5歳児とお師匠様と魔銃使いその1。
「名乗るのが遅くなってすみません。私はリク・エキザルトと申します。」
飄々と笑うアズノルクさんへ遅くなりましたが名乗ります。悪い方ではなさそうですが彼の探し人が、本当にお師匠様と同姓同名の人違いなのかが気になります。いっそのこと、お師匠様に会って貰った方が早いと思い家に招き入れることにしました。
「あのアズノルクさん、もし宜しければお茶でもいかがですか?
本当に別人かどうか確かめるためにも、お師匠様を呼びますので会っていきませんか?」
アズノルクさんの元へ近づき、彼の顔を見上げます。
「・・・おじょーちゃんはいい子だなぁ。
絶対に人違いだと思うが、将来きれいになりそうな子の誘いは余計に断れねーな。」
そう言いながら私の頭を撫でようとごつごつとした大きな手を伸ばしました。
「うっ、ちょっ、まてまてっ、こらっ!!!」
私の頭にもう少しで触れそうになったとき、氷りの矢のような物がアズノルクさんの身体目掛けて凄い勢いで複数飛んできました。
・・・冒険者というのはやはり凄いですね。完全に不意打ちでしょうに全て避けてしまいました。
「ふぬけ野郎、誰の許可を得てあたしのリクに触れようとしているの・・・?」
氷の矢が飛んできた方向には、完全に目が据わった見たことの無いような恐ろしい顔をしたお師匠様が立っていました。
「お、お師匠様?」
「・・・リクっ!!ごめんなさいね。気がつくのが遅くなってしまって。
そこのふぬけ野郎に何もされなかった?痛いところはない?大丈夫?正直に言っていいのよ?」
私がおそるおそる声をかけると、すぐにいつもの顔に戻りました。
「えっと・・・?ただ、お話しをしていただけですよ?何もされていません。」
私をいつものようにぎゅーっと抱きしめてきます。
「ダメよ、リク。
あれはふぬけた皮を被った女ったらし、ゴホン、オオカミよ。
油断してリクが近づいてきたら、頭からバリバリ食べるつもりなのよ。
やっぱり外は危ないわね。早く家に入りましょうか。」
お師匠様は笑顔で言い聞かせるように私に話します。そのまま家に入るつもりのようですが、アズノルクさんのことはいいのでしょうか?
「ちょっと待てっっ!この暴力女っ!!!
挨拶もなしに数年ぶりにあった仲間に普通いきなり魔法ぶっぱなすかっ?!」
「だれがっ暴力女よっ!このふぬけ野郎っ!!
爆炎系統の攻撃魔法を使わなかっただけ有り難く思いなさいっ!!!」
どうやら同姓同名の人違いではなかったようです。ですが、私を抱きしめながら怒鳴るのはやめて欲しいです。お師匠様は、怒鳴るたびに怒りが増しているのか私を抱きしめる腕に力を込めてきます。このままでは、窒息死か圧死してしまいます。
「お師匠様っ、落ち着いて下さい!ちょっと苦しいのです!」
ギブとばかりにお師匠様を叩いて注意を向けます。
「え?
きゃぁっ、だいじょうぶっっ、リク?!」
お師匠様の胸と腕からやっと解放された私は息を整えます。
「おいおい、だいじょーぶか?おじょーちゃん?」
大丈夫に見えるのならば今すぐ眼科に行くことをお進めします。