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 ミラータートルの甲羅は、鋼色でナイフくらいでは傷もつかない頑丈な物だった。なんとか甲羅だけ剥がすと、その軽さにびっくりする。これなら、女性の全身鎧でも大丈夫そうだった。


「軽くていいなぁ、私もこれで作ってもらおうかな…。」


 私のつぶやきを聞いてロイドさんが教えてくれたのだが、私のガントレットやグリーブもミラータートル製らしい。魔法の伝達が良い素材なので、魔法士用はこれで作られていると聞いて、無知が恥ずかしくなった。確かに金属では考えられない軽さではあったんだよな……。自分の身体能力が上がったせいだと思ってた。


 ハナダさんが今回も沢山の魚を釣ってきたので、それを焼きながら今日の話を聞いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ロイドさんはミイコ達と別れた後、ミラータートルが近場にある場所へ移動しようとしていた。それをハナダが引き止めたのだ。


「ここでいい。」


 そう言って槍から釣竿を取り出し、おもむろに釣りを始める。魚を2匹釣って針と糸を変え、再び魚を1匹つけて竿をふる。


「何をしているんだ?」


 ロイドの話に答えず、真剣な顔で釣りを続けるハナダ。しなった竿を何度か引いたり戻したりして、突然思い切り引きあげる。


 糸の先にはミラータートルが居るのを見て、ロイドは目をこすった。ハナダは飛んできたミラータートルの首に槍をさして地面に転がす。慌てて、ロイドはミラータートルの首を落とす。

 そして針を抜いて、再び同じことをくりかえした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「いやぁ、あんな方法初めて見たよ。あの竿何で出来ているんだ?」


「ヒヒイロカネだそうだ、家宝だが本当かどうかは知らない。」


「俺は、仕込み竿の槍を希少なヒヒイロカネで作ったご先祖様か、相当な重量の亀が飛んできたことのどちらに、つっこめばいいのか分からないよ。」


 ロイドさんの言葉に激しく同意する。ローナ以外は同じ様にうなずいていた。


「ヒヒイロカネってなに?」


 そしてローナの言葉に皆でため息をこぼすのだった。


「すまないが、ここはどこだろうか。」


 話が一段落ついたころ、昼間ローナを助けた青年が声をかけて来た。


「あっ、昼間はどうもありがとう、んと…ございました。ここは、昼間助けてくれた所から東へ3分くらいのところ。」


 ローナは丁寧な言葉遣いが慣れないのか、変な話方になっている。


「そうなのか、フランを目指していたのだが湖を一周しただけか。」


 話を聞くと、自分の祖父母に会いにフランへ向かう為ヴィント大陸から出て来たはいいが、未だに辿り着けていないそうだ。漫画や小説ではすごい方向音痴の話は出てくるけど、見たのは初めてだ……。湖一周で済んでよかったね、それでも対岸が見えないから数十キロありそうだけど。


「えっとぉ、この大陸が渡れなくなってもう10年くらいになるのよ〜。私たちは明日フランに戻るから一緒に行きましょ。」


 そんなになるんだ、さすがに皆も青年を一人にしておくとフランに辿り着けないと思ったのか異論は唱えなかった。


「すまない。私はミシェルという。見ての通り魔法剣士だ。」


 ミシェルさんは、中性的で性別がわからない。声もどっちともとれるんだよ、しかも胸は鎧で分からない。どっちですかって会ったばかりで聞くのは失礼だよなぁ。

 ローナはすっかり目がミシェルさんに釘付けだ、乙女なところもあったんだなと思って横をみると、ハナダさんが無表情の中に焦りのようなものを出していた。本気だったんですか……。



 ミシェルさんを加えて、ハナダさんの魚を食べた。ミシェルさんはおそらく1年ぶりくらいにまともな食事を食べたとか言っていたが。野営食でまともとか、何を食べてたのか怖くて聞けないな。


 その日は、交代で見張りをしながら休んだ。


 朝方の当番だった私は、ピーゲル湖が朝日によって輝いている光景を見る事が出来た。朝もやの中、光が反射する光景は幻想的なんだけどスライムとミラータートルなんだよなぁ。見る分には綺麗でいいんだけど。


 帰りは行きと同様、特に変わった事は無かった。ただ、テレスティナさんが体調が悪いみたいで、休憩を挟む機会が多かったのが心配だ。


 フランに着いて、ロドウェルさんのところへ行く前に役所に行く事になった。10年もたっているので、ミシェルさんの祖父母が居るか確かめる為である。

 私たちが着いて行くのはミシェルさんが目を離すとすぐ迷子になろうとするからである。


「あっカレンさん、お久しぶりです。フランは慣れました?」


「本当だ、カレンだ。元気ー?」


「皆さま、お久しぶりです。えぇ、毎日忙しくてゆっくりできないのが残念ですよ。」


 ロイさんと一緒に来たカレンさんが、カウンターに居た。


 カレンさんに、事の詳細を話して調べてもらう。どうやら、変わらずに住んでいるようでローナが案内して行く事になった。


「テレスティナさんとミシェルさんは、ヴィント大陸の出身ですよね。ヴィント大陸と行き来できる事が確認できましたので、ご希望の方には乗り合い馬車でお送りすることになりました。1便目は1週間後の予定ですがいかがいたしますか?」


「私は少し考えるわ…。」


「私も、祖父母に会ってから決める事にする。」


「わかりました。こちらで受付致しますので、乗られる場合は数日中にお願いします。」


 どうやら、情報が入って来た様だ。時間が掛かったのは検証していたからだろうか。テレスティナさんが即答しないのは、私たちを思ってのような気がした。


「ロイド、ミイコちゃんと2人でロドウェルさんのところへ行ってくれないかしら〜。ごめんなさいね…やっぱり体調が悪いわぁ。」


 テレスティナさんは青白い顔をしていた。ロイドさんが送って行きたそうだったが、ロイさんがそれを止める。


「ロイド兄さん、私が付き添うから大丈夫よ。ローナとミイコちゃんは初めてなんだから付いていてあげなさいよ。」


 テレスティナさんが持っていたミラータートルを受け取って、ロドウェルさんの所へ向かった。ローナはミシェルさんを送ってから合流する。

 

 ロイさんが付いているなら大丈夫だろうけど、テレスティナさんどうしたんだろう。



「よしよし、甲羅を手に入れたみたいだな、よくがんばった。仕上がりは、お嬢ちゃんたちのは5日間くらいでできるだろう。楽しみにしときな。」


 ロドウェルさんは私の頭をポンポンして、そう言った。その瞬間にローナが現れて、腹を抱えていたーーーー後で覚えてろよ。


「おう、ローナもよくがんばったな。この前までおしめしてたと思ったら早いもんだ。ローナのは1週間はかかるぞ。兄ちゃんがしっかり作ってやるからな。」


 ローナはロドウェルさんに、よしよしされながら顔を真っ赤にしていた。今度は私が爆笑してたから、さっきのはおあいこにしとくよ。


 ロドウェルさんのところを辞して宿に戻り、その日はぐっすり寝た。


 翌日も朝からギルドに行って訓練してたんだけど、サオリさんとロイさんが深刻な顔で話し合っていた。


 サオリさんは私に気づいて声をかける。


「ミイコちゃん、今日はずっと訓練場だったの?明日は私に付き合って買い物しましょ。そろそろ服も傷んできたんじゃない。明日はあの服来てきてね。」


「……ふりふりのやつですか?」


 そう言われてみれば、思った以上にすり切れてきたかもしれない。買いに行くのはいいんだけど、前にいったときに紛れて買わされていた、ワンピースは着るのに勇気がいる。どう見てもゴシックロリータなんだよな。


「そうよ。似合うんだから着てね。」


「あら、どんな服なの?ーーふんふんーーーそれは可愛いわね。私も明日一緒にいこうかしら。ローナも連れてくるわ。この2人は女の子っていうのを忘れているんだから。」


 ロイさんとサオリさんで盛り上がっている。ロイさんが、日本のテレビに出てたオネエ系スタイリストに見えてきたよ。


 しぶしぶ了承して、明日は4人でショッピングに決まった。

読んでいただきありがとうございます。


ヴァンサ→ヴィント

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