番外 ハナダとローナ陣営の狩りの話
ハナダがセイランよりも変態だって話です。
(ハナダ視点)
初めて会った時、長年探していた私の女神だと思った。女神は言葉遣いは乱暴だが、私より頭一つ分低い身長なところや、いつもは堅苦しい鎧に身を包んでいるが実はスタイルが良かったりするところなど、女性としては申し分ない。少なくとも女神の親友よりは女性として優れているといっても私の弟以外は反対しないだろう。私としては他の男達に見せて欲しくないのだがな。
それにしてもヴァンサ大陸に帰る道が閉ざされた時は、弟の為とはいえ私たちの体に合わないこの大陸に居る事に絶望した。その後も、ドワーフ達には苦渋を飲まされたことも多かった。それさえも女神に会う為の試練だったと思えば必要な事だったとさえ思える。いまでは女神の眷属だというだけで、愛すべき人達と思えるのだから自分の事とは言えビックリしたものだ。
それはさておき、今は女神と2人だけで、2度言おう、ふ・た・りだけで狩り(デート)なのだ。メリダ師匠には感謝してもし足りないだろう。心の中で拝んでおこう。
それにしても何を話せばいいんだ、とりあえず移動だよな。
「河へ向かう。何かあるか?」
私は馬鹿だろうか、もっと言いようがあるだろう。女神は気にしてないだろうか。
「わたしは大丈夫だぜ。それこそ何か必要な物があれば持ってくるぞ?」
「今日は様子見だからな、とりあえずは大丈夫だ。いくぞ。」
心が浮き立っているのを悟られない様に、女神の前を歩く。本当は並んで歩きたいんだが、行きは私しか道がわからないし仕方ないか。
河へはわりとすぐ着いた、もう少し歩けば会話がはかどりそうだったのに惜しい事をした。村が河の近くにあるから仕方ないんだが……。
「この辺りでは何がとれるんだ? おっ結構浅いか?」
女神は河に着くと、楽しそうに鎚の柄で水深を測っている。あぁ眩しい、なんて素敵な笑顔なんだ。おっと、危ないな。
「気をつけろ、浅い所にはロックアリゲーターが居る。大人しい奴だが石と間違えて踏むと襲ってくる。」
河に入って行く女神を止めようと足を踏み出した所、不覚にもバランスを崩してしまう。
「うわっ、ハナダ兄気をつけろよ。意外とおっちょこちょいなんだな。」
「あ、あぁ……すまない。」
今の状況は、転けそうになった私は抱きとめられていたりする。これは恥ずかしい……まぁなんか新たな世界を開けそうだ。いい香りがするな、ちょっとこのままで。
願いはむなしく、すぐに体勢を整えてくれた訳なんだが。惜しかったなーーーほんとに惜しい。
「おっ、いい感じだな。いっちょやるか。」
ブンッ
女神は何かを見つけたようで、足を肩幅に広げて体勢を安定させた後、鋭い殺気と共に振るわれた鎚が水面ギリギリを翳めて振り上げられた。
バシャンッ
鎚が振るわれたほんの先の方でロックアリゲーターが、回転しながら川底から空中へと吹き飛んでいた。
どうやら、衝撃波を起こして飛ばしたようだ。そして私は目が離せなかった。
水しぶきが光り輝いて、女神に神々しさを与えていた。あぁ、貴女は戦女神だったのですね。美しいーーーーー。
「よっし、こんなもんかな。あれっハナダ兄、釣らなくていいのか?」
時間も忘れて見つめていたようだ…、岸には5頭ものロックアリゲーターがいた。私の半分くらいの大きさなんだが持って帰れるだろうか。そして私も釣らなければな。
サクサクと竿を振るっては魚を釣り上げていく。網いっぱいになったところで止めた。自らの大きさと同じくらいあるが、この程度なら大丈夫だろう。さて、ロックアリゲーターも持つか…ん?
「ハナダ兄、終わったんだろ。早く帰ろうぜ、はらへった〜。」
片腕に縄で纏めたロックアリゲーターを担いだ彼女は、意気揚々と村へ向かって先に進んで行く。
今日は、女神の色々な姿を見せてもらった。あぁ幸せだ……。
女神とミイコ殿の勝負の行方だが、結果としては引き分けだった。量は私たちが、質はミイコ殿のほうがよかったのだ。それにしてもダンジョンの遺跡があるのか、興味深いな。
* * * * * * * * * *
(ローナ視点)
ハナダ兄は無口だ、笑っている所もあまり見ないよな。何を考えているか判らないが、少なくともセイランよりは大人だと思う。
メリダばあちゃんはわたしのこと解ってくれてるよな〜。師匠に教わってから使いたくてたまらなかったんだよ。
「河へ向かう。何かあるか?」
「わたしは大丈夫だぜ。それこそ何か必要な物があれば持ってくるぞ?」
「今日は様子見だからな、とりあえずは大丈夫だ。いくぞ。」
ハナダ兄はわたしのことが邪魔なんだろうな、いつもより無口だ。まぁ、驚かせてみせるぜ。ハナダ兄の背中にむかって、ミイコから教えてもらった「アッカンベー」をする。そのタイミングで話しかけられたから焦ったが、顔は前を向いていたしセーフか?
向こう岸が見えないのはグリュック河と一緒だが、こちらは川辺が浅くなっている。
「この辺りでは何がとれるんだ? おっ結構浅いか?」
「気をつけろ、浅い所にはロックアリゲーターが居る。大人しい奴だが石と間違えて踏むと襲ってくる。」
ハナダ兄の声に振り向くと、転けそうになっているハナダ兄の姿があった。
「うわっ、ハナダ兄気をつけろよ。意外とおっちょこちょいなんだな。」
「あ、あぁ……すまない。」
思わず手を出して腕をつかみ引き寄せて体を支えたんだけど、大人の男にはこの体勢は恥ずかしいか? それにしても、よくこんな細さで槍を振り回してんなぁ。
ハナダ兄をちゃんと河にたたせて、川底を見つめる。河の流れと反対方向へと動く影がみえた……石の様な皮膚をした長細いトカゲがいる。まだこちらに気づいてなさそうだな。
「おっ、いい感じだな。いっちょやるか。」
足を肩幅に広げて転けない様に踏ん張る。そして目をつむり…精神を集中させてから鎚を振り上げ水面に叩き付けた。水の中を進んで行く衝撃波がロックアリゲーターを空中へと踊り上げた。わたしは空中へと飛び出したロックアリゲーターに鋭くした衝撃波を放ち、命を刈り取る。
師匠なら一発で終わるんだろうなぁ。この感覚を忘れないうちに後数匹行くか〜。
「よっし、こんなもんかな。あれっハナダ兄、釣らなくていいのか?」
その後4頭倒したところで、ハナダ兄に声をかける。釣りの邪魔だったかな、ハナダ兄は腕をくんで静かにわたしをみてるんだけど怒ってる?
どうやら大丈夫だったようだな。わたしが岸に上がると交代で釣りをしているし待っててくれたんだろう。可笑しい早さで魚がつり上がってんなぁ。
「ハナダ兄、終わったんだろ。早く帰ろうぜ、はらへった〜。」
一段落ついたハナダ兄に声をかけて村へと帰った。こんだけあればミイコに勝てるだろう。そう思って帰ったんだけど、まさかダンジョンの魔獣肉というレア食材を調達するとかどういうことだよ。
ったく、明日こそ勝つ!!
ミイコにロックアリゲーターをどういう風に穫ったか話をしたら、
「お前は熊かっ。」
とか言われたんだが、なんだ?
読んで頂きありがとうございます。




