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「誘拐された後の様子について聞かせて貰っても良いかな?」
いつも使っている冒険者ギルドの小部屋には、盗賊団討伐隊の隊長と数名の関係者が待ち構えていた。私が座ったのを見計らって簡単な自己紹介の後、さっそく事情聴取が始まった。
今回の盗賊団討伐隊の隊長を務めてるのは、数少ない黒の冒険者のジェンドさんで、年の頃はビルさんと同じくらいだろうか、スキンヘッドと顔の傷が印象的で盗賊より盗賊らしかった。そして思ったより人懐こい笑顔と共に、お菓子を食べながらでいいからとショートケーキとジュースを出してくれた。
私はありがたく頂きながら、気づいた事を話していく。
「トイレ以外は馬車の中でしたけど、男性ばかりなのに年寄りや明らかに荒事に慣れていない者が混ざっていたのが不自然でしたね。そういう者達は待ち合わせ場所ではなく馬車と共に別の場所で待機してましたけど。
あと、ビルさん達と合流する前に1人の男が頭と争ったあと、どこかに行こうとして殺されてました。」
私の言葉に、ジェンドさんは少し苦笑いをして頭をかきながら謝って来た。
「すまない。そういや成人していたんだったな、子供扱いして悪かった。」
気にしてないと答えたけど、ショートケーキはもう口にしたから返さないよ。
「待機場所のほうは、たいした戦闘も無く捕縛されたそうだ。どうやら消えた辺境の村に住んでいた者達のようでな、行き場所が無くさまよっていた所を盗賊にそそのかされて男どもだけがついて来たらしい。
差し支えなければ、どうやってビル達と合流したか教えて貰えないか。」
私は少し逡巡してから答えた。
「固有魔法を使ったのと、陽動に隠していた睡眠薬を使ってちょちょっと…。」
「毒を使う者がいると聞いていたが君か、まぁ細かく言う必要は無いよ。それに……。」
ジェイドさんは急に真剣な表情になって、声を潜めた。
「どうやら内通者がいるようでな、フランでは大丈夫だったが他では不自然な程罠に掛からなかったり、反対に罠に掛けられたりとあってね。困った事にフランは大丈夫そうだから、とりあえずは本拠地をここに据えるかってところしか決まって無いんだよ。」
内通者のあぶり出しは難しいようで、フランを討伐隊の本拠地だとバレない様に工作するので精一杯なんだそうだ。
「今回は冒険者ギルドだけじゃなく役所や商業ギルドも加わっているのよ、関係者が多すぎるのよね。」
ロイさんがそう言って、うなずいている。彼は今回は役所側の担当者としてこの場に居るのだ。
「でだ、これからも協力をお願いしたい。成功報酬に君たちパーティー各人のギルドランクのアップも付ける予定だ。」
ジェイドさんの提案に、相談してから返答すると返して今日はお開きになった。おそらく今日も家に集まるだろう面々に、その時に相談すればいいかとそのまま武器屋へ向かう。鳥をナイフで狙ったのは良いんだけどその後見つけれなかったんだよね。
「おじさ〜ん。」
「おじさんじゃねぇ、お兄さんと呼べ。」
「特注ナイフ1本よろしく!」
「あぁ? もう無くしたのか。新しい素材を試したいから少し時間貰うぞ。」
「えぇ〜。重さかえないでよ。」
「わかったよ。ほんっと注文が細かいな。」
特注のナイフを作るのにサオリさんに紹介してもらった武器屋のおじさんもといお兄さんに注文した後は、おやつを買って家に戻る事にした。
今日はショートケーキを食べたから、モンブラン(ここではヴェーダって名前だったけどやっぱり山の名前だった。)にするかな。適当に数名分買って家に戻ったらロイさん以外まだ居るんだけど……。
「えっと…その荷物なんですか?」
しかもメリダさんが複数個の鞄を持って2階へ向かっているところに出会った。
「お帰り、ミイコちゃん。数日世話になるよ。」
そう言って去って行ったんだけど、どうなってるんだろう。ケーキを持って台所に行くと流士兄がいたので聞いてみた。
「ん? あぁ、今回の件が収まるまでは都合がいいからここに泊まりたいそうだ。ガイツさんも明日くらいに合流するそうだぞ。」
まだジェンドさんに返答してないんだけど、ビルさん達はここに来る事にしたのか。なんとなく流士兄の料理目当ての気がするんだけどな。ヴァンサ風の料理が好きとか言ってたし。
部屋が足りるのか聞いたら、お客さん用に離れを作っているから完成するまでテント生活らしい。離れとか初耳なんだけど。
「流士兄〜。これうちの母さんが持ってけって。今日のご飯何?」
ローナもやってきて、フォレストボアの煮込みだと言って渡していた。いつのまにかローナも餌付けされていたし。
庭を見るとビルさんの手伝いをしているハナダさんを見つけたので、おやつの時間を利用して今後の事を決める事にした。
「で、どうする?」
「わたしは依頼受けたい。こんな大きな事件なんていままでなかったし。」
「私は君たちの取り決めに従う。」
ハナダさんは意見なんてなかった、それでいいんだろうか……。私も今これをしなければいけないってこともないし、ジェンドさんの提案に沿うことにした。
あっさり決まって拍子抜けだ。こんなんでいいのか悩むけどロイさんも責任者としてこの件にかかわざるをえないし、自然とそうなるよな。
あんまり深く考えるのはやめることにした。ケーキがまずくなるーーーーう〜ん、生クリーム美味しい。このモンブランはカボチャ風味のクリームとゴトウカウの生クリームの2層構造がなんとも口に嬉しい。
「貴方達だけだと心配になるわ……。もう少し考えなさいね、今回は私も助かるからいいんだけど。」
ロイさんがいつのまにかやって来て私たちの話を聞いていたらしい。そんなに呆れなくても。
その後は、メリダさんに久しぶりに稽古をつけてもらったりしてた。同じ様にローナはビルさんに指導受けている。
その後は夕食になり、さすがに今日は泊まって行きそうなローナをひっぱってロイさんは帰っていった。
翌日、さっそくジェンドさんにアポをとって依頼を受ける旨を話した。そして、この件の依頼は漏洩を防ぐためロイさんから直接以来が行くことになることと、フランを長期に離れる依頼を受けないことが決められた。
ガイツさんも我が家に合流して来て、誕生日プレゼントだと光魔法を教えてくれた。嬉しかったが残念ながら使いこなせない物もある。例の馬車を護った結界の呪文はまだレベルが足りないようで、唱え始めたとたんに体が悲鳴をあげ始めて、鼻血が出たところでガイツさんにより止められた。
「成長速度が速いミイコちゃんでも、レベルより上の呪文は無理なんじゃなぁ。つぎはこの呪文はどうじゃ。」
研究のモルモットにされている感じがして、ちょっと殺意が湧いてきたのは仕方が無いと思う。だってものすごく痛かったんだけど、体がバラバラになりそうになってホウも動揺していた。
そんな日々を行って数日たったころジェンドさんより待望の依頼があった。
「この前捕まえた盗賊達がいるでしょ。村が消えた為に盗賊になったってことだけど、どうやらこの前のが初めてだったようなのよ。だから情状酌量もあって解放されるんだけど、そのまま放置っていうのも気分が悪いでしょ。だから、話をきいてかつての村付近の空いている土地を役所が貸し付けるってことになったのよ。
そこで、ビルさんと私たちで護衛しながら彼らを送って行く事になったからよろしくね。」
ロイさんは出発の日と時間を告げて慌てて帰って行った。今回の準備をまかされているようだ。
私たちも、必要な準備を始めることにした。出発は3日後である。
ひと月ほどipadだけの生活になるので、場合によってはひと月更新しないかもしれません。週に1回でもできるといいんだけどなぁ。
見捨てないでいただけると幸いです。
10/8 村人を送って行く場所の記載を追加




