エピローグ
《エリューシオン王国 王城内》
国王夫婦に姫君が誕生して半年がたったこの日、王城内は悲しみに満ちていた。
若くして王位を継いだ王は善政を行い、民を虐げることはなかった。王家は民だけではなく、臣下にも愛され敬わていた。
若き王は、夜間何者かが姫の私室へ忍び込み誘拐した事実を静かな怒りとともに全力で行方を捜すように近衛を始め騎士団へ命じた。
王妃は幼く病弱な姫が誘拐されたことに悲しみ、しかし王妃としての矜恃を持って己の侍女へ命じ情報を集めた。
幼い王太子は己が可愛い妹を守れなかったこと、両親と違って己には力が無く何もできない無力を嘆いた。そして、王族として教育を受け幼い子どもにしては優秀な頭脳を持って犯人を突きとめようと考える。
彼らは、臣下の力を借りて夜中に他者が忍び込んだように偽装し、己は魔法で眠らせられたように見せかけていた姫付きの侍女や警備していた一部の兵士が誘拐に関わっていたことを突きとめる。彼らは一様に教会で女神の宣告を受けたのだと主張するが、教会は一切の事実は無く彼らの妄想だと宣言した。
王家の威光を守るために、この事実は民へ明かされることはなく秘密裏に国中を探すことになったがその行方は見つかることなく永い時間が過ぎ去ることとなる。
時を同じくして、あまりに強すぎる魔力と敵には容赦しない傍若無人な攻撃魔法の使い手である"破壊の魔女"に弟子が誕生する。それはまだ生まれて1年も経っていない赤子であり、皮肉にも姫君と同じ黒髪に紫の瞳を持つ女の子だったという。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
これで第一部赤ちゃん編は終了です。次は、魔女に拾われた彼女の物語を書いていきたいと思います。まだしばらくは、なかなか元は看護師という特徴を生かせないかもしれません。少しずつでもその特徴が出てくると思いますので、どうぞ気長にお付き合い頂けると幸いです。