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大分前からヴァンサとヴィントが反対になっておりました。
双子の出身がヴァンサ大陸で、テレスティナがヴィント大陸になります。
自分の情けなさに反省してます……。
今回は内容を分けると中途半端なので1回にまとめました。
手元の服を見ながらため息をつく。大振りの襟に、お腹の周りのコルセット、細かい花の刺繍とフリフリのいっぱい入ったスカート……全体的に白い。雅姉さんに何度も着せられた日本のゴスロリを思い出した。ーーーーあれはピンクだったけど。
スカートは動き難いから、苦手なんだよな。突然襲われたらどうするんだろう、取り回しが聞かないじゃないか。
そんな事を思いながら、なんとか着替えた。手櫛で乱れた髪を整えて待ち合わせ場所に向かう。
「「かわいい〜(わ)」」
サオリさんと、ロイさんが揃って声をあげる。ロイさん、声が裏返ってるよ…。そして、その手に持っているピンクの薔薇はなんでしょうか。
「ミイコちゃん、こっちのベンチに座ってもらえる?ーーーーまさか、くし持ってないとか無いわよね。」
「そ、そんなことあるかもしれません。」
髪はまとめれば良いから、くしは買わなかったんだよな。
「はぁ……くせがあるんだから、ちゃんと髪をとかないと絡まるわよ。今日はくしも買わないとね。」
話しながらもロイさんの手は休み無く動いている。サイドを編んでいる様だ、そして頭が少し重くなった。
「うん、いいわね。」
「あれ?ローナは。」
やっと頭を動かせる様になった私が、ローナを探して見回す。
「あっちの建物の陰にいるわよ。まったく…。」
ロイさんによって引きずり出されたローナは、すっきりしたデザインのワンピースを着ていた。髪は、サイドを編み込んでアップした涼しげな髪型になっている。私よりも、恥ずかしい格好じゃないじゃないか…。しかも、スタイルの良さも極まって、道をゆく男性の目を集めている。
そして、私はさっきから道往くお年寄りからお菓子を貰っていたりする。
「足がスースーするし、皆が見てるし…似合わないんだろ?」
真実を言ってあげるのは腹が立ったので、にっこり微笑んで移動を促した。
早速、服屋に連れてかれて色々と選ばれていく。私とローナはマネキンの様に、洋服をあてられるままになっていた。
そして、何着か試着する様に持たされる。サオリさんとロイさんは私たちにそうした後、店員さんを連れ立って奥へと向かう。
服屋が終わると雑貨屋に連れて行かれて、クシや手持ちの鏡を買う事になった。そこでも、サオリさんとロイさんは店員さんと連れ立って奥へ行く。
やっと、ランチをするため食事処へ行く事になった。私とローナは、買い物に付き合わされている彼氏の様になっている。
そして、食事処ではテレスティナさん、ロイドさん、双子が待って居た。
「すまないな、今日は今後のパーティーについて話そうと思って集まってもらったんだ。」
「初耳ですが…。」
「ロイが会うと言ってたので、頼んだんだが?」
ロイさんを見つめると、悪びれなく「買い物次いでなんだから一緒でしょ。」と言った。
注文をすませたのを見計らってロイドさんが、話を始める。
「ヴィント大陸への渡航が可能になったのは、みんな知ってるな。テレスティナが望むなら快く送り出したいと思っている。みんなはどうだ?」
皆を見渡すと、私と同じ様に了承の意を表している。ーーーロイドさんの言葉にどこか引っかかりを感じるんだけど、どこだろう。
「わたしは〜、帰りたいと思っているわ。だけど……。」
そういって、ロイドさんを見つめる。その視線を受けたロイドさんが、爆弾発言をする。
「俺は、テレスティナについてヴィント大陸に行く事に決めた。このパーティーのリーダーである俺が申し訳ないが、テレスティナとお腹の子供だけでは旅をさせられん。」
うぐっゴホッゴホッ
ブーーーー!!
私は、口に入れたお肉を喉に詰めかけて、ローナは果実ジュースを吹き出した。
「兄貴っ、なんだそれ。いつそんなことに?」
「うん?まぁ、それはだなぁお前ら問題児の話をしている間にだな。」
もじもじ、しているロイドさんは気持ち悪かった。それにしても、テレスティナさんの体調不良は赤ちゃんが居たからなのか。
「移動は大丈夫なんですか?」
「いまなら〜、大丈夫ってお医者様が言ってたの。お腹が大きくなったらダメみたい。ヴィント大陸のほうが、治療魔法や医療技術が発展してるから〜帰れるならそちらの方が安心なのよぉ。」
そうなんだ、ますますヴィント大陸が気になる。このままパーティーで行っちゃえばいいんじゃ。
「このまま、みんなでヴィント大陸に行けばいいじゃないか。」
「ダメだ。ハナダやセイランもここから動けないんだ、行ってもパーティが維持できないだろう。しかも、ここならロイもいるから俺の抜けた穴は防ぐ事が出来る。それについては、ロイもわかってくれている。」
「私の仕事は、祝福についての魔獣分布についての調査だから問題なしよ。兄さんは心置きなく行ってちょうだい。」
ローナの言葉に、ロイドさんとロイさんが答える。テレスティナさんだけでなくハナダさんも抜けるとキツいもんな。ここならセイランって魔法士も居るし。
ロイドさんの言葉に私は納得したが、ローナはまだ割り切れないようだった。
「ローナちゃん、いつかはロイドさんがパーティーから離れる事は分かっていたでしょう?少し早まっただけじゃない。テレスティナさんと赤ちゃんの為とはいえ、ローナちゃんが成長してなきゃ思い切れなかったと思うわよ。快く送り出してあげたら?」
サオリさんがローナに、優しく諭す。ローナは泣きながら…。
「兄貴、手が早いんだよ。テレスティナさんの親父に殴られろ。今度会うときは、強くなってるからにゃ」
肝心なところで、かんだ。
「ローナはなんか感じなところで微妙ね。それで、2人の出発をお祝いする場をもうけようと思うの。明後日なら出発の2日前だからテレスティナさんも負担が無いでしょう?どうかしら。」
「ありがとう〜。ロイさんにはお世話になりっぱなしねぇ。気づいてもらえなきゃ私じゃ赤ちゃんに気づかなかったわぁ。」
「何から何まですまないな。」
へぇ、ロイさんが気づいたんだ。なんか、色々と女子力高いな。
「ローナのときの母と一緒だったのよ。それじゃぁ、打ち合わせするからお兄さん達以外はギルドに移動よ!」
ご飯を食べて移動する事になったが、道中セイランが鬱陶しくて何度かロイさんに助けて貰った。
「それじゃ、兄さんとテレスティナさんの送別会と銘打った結びの儀の相談をするわよ。」
私は手を挙げて、質問する。
「結びの儀ってなんですか?」
「子供の出来たカップルへのお祝いの儀式よ。生まれてくる子供に色々送るの、本当はもっとお腹が大きくなってからやるのよ。」
ベビーシャワーの様なもんかな、私は何をあげようかな。
「私とロイさんで、パーティー用にテレスティナさんの服と、プレゼントの赤ちゃんの洋服と玩具を用意したから、別の物がいいわね。」
「じゃぁ、俺はアクセサリーにしようかな。」
『ミィ、セイランに僕からもプレゼントをあげたいから宝石を付ける様に言ってもらって良い?』
ホウから、セイランへの言伝があったので伝えた。どうやら、アマネも同じ事を言っている様だ。セイランが無言でうなずいている。
「私は、料理用の魚を釣ってこよう。時間がないのでこれで失礼していいか?」
そういって、ハナダは席を外した。魚の釣れる川は少し遠いからね……。
「サオリさん、毛糸の売っているお店ある?」
「毛糸は確か、服屋で売っているわよ。」
ローナは考え付かないのか、うなっている。
場所はすでにレッドベアで予約してあるそうで、あとは当日の飾り付けなどや買い出しの割り振りをして解散した。
私は服屋で必要な物を買って、部屋に戻って作り始める。こちらの世界にも同じ物があってよかった。
当日は、朝から花屋へ菓子屋へと大忙しなうえ、ハナダさんがなかなか帰ってこなくてやきもきしたりしながら、予定通り昼の鐘から行う事ができた。
「テレスティナさんとロイドさんのヴィント大陸への出発と新たな命の健やかな成長を祝って乾杯!!」
サオリさんが音頭をとって、結びの儀が始まった。ドラゴン達が出てくるというので場所をあける。
ホウとクレオとアマネが出て来て一気にレッドベアが狭く感じる。
「僕からは炎の加護をーーー」
「愛しき子へ風の加護をーーー」
「私からは水の加護をーーー」
各々が人に分かる言葉の後に、祭祀の時に聞いた不思議な音を出すと、赤、緑、青の光が現れてセイランが作ったブローチの宝石の一つ一つに宿っていく。
それを、セイランが綺麗な箱に入れてテレスティナさんに渡した。
「おめでとうございます。俺もミイコちゃんと結びの儀をしますから、そのときは会いにいきますよ。(パコーン)」
そんな予定は微塵もないので、ハリセンで叩いておいた。ホウもガジガジとセイランの頭をかじっている。アマネもあまりの馬鹿さ加減に、いつもの嫌みを言ってこない。
「そこの変態はほっておいて、先に進みましょうか。私とサオリさんからは服とおもちゃよ。甥っ子か姪っ子かわからないけど、すぐに会えないのは残念だわ。」
「テレスティナさんの子供だったら可愛いこと間違いなしなのに〜〜、成長を愛でれないなんて!!」
ロイさんはセイランを冷たい目で一瞥して、テレスティナさんにプレゼントを渡す。サオリさんはすごい事言ってるな。次は私だ。
「私からは赤ちゃんの帽子と靴下とおくるみを、無事に産まれる事をここから祈ってます。」
私の唯一の女の子らしい特技の編み物で作った物にした。編み物って指先と集中力の鍛錬に良かったんだよな。
「私からは、ヴァンサ大陸で子供にあげる物を差し上げたい。」
箱に入っているので中身は分からないが、なんだろう。
「わたしからは、お古で悪いけどお気に入りのぬいぐるみなんだ。貰ってくれるとうれしい。」
ローナは、フォレストボアのぬいぐるみをテレスティナさんに渡した。
「みんな、ありがとう〜。3大陸のドラゴン達に祝ってもらえるなんて幸せな子ねぇ。プレゼント見てもいいかしらぁ。」
セイランのブローチはクレオを象った金属製のブローチに宝石が3つ付いている。珊瑚とルビーっぽいのと、アメジストっぽいものがそれぞれ加護を受けて輝いている。
ロイさんとサオリさんのは、ガラガラと木製の亀のお散歩おもちゃとレースがふんだんに使われているベビードレスだった。
ハナダさんのは、ハマグリの内側に絵が描かれている物で、ひな飾りで見た事がある様な物だった。ヴァンサ大陸は建物といい日本と似ている様だ。
「ミイコちゃん、こんな事も出来たのね。これは売れるくらいの出来じゃない。これが普段にも生かされたらね……。」
ロイさんの言葉にサオリさんもうんうん頷いている。ひどいなぁ、今日は先日来ていたゴスロリを着てるじゃないか。
そうして夜も更けていき、あっという間に出発の日になった。
テレスティナさんとロイドさんは幸せそうな顔で手を振りながら、馬車でヴェント大陸へと向かった。
そしてその側に、迷子になりそうな事を心配して声をかけたミシェルさんも同乗していた。
次に会うときは2人の子供に会えるのだろうか。ヴェントへ行くのが色々と楽しみになる、早く行けるよう準備しなきゃいけないな。
熱と口内炎のWパンチで、昨日は朦朧としてました。まだ舌にできた口内炎で首から上の右半分が痛い。
読んでいただきましてありがとうございました。




