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お久しぶりです。帰ってきたと思ったら、ノーパソさんのキーボードの入力がなんか変な事になってるしで、やっと復旧しました。

 その日の昼食後、ガイツさんに訓練に行こうと誘われて連れ立って向かった先は、何故か役所だった。私の異世界転移特典で『役所』と自動的に翻訳されているんだけど、実際の業務内容は町の成人人口と各ギルドへ所属している人間の把握、果ては町の警邏など警察の様なことも行っている。


「あら、ミイコちゃんも来たの? そういえば、ガイツさんから魔法を教わっていたのよね。」


 役所に着くとロイさんが入口で待っていて、そのまま、裏手にある小屋へと私たちを案内した。そこには今回護送する予定の村人達が居た。


「試しに聞いてみるものねぇ、まさか今は使い手がいないと思われていた魔法まで使えるとは驚きだわ。

助かったわぁ〜半数は無害でもこの人数じゃ…ねぇ、常に監視しながらの旅は骨がおれるでしょ。」


「わしの研究狂いも役に立つじゃろ。では始めるかのう……条件は逃亡と自害の防止、あとは…わしらへ危害を与えない、でよいじゃろう。」


 そして、ガイツさんは後ろで見学する気まんまんだった私に向かって良い笑顔で言うのだった。


「さっそく実践できるのう、さぁさぁ修行の成果をみせてもらえんか。」


 ーーーー何かあると思ってたけど、まさかの無茶振りだった。


「ほれほれ、ミイコちゃんのことじゃ練習しておろう。このの子とかどうかのう。」


 そういって村人の中から健康そうな若い男を私の前に立たせた。男は自分が実験台にされた為か青ざめた顔をしている。


「えっと、大丈夫ですよ。死にはしませんから。」


 気を楽にさせるために言葉をかけたのだが、顔を引きつらせているところを見ると逆効果だった?


 気をとりなおし、男の目の前に立ち詠唱を始める。


『心を照らす光よ  罪を照らす焔よ


 願うは 逃亡防止 自殺防止 我が仲間への危害防止 なり


 この者の枷となれ 戒めの鎖』


 私の両方の手のひらから光の輪が現れ、男の両手首に移動すると光が消えて茨のような模様が手首に刻まれた。


「ほう、ミイコちゃんの場合はこのような模様になるんじゃのう。詠唱もだいぶ簡素じゃし、なかなか面白いわい。」


 噛まずに言い切って、成功を噛み締めている私の側で、ガイツさんは懐から紙を取り出し模様を写し取っている。

 ガイツさんから最初に教わったのは余りにも長過ぎて覚えられずに不発するわ、うかつに短くすると掛けた相手が大変な目にあうわで、ホウとあぁだこぉだと話し合ってここまでの形にしたんだよなぁ。


「ちょっとお二人さん、まだまだ居るから後にしてもらえないかしら……。」


 ロイさんからの冷静なツッコミを受けて、ガイツさんと私は手分けしてはじめることにした。


「ミイコちゃんにはこちらの6人をお願いするからの。さてと、わしも弟子に負けられんわい。」


 そういって、ガイツさんは若い男性を6名を選んで連れてきた。年寄りは私が罪悪感を感じると思ってすべてガイツさんが引き受けてくれたようだ。それに的確に私の限界をついてくるあたり、さすがだったりする。


 2日に分けて総勢30名の村人に『戒めの鎖』を付け終えたのだった。ちなみにガイツさんが『戒めの鎖』をかけるとドラゴンの模様がついて、不謹慎にもその模様格好いいなぁとか思ってしまった。


 当日は生憎の天気で雨の中、数台の馬車と村人達、盗賊討伐隊から1パーティと私たちとビルさんの混合パーティーの大所帯でフランを出発した。


「今年こそ聖霊の日にゆっくりと美味しい食事が出来ると思ったんだがなぁ。」


 ビルさんの言葉を聞きながら、私も久しぶりに兄達と年越し出来ると思ったんだけど、思う通りには行かせてもらえないものだと考えていた。


 ビルさんのぼやきも仕方ない、私たちはひとまずヒッツへと向かっているのだが、残念ながらこの大所帯ではこの時期のヒッツには泊まる事ができないそうで、町の中で野宿なんだと。

 だけど女性陣だけは宿を取ってくれるそうで申し訳ない気分になる。


「しかも、聖霊の日が近づくと雨が続くんじゃよ。老体にはきついのう。」


 ガイツさんがそう言っているけど、理由をつけて馬車で寝泊まりしてそうな気がするんだよなぁ。そういう意味ではビルさんが一番貧乏くじ引きそうだよな。

 

 そして、ローナとロイさんの兄妹はいつもの漫才をしていた。


「ヒッツについたら、少し早いけど聖霊の日をお祝いしましょうか。そこから先はろくな町もないのよね。

そ・れ・に、限定スイーツを予約しておいたのよ! 数が少ないから女子だけでいくわよ。」


「姉貴を持った覚えはないけど? わたしとミイコとメリダさんでありがたく食べてくるよ。」


「冷たい妹よね。私の伝手なんだから、私も一緒じゃないと食べれないわよ。」


「まさか、宿まではこないだろうな。」


「さすがに私は野宿よ。でも、スイーツだけはゆずれないわ。」


 2人の話を聞きながら限定スイーツに思いを馳せていると、ローナが話を振って来た。


「ミイコも少しは抵抗したほうがいいぞ。兄貴とサオリの暴走が止まらなくなるぞ。今回もそんな格好させられてるし……。」


 あえて触れてほしくなかったんだけど、今の私は赤地に白の水玉柄で猫耳フードのついたカッパを着ている。


「無駄に高性能なんだよ。」


 その一言に、ローナは残念な子を見る目で私を見てため息をついた。


 何故こんな格好をするはめになったかというと、雨が続くと聞いて適当に防具屋で雨具を買おうとしていたところを捕まえられて手渡されただけなんだけど……。

 

 やっぱりサオリさんの血走った目に頷かざるを得なかった自分がダメなんだろうか。


 しかも中の服は誕生日プレゼントに貰ったズボンの方だったりする。良いものだけあって、捕まったときに着てたワンピースも汚れただけでほつれも無いから、これから先は重宝しそうなんだよな。


 そんな話をしながら5日後ヒッツに着いた。雨と大所帯ということもあって、いつもより移動に時間が掛かっている。ヒッツには2日滞在してしっかり体を休めてから、南下していく予定である。


 翌日に宣言通りロイさんがやって来て、例のチチズケーキを出すお店に向かった。


「いらっしゃいませ、ロイ様ですね。いつもありがとうございます。」


「予約しておいた限定ケーキをお願いね。」


 そういって、席についたわけだけど。


「いつもって、ロイさんどうやって来てるの?」


「お取り寄せしてるのよ。総合ギルドスイーツ部っていうのがあってね、各ギルドの権力を使って各地のスイーツを研究しているのよ。私はそれの東地域部長なの。」


 微妙な職権乱用を聞かされて複雑な気分になった。ローナはもはや兄を見る顔じゃなくなってる。メリダさんはにこやかな顔をしているところを見ると知っていたのだろう。


 出て来たのは、フルーツの乗ったレアチーズタルトだった。フルーツは甘味の強いものが多めで、合わせて食べると酸味のあるレアチーズと絶妙に絡み合っていい感じである。美味しいなぁ……。


「いいわねぇ、固いチチズケーキも美味しかったけど。柔らかいのは口当たりがいいわ、いくらでも入りそうで怖いわね。」


 そう言いながら別の種類のケーキも次々と注文していくロイさんを見て、私はそれ以上食が進まなくなったのは言うまでもない。


 ヒッツを出る日、馬車を2つに分けて盗賊討伐隊と私たちのパーティーそれぞれで護る事になった。これから先は、かろうじて道があるという程度の場所を進んで行く事になるからだ。魔獣もポラール山脈に近づくほど強くなって行くため、付かず離れずの距離を保ちながら私たちは進んで行く。


読んで頂きありがとうございます。

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