5歳児と魔銃使いの謝罪。
「・・・ああ、夢ですか?すみません、お師匠様すぐに起きますね。」
笑顔でお師匠様へ伝え、いそいそと布団に横になり眠る体勢に入る。・・・私が治癒魔法なんてものが使えるはずが有りません。ええ、絶対に。
「え?ちょっと、リク?」
「おいおい、おじょーちゃん。なーに、現実逃避してんのかな?」
眠る体勢に入ろうとした私をお師匠様とキースさんの声が呼び止めます。
「だって、・・・あり得ませんよ。」
「・・・有り得るんだよ。もし、おじょーちゃんの魔法がなけりゃあ・・・・・・俺は此処に居なかったからな。」
初級の魔法すら使えないはずの私は、お師匠様の言葉に自信無く反論しました。そんな私へキースさんが語りかけます。
「キースさん・・・。」
「・・・だからよ、ありがとな」
そう言って、キースさんは私に向かって笑顔を見せてくれました。
「それからな、あー、ちょっと、おじょーちゃんと話がしてぇんだがよぉ、破壊魔?」
「・・・ふんっ!仕方ないわね!
リク、何か嫌なことにされたりしたらすぐに叫ぶのよ。
おししょーさまが、一瞬で助けに行くからね。
・・・妙な真似するんじゃないわよ、ふぬけ野郎!」
「うるせえな、わーてるよ。」
なんだか、言いにくそうに言葉を濁すキースさんへお師匠様は忠告すると、私には心配そうな視線と言葉をかけてから部屋を出て行きました。
お師匠様が出ていったあと、キースさんは顔を背けて唸り、ちらちらと私に視線を寄越しては口を開け、再び閉じるのを繰り返すため沈黙が続きます。
「キースさん?どうかしたんですか?」
キースさんの様子と沈黙に耐えられなくなった私はキースさんに話しかけます。キースさんは、一瞬ビクッと身体を震わせてから、観念したように話し出しました。
「・・・おじょーちゃんが起きたら、もう一度ちゃんと謝ろうと思ってたんだよ。
あの時は、大人げねえ態度をとっちまった。本当に悪かった。」
そう言って、深々とキースさんは頭を下げます。
「・・・・・あの時?」
「おいおい、覚えてねーのか?
ほら、俺が怪我した前の日に八つ当たりじみた、つーかっ、八つ当たりだな。
しただろーが、世界が残酷だ、何だってよぉ。」
・・・思い出しました。ですが、あれは八つ当たりでは無いと思うんですが・・・・・?
私は、コテンッと首を傾げて聞き返します。
「あれは、人生の先輩からの教訓といいますか、忠告では無かったんですか?」
「どーして、そーなるんだよ?」
キースさんは、私の言葉にガクンと力が抜けたかのように項垂れます。
「・・・はぁ、ほんっとに、なんて謝ろうかと考えてた俺って・・・。
でも、まぁ、おじょーちゃんは大物だな。」
「あまり褒められている気がしないんですが。」
キースさんは、口をとがらせて精一杯に不満と抗議の気持ちを表す私の頭をクシャクシャと撫でてきます。
「いいや、褒めてるぜ、おじょーちゃん。
・・・そうだな、たくさん泣かせて、迷惑かけちまったし、ちゃんと話さねえといけねーよな。
聞いてくれるかい、おじょーちゃん?愚かでどうしようもねえ、男の話を・・・。」
キースさんは、辛くて、苦しいのに泣くのを無理に我慢しているような歪な顔で私に話し始めました。