プロローグ
《プロローグ》
真っ暗な世界に"俺"はただ一人立っている。回りを見渡すが誰もいない。
" "
あの子の名前を叫ぶ。そうだ、"俺"はあの子を探していたんだ。
あの子の名前を呼びながら走る。いつの間にか周りは木々に囲まれている。
どこだ、どこにいるっ?!
あの子はまだ幼いんだ。早く見つけねえと、きっと恐がって泣いている。
どれだけ走り時間が過ぎたのか、数分いや数時間か?
わからねぇ、早く見つけねえと…。
だが、何かが可笑しかった。
"俺"が最後にあの子に会ったのはいつだ?
思わず、足が止まってしまった。深く考える始める前に、突然数十歩ほど先に光が見えた。光は徐々に小さくなり、光が消えたその場所に探していた記憶の中の通りのあの子がいた。
" "
疑問に感じていた事も、あの子の姿を見れば頭の中は安堵と喜びでいっぱいになり夢中で駆け寄った。
" "
名前を呼びながら抱き締めれる。確かに腕の中にあの子の身体のぬくもりを感じる。強く抱きしめ、この腕の中にあの子を取り戻せたことに歓喜した。強く抱きしめたあの子に迎えに行くのが遅くなったことを謝ろうとしたが、腕の中の温もりは消え去り"俺"の手のひらに小さな白い骨だけが遺された。
それを何か理解した"俺"は、その過去の悪夢から飛び起きた。
--くそったれ、いつまで俺は…。
心臓の鼓動は早鐘を打つように拍動し、全身汗でぐっしょりと濡れている。身体の表面は燃えるように熱く、反対に身体の芯は冷水を浴びたかのように冷えきっていた。まだ朝にはほど遠いが、俺はこれ以上眠る気にはなれなかった。
気持ちを落ち着けようと、目を閉じ祈るように胸元にあるペンダントを握る。しばらくそうしていると、徐々に気持ちが落ち着き始める。気持ちが落ち着けば汗で濡れた身体を不快に感じたため、宿の部屋を抜け出し宿の裏手にある井戸を目指した。
井戸の冷えた水を頭からかぶり、手早く身体を拭きあげる。ふと、上を見上げると大きな丸い満月が金色に輝いていた。その満月はある女の瞳を思い出させた。悪夢の影響で最悪な気分だった男にとって、その記憶は気分を紛らわせるには十分だった。男は片方の口角を上げ苦笑し、しばらく会っていなかった女の姿を脳裏に思い浮かべる。
--久しぶりに会うのも悪くないかもしれねえな。
男は女の姿と一緒に居場所までの最短距離を頭に思い浮かべ、会いに行くことに決めたのであった。
《ユーラスの森》
エリューシオン王国内には屈強な冒険者も立ち入ることを躊躇うような深い森がある。そこは、昼でも薄暗く多くの魔物が住んでいる森であった。一番近い町や村でも馬で数時間を必要とする距離であり、旅人や商人も遠回りをする危険な場所である。人々は、畏怖の思いを込めて"魔の森"と呼んでいた。
そんな深い森の中に一軒の隠れ家のような家があった。周囲を木々に囲まれ、魔物が入り込めないように結界が張られている事から家主は力ある魔法使いであることがわかる。
家の周囲には小さな畑や井戸があった。そんな小さな畑の中にまだ幼い女の子がいた。女の子にしては珍しく黒髪を短く切り、一見するとまるで男の子のように見えた。しかし、その大きな紫色の瞳や顔の造形は女の子らしさを表していた。
女の子は両手一杯に畑になっていた野菜を抱え家の中に消えていった。しばらくすると煙突より煙が登り始め、美味しそうな料理のにおいが風に乗って消えていった。
いつも呼んで頂きありがとうございました。
第2部を書き始めましたが、誤字脱字やご都合主義な部分も多々あるかと思いますが少しでも楽しんで頂ければ幸いに思います。