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 酒祭りが終わってから2ヶ月が経った頃、ロイさんから依頼が舞い込んだ。


「そろそろ近場の依頼も飽きてきた頃じゃないかしら? ちょうど良い依頼が首都から入ってきたのよ。」


「わざわざフランに依頼するって珍しいね。首都の冒険者に頼まないわけ?」


 首都からの依頼である所に、ローナが反応する。


「役所に依頼が来たんだけど、本当は魔法士ギルドからの依頼でね。依頼場所がファイウェンの先の村だから、近場にいる魔法士も一緒に行って欲しいって話だったのよ。」


『僕、嫌なんだけど。』


 魔法士ギルドと聞いてホウが、ものすごく嫌な気分と共に思念をよこした。


「ガイツさんは?」


「ガイツさんは、ちょうど別の護衛依頼で旅に出ちゃっているのよ。ちょっと特殊な用だから、早めに動く必要があるのよね〜。だから、今回はミイコちゃんにどうかと思って。」


 どうやら選択肢が無いようだ、なんとかホウに分かってもらって依頼を受ける事にした。


 内容は、数十年ぶりに新しい農業系の魔法士が出たので、その調査になる。おそらく、私の願ったヤノハナの栽培をまかされた人なんだろう。


 早速目的地である、プフラン穀倉地帯へ向かうことになった。ファイウェンまでの護衛の依頼がないかと探したが、専属で冒険者がついているのが普通のためか残念ながら依頼はなかった。

 今回は魔法士ギルドから必要経費も持ってくれるため宿の心配も無いし、道々で魔獣を狩りながら向かう事になった。


「俺も混ぜてもらっちゃっていいのかな?」


「同行者全員のを持ってくれる約束だからいいんじゃないかしら。それにしても魔法士ギルドは太っ腹ね〜。役所なんて自腹よじ・ば・ら!」


「俺に言われても困るよ。俺だって、サオリさんから聞いた親方に『行かせてあげますから、わかってますよね。魔法士は便利でいいですねぇ。』って言われて、ファイウェンへの納品と仕入れだよ。親方は人使い荒いんだよ。」


 ファイウェンを経由するので、お使いも兼ねてセイランが臨時でパーティーに入っている。


 ロイさんは、どうやら首都からフランへ向かう護衛依頼は自腹だったらしい。正式な依頼だったんだけど、申し訳ない気分になるなぁ。カレンさんにも今度お菓子を差し入れに行こうかな。


「っていうか、誰もつっこまないから言うけどさ。あんたなんでアマネに乗って一人楽してんの?」


 そうなのだ、セイランはフランを出て数時間でアマネに乗って移動している。前回は警戒の為乗っているのだと思っていたけど……違うっぽいな。


「セイランは繊細で体力がないの!私が良しとしているのだから問題ないのよ。」


 アマネの言葉に貢ぐ女の姿を見た。なんだろう、アマネに優しくしてあげたくなるよ。


『僕だって、ミィを乗せたいよ。』


 ホウがアマネに対抗して思念を飛ばしてきたけど、お断りさせてもらった。ドラゴンの背に乗って空を飛ぶのは憧れるけど、今することじゃ無いのは分かっているからね。


 ファイウェンまでは祝福の影響がまだ残っている事もあって、魔獣には数えるほどしか遭うことが無かった。ここで一旦セイランと別れて、帰りに再び合流する事になっている。私たちは、一泊してファイウェンから北へと歩を進めることになる。


 北上して3日目、一面の麦畑が見えてきた。どうやらプフラン穀倉地帯に入ったようである。


「これが、酒とミッソラの原料なのかぁ。」


「米とまた違った感じなのだな。」


 ローナとハナダさんがそれぞれ感想を言っている。ヴァンサにはやはり米があるのか、海が解放されるのが楽しみだな。キラーアントがやはり異常に多かったのだろう、Lv9になって2ヶ月経つがまだ上がらないのである。


 なんとか作業している人を見つけて村の位置を聞く、どうやら歩いて1時間くらい先にあるそうだ。


 村に着いて、さっそく村長宅へ向かい話をする。村長に案内されて例の魔法士の元へ向かう。村の家々はフランの他の町と違って木と草葺きの屋根で出来ている。これも穀倉地帯ならではという事だろうか。


「クラウスいるかい? フランからお客さんがみえとる。」


「村長さん、うちの人は夕方まで帰ってきませんよ。そちらさんたちは?」


「奥方ですか? 突然お伺いして申し訳ありません。わたくし共は、魔法ギルドから依頼を受けまして、魔法士になられた方に会いに参りました。」


 村長の呼びかけにクラウスさんの奥さんが出てきた、赤毛に筋肉質な典型的なドワーフの女性である。ロイさんの言葉に、室内へ案内しながら答える。


「それは遠くから大変ですね。うちの旦那と息子が魔法士になったんですよ。帰ってくるまで家でくつろいでくださいな。うちも突然の事でびっくりですよ。」


 リビングに案内されて、お茶をいただきながら旦那さんが帰ってくるのを待つ、麦の産地だけあって麦茶が出てきた。これってどこかで売ってるのかな、聞いて買って帰ろう。


「おっかあ、ただいまもんたよ。」


「あんた、フランからお客さんだよ。魔法士になったあんたとクライオに会いに来てくれたんだと。」


「お待たせして、すまなんだ。わしと息子のクライオが、ありがたくも精霊の恩恵をいただくことになったんですわ。」


 現れたのは、筋骨隆々の体に、短くカットした髭を口まわりにはやした、頭髪の無い男性だった。その隣には、ローナより少し上くらいの赤毛の少年がいる。


「私はフランの役所につとめているロイと申します。こちらは魔法士のミイコです。突然お伺いして申し訳ありません。」


 ロイさんとクラウスさんとで話が進められて行く。どうやら農業ギルドでは、ゴウトカウの記録を残しているようで、それを魔法士になった物に教えているそうだ。通常のドラゴンと違って魔獣の魂を糧にするのでなく、精霊に与えられた使命(ゴウトカウなら乳)を与えることが成長に必要らしい。


「まだ使命を与えられて期間が経ってないので、これから開墾して種まきなんですわ。みなさん腕利きの冒険者と見受けられるんで、開墾を助けてもらえんだろうか。」


 どうやら開墾する予定の土地は、魔獣が多い土地のようで中々進まないそうなのだ。乗り掛かった船なので、手伝う事にした。村には宿が無いので、村長宅に宿泊することになった。


 翌朝、日が昇る前に起き朝食を食べてクラウスさんの家へ向かう。余談だが朝食は麦飯が出た。固くてもそもそしていたけど、ご飯に飢えていたので嬉しかった。にまにましながら食べていたようで、ローナに大丈夫かと心配された……。


 クラウスさんに案内された先は、膝上くらいまで草に覆われた草原で主に地上にレインボウキャタピラー、地下にワームがいるため厄介なんだそうだ。

 あの草の上にチラチラみえる緑色のがそうなんだろうか……結構な数いるんですけど。

 

 レインボウキャタピラーは1メートルくらいの芋虫でワームも1メートルくらいのミミズでした。


「うぎゃっ、うぅ気持ち悪いよ。」


 レインボウキャタピラーもワームもローナには相性の悪い魔獣のようだ、早速目についたレインボウキャタピラーに鎚を振り下ろしたところ、つぶれた拍子に出た体液を被ったようである。害は無いことは確認済みだけど、あれは私も嫌だ。


『風よ数多の刃となりて舞え、風刃ふうじん


 レベルが上がった事で、9個の刃が出せる様になった。あと少しで両指分出せそうだ。


 ローナに数匹おびき寄せてもらって、スイッチして風刃でレインボウキャタピラーを輪切りにしていく。切れたあとはなるべく見ない様にしながら次へと向かう。ローナの顔色は青くなっていたが、気力で戦っている。


 ロイさんは盾を器用に扱いながら、体液を浴びない様に切り刻んでいた。ハナダさんは慣れているようで、的確に急所をついているようだ。


 クラウスさんから、終了の言葉が出たのは昼の鐘が聞こえる頃だった。草も刈りながらなので、思った以上に疲れた。


「いやぁ、冒険者さんが入ると早いね。昼からもお願いしますわ。」


 その言葉に、ローナはダウンしていた。ロイさんは渋い顔をしていたが、昼はローナを休ませて3人で頑張る事になった。



読んでいただきありがとうございました。

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