5歳児と魔銃使いの過去。
俺は、テイントベル大陸にあるこのエリューシオン王国と同じくらい大きい国であるディカヴァー帝国の隅っこにある山間の小さな村で生まれ育った。15歳になった俺は金を稼ぐために一度は村を出たが、そこそこ冒険者として名前が売れて村に残していた恋人と結婚するために数年後に村に戻った。
妻になった恋人"サリア"との暮らしは幸せだった。サリアは、もともと身体が強い方ではなかったから子どもは諦めていた。けれど、俺たちの間に子どもが出来たことを知ると、あいつは絶対に産みたいと言って譲らなかった。そうして、生まれたのが"マリン"だった。サリアの命を引き替えにして・・・。
サリアを失ったのはとても辛かったが、それでも俺にはサリアが命をかけて産んでくれたマリンを立派に育てるという希望が残された。俺は、サリアと同じで他の子どもに比べて病弱だったマリンを育てる傍らで必死になって冒険者を続けた。金がなけりゃあ暮らしていけねーからな。山間の小さな村だ、そんなに仕事がある訳じゃあ無い。マリンが5歳を過ぎた頃から、俺は数日~数ヶ月単位で大きな街へ冒険者として出稼ぎに行った。
その間は、俺の幼なじみの女がマリンの面倒を見てくれていた。俺は、その女を信じていた。それが大きな間違いだと気がつかずに・・・・・。
悲劇はマリンが8歳になった頃に起こった。
数ヶ月かかったが依頼を達成した俺が家に帰り着くと、マリンの姿は家の中のどこにも見当たらなかった。隣の家の家族にマリンの居場所を聞きに行くが、はっきりと答えねぇ。その言動に不信感を抱いた俺はそいつらを強く問い詰めた。
そいつらは、俺がいない間に"教会"と幼なじみの女がマリンを連れて行ったことを白状した。そして、マリンに"病弱認定"が与えられたことも・・・。
村にある小さな教会へ俺は急ぎ駆け込み、神父である中年男に詰め寄った。最初は、知らぬとばかりに憤慨していたそいつも、少しばかり脅せば面白いほどに口を割った。自分は村長の末娘に頼まれて認定を与えただけだと・・・。情報を聞いた俺は、何かを喚き散らす神父にさらに1発拳を叩き込み、村長の家へと向かった。
村長は自分の家を襲った突然の俺の暴挙に最初は驚いていた様子だった。村長の末娘である幼なじみの女は、怒り狂ってマリンの居場所を聞き出そうとする俺を最初は宥めようとしていたが、近くの物や自分の家族へ当たり散らす俺を見て怯え始めた。そして、俺の大切な妻の忘れ形見である"娘マリン"を二ヶ月前に冬の奥深い山の中へ捨てたことを白状した。女は、俺に惚れていたのだと、子ども(マリン)さえいなければ俺がこの女を愛するなど、巫山戯た理由で実行したのだと涙を流すが女へ憎しみと殺意以外の感情が浮かぶことは無かった。だが、女を責めるよりもマリンを探しに行くことが先決だった。・・・・・心の何処かで結末を予感しながら。
奥深い山の中は、真冬の季節は過ぎたというのに未だに身体の芯から凍り付くように寒かった。俺は、マリンの名前を叫びながら数日間山の中を彷徨った。体力も限界に近づいてきたのを感じ、木々の開けた場所にあった岩の上に腰掛けた。
寒い雪も残る山を彷徨い続け数日間、身体は悲鳴を上げているが未だに見つけられない娘のことを思い再び動き出そうとした。
その時、数日前に雪がやみ、一部溶け始めていた雪と地面の隙間で太陽の光に反射し何かが光ったのが見えた。近づいて行くとそこには、妻"サリア"が俺に贈り、"俺"が娘"マリン"へ贈った青い石のペンダントが落ちていた。震える指先でペンダントを拾うために手を伸ばした俺は、雪の白に混じって他の"白い"物があることに気がつく。それを悟った俺は、両足から地面へ崩れ落ち慟哭の叫び声を上げた。




