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 森のひらけた場所の真ん中で男達に囲まれて私は座っている。気がふれた様に焦点が合わない目をしてぼーっとしていたら、良く知っている気配がして来た。ロイさんとハナダさんとビルさんが、通常感知されない位置なんだろう距離でこちらを伺っているようだ。ビルさん達からは男達が壁となって私の姿は見えてないだろう。


 私はそろそろ動けるように、コルセットの内側に仕込んでおいたギターのピックの様なナイフで少しずつ縄を切っていく。男達は子供だと侮って、私を背にして周りを確認しているからやり易い。


「どういうことだっ」


「あぁ? だまされた方が悪いんだろ。」


 バレたのかとドキリとしたが、どうやらそうでは無いようだった。私を囲んでいる男達から離れたところに居る頭と誰かのようだ。男達の足の間から見えるのはやっぱり足で状況がいまいち分からない。


「くそっ」


 男は私たちが来た方向へきびすを返して、走り出した。


「おい、やれ。」


 そう頭が言った瞬間、走り出した男は叫び声を上げて動かなくなった。私が見えない位置で行われているんだけど、どういう事だろう。


バササッ


 更に鳥がやって来た。視線が動かせないのが辛いな……。


「まだザオンの馬車がフランに戻ってないだとっ、どういう事だ? ーーーーー孫を連れてずらかるぞ。」


 やばっ。


 とっさに小声で『光纏こうか』と唱え、指輪に付いている隠し針をビルさん達のいる方向と反対にいる近くの男の首元に突き刺す。結構痛かったようで「リトルモスキートかっ」といって周りを見回している。リトルって、もしかして大きい蚊もいるのか…。私は振り返り、身体強化を掛けて見張っている男達の頭の上を飛び越えた。


「孫がいねぇぞ。どこだっ。」


 さすがに気づかれたようだ。出来るだけ地面に触れないよう少ない歩数で森へと入る。その頃には指輪に仕込んであった薬が効いたのか、男が倒れたようだ。


「おい、どうしたっ。」


「敵襲か?」


「ガキが何か隠してたか? おいあっちを探せ。」


 そして、男達の声を背後に聞きながらビルさん達の居る場所へかけていく。


「何だっ、盗賊達の様子がおかしいぞ。おそらく援軍はまだだろう、どうする?」


「早く行かないと、くそっ。」


 私がビルさん達の元に付いた時、ビルさんの言葉にロイさんがかけて行きそうになるのをハナダさんが止めているという事になっていた。


「私が逃げたからです。ごめんなさい。」


 私の言葉に驚いてビルさん達は周囲を見回している。あっ、解いてなかった。


「ここです。」


 目の前に急に現れた私に、3人とも口を開けて固まっている。


 光の纏はやっぱり、おなじみの光学迷彩もどきにしてみました。原理が解らなくて困ったけど、実佳兄さんの話を聞いて何とか形になった。光を迂回させてうんたらかんたら……で、最後はもうエイッて感じだったけどね。でも足跡とかは残るから、使う時は場所を選ぶし出来るだけ残らない方法をとらないとすぐ追いかけられると思う。


 動き出したのはロイさんが早かった。ハナダさんを背中にくっつけたまま私を抱きしめる。


「よかった……また失うところだった。お願いだから無理しないでくれ。」


 ロイさんがオネエ言葉じゃない、それに「また」って何?


「また失う……」


 私の言葉に我にかえったロイさんは、私から離れて微笑んだ。


「ミイコちゃん言葉のあやよ。だって昔飼ってたリトルウルフに似てるんですもの。あの子も怖いものなしな子だったのよ。それにしてもひどいわね。」


 いつもの口調に戻ったロイさんは、私を見てため息をはいた。お風呂も入ってないし、服も土ぼこりだらけだからね。


「感動の再会は後だ、援軍も来たようだから狩るぞ。出来るだけ命は取らずに行動不能にさせるように。」


 ビルさんが、森の奥から来たローナとその後ろに続く武装した男達をみてそう言った。


「ホウ行くよ。」


『待ちくたびれたよ〜、了解。』


 腕輪だったホウがガントレットへと変化したのを見計らって、私は再び捕まってた広場へと戻る。


「ここに居たのか、どうやって逃げ出した。」


 最初に行き当たった男に答えるよりも早く、腰からナイフを抜き出して相手の二の腕付近を傷つける。


「何するんだこのガキ。ーーーーー。」


 追いかけてきた男は、数歩進んだところで手足の自由を失って地面に倒れた。相変わらずこの麻痺毒は効く。


「気をつけるんだぞ。はぁっ」


 ビルさんの声と共に前方から男が飛んで来た。慌てて『水盾すいじゅん』を出す。セイランのピアスがなければ、詠唱破棄して出せないところだった。盗賊とは言え炎でジュっとかシャレにならない。おっと早く術を解かないと男が溺れ死にそう。自分で想像しといてなんだけど、不思議な効果だよな。


 どうやら、ビルさんが前方へ向かって振り下ろした鎚の余波でこちらまで飛んできたようだった。鎚が振り下ろされた場所はクレーターになっている、そしてその周りには気絶した男達がいた。

 そしてハナダさんやロイさんは、吹き飛んだ男達の足の健をきったりしながら無力化してるので、私も同じ様に毒を塗り直して刺していく。


「頭がいない。」


 倒れている男達の中に頭が見当たらなかった。感覚を研ぎすませるとこの先の森の中をすすむ人間の気配がする。ビルさん達にその事を話すと、その場を別の冒険者(フランで集められた盗賊討伐隊らしい)に任せて頭を追う。


ピィーーーーーッ


「なにしやが……(ドサッ)」


風刃ふうじん


ピィィッ


 頭が視認出来る程近づいた時、再び鳥が現れて頭へ向かって自らの鮮やかな緑色の羽を針のように飛ばした。それが刺さった頭はその場で崩れ落ちる。私はとっさに左手に『風刃』を出して飛ばしたが、やはり羽ばたきで消される。間を置かずに飛ばしたナイフはどうやら擦ったようで、鳴き声とともにこちらへ向かって羽が飛んで来る。『炎盾エンジュン』で防いだが、鳥はその隙にきびすを返して逃げて行った。どうやら塗ってあった麻痺毒は効いて無いようだった。


「あの鳥なのね、たしかに厄介だわ。」


「あれはウィーオウという、ヴィントにいる上位の魔獣だ。人に使役されているのは初めてみたな。」


 ビルさんが、例の鳥を知っているようだった。風の魔法を操り猛毒の羽を飛ばす鳥で、カラスくらいのサイズなのに黄の冒険者でも数人であたらなければ倒せない厄介な鳥なうえ、肉も毒があって食べれないこともあり不人気だそうだ。


「やはりダメだな、口封じだろう。」


「こんなやりくちの盗賊団は聞いた事ないわね。どうなってるのかしら。」


 頭は泡を吹いてこと切れていた。ロイさんが頭を抱えて広場に戻り、その場にいた冒険者に預けた。私を気遣って先にフランへ帰る事になり、後日改めて話をしてほしいとその場の責任者からあった。


 家にたどり着いたら、いきなりドアが開いて兄さん達が出て来て抱きしめられる。今の自分の状態を考えると抱きつかれたくなくて、及び腰だったんだけど2人にがっちりホールドされました。


「怪我が無いようですね。思ったより期間が長かったので心配しましたよ。さぁ、家に入りなさい。」


「あとで皆でこい、飯くらい作ってやる。」


 お風呂で数日間の汚れを落として、自室で寝て起きた時には流士兄が言った様に皆が集まって食事をしていた。


「お腹が空いただろ、まずスープから飲め。」


 ゴトウカウ乳と野菜のスープを出してくれて、カボチャ風味なそれをゆっくり飲む。胃の中に何も入れてなかった訳ではないけど、優しい味に胃が喜んでいる気がする。今日はほんの少しだけ食べて、再び自室にもどり休んだ。


 翌朝起きて下に降りると、床でビルさん、ロイさん、流士兄が、ハナダさんは器用にイスに座って寝ている光景が広がっていた。


「おや、起きたのかい?」


 後ろからメリダさんがやってきて話を聞かせてくれた。遅くまで酒盛りになって、ローナは途中で客室に案内されたけどメリダさん達はそのまま酔いつぶれたらしい。


「話は聞いたよ、よく頑張ったね。規模のでかそうな盗賊団のように感じるねぇ、面倒なことになりそうだ……。さてと、起こすかね。」


 そういってメリダさんはおもむろに鞭を出しふるい始めた。


「起きな。」


「いたたた、もう少し優しく起こしてくれないか。」


「うぅ、変な夢をみたわ。」


「……。」


 ご愁傷様です。


 私はその場の離れて、ローナを起こしに行き再び下に降りたときはいつも通りだった。


「これは何だい?初めて食べるな。」


 ベーコンとソーセージを食べたビルさんが興味津々で作り方などを聞いている。そしていつのまにか、材料持ち込みで兄に作ってもらう契約を交わしていた。


「それじゃぁ、後で迎えにくるわ。」


ロイさんがそう言って、着替えに帰って行った。


読んでいただきありがとうございました。

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