閑話 家族より思いを込めて。
《王妃 オリヴィア》
やっと会えたわたくしの愛しい子。
リチャードに似た黒い髪に、わたくしの瞳の色を持って生まれた子。どうか病魔にとりつかれることなく健やかに育ち、王族としての誇りを持った姫に・・・。
あらあら、泣き出してしまったわ。大丈夫よ、リチャードも、わたくしも、そして小さなあなたのお兄様も側にいるのだもの。どうか笑って、ゆっくりとお眠りなさい。
《国王 リチャード》
前王が身罷り、王位を継いでまだ間もない私を支えてくれている我が愛する后が愛らしい姫を生んでくれました。出産は一度経験したとはいえ不安なことには変わりなく、まるで戦場に立っている気持ちでした。ですが、母子ともに無事と聞いてとても安心しましたよ。
后の腕に抱かれている赤子は小さくしわだらけで、ですがとても愛しく感じました。貴方に名前を贈りましょう、貴方の名前はアレクシェル。どうか健やかに育って下さいね。
《王太子 ウィリアム》
僕は、エリューシオン王国の王太子として尊敬する父上の後を継ぎ立派な国王になれるように日々勉学や鍛錬に励んでいます。母上より、弟か妹ができると聞いた時はとても嬉しかったです。でも、周りの大人の中にはその子を利用したいと考えたり、僕に嫌な事を言う人たちもいます。僕は、そんな悪い人たちにだまされないように、そして父上のように笑顔でお片付けができるようにがんばりたいと思います。
母上の腕の中にいる小さくて、しわだらけの僕の妹。おそるおそる手を出したら小さなかわいい手で指を握ってくれた。少し力を込めたら壊れちゃいそうな小さな手。泣かないで、泣きやんで。僕が早く大きくなって、絶対に守るから。僕のかわいい妹姫。
この日、異なる世界より1人の魂が流れ着き、この剣と魔法の世界にあるテイントベル大陸のエリューシオン王国の姫として生を受けた。