズマは握り締めた。
痛い、痛い! と笑いながらケイトは振りほどいた。
「ここからその場所まで、どうやって行くんだ? 手段はあるのか」
「バックパスを既に獲得済みだ。だから無人のVIPリムジンが間もなく来るはずだ」
言ったのも束の間、地平線から黒塗りの長い車が姿を現す。
ケイトはよくやるよと、口笛をふいた。
『お待たせしました、お客様。二名様で』
接待型機械が運転席からノイズのない綺麗な声で尋ねた。
VIP用だからか、服装も容姿も整っている。この一体だけでも、相当な値が張るはずだ。
「これを」
カズマは表示させたバックパスをみせる。
人型ロボットが覗き込むと「どうぞ、お足元と頭上にご注意を」といい、座席の扉をあけた。