15
2日程でフランへ向かう護衛の仕事が見つかった。あれから、魔法士ギルドは何も言ってはこない。ホウの杞憂であればいいんだけど。
とにかく明日ヴィーダを出発するので、ローナ達と雑貨屋へ必要なものを買いに行く事になった。
「ヴィーダクッキー……。」
「こっちにはヴィーダ謹製、ゴウトカウ飴とかあるよ。サオリさんに買ってく?」
「あっうん、そうしよっか。赤熊亭にも買って行くかな。」
雑貨屋には携帯食だけでなく、土産がおいてある。ハイスには無かったんだけど、あっちのほうが有っておかしくないんだけどなぁ。
冒険者に雑貨屋が必要なのは確かなんだけど、商業ギルドでもらった硬貨を思い出してもやもやする。赤熊亭には、収納があるのでチチズと言う名のチーズにした。(収納に劣化が無いのはグラウンドディアで確認済み。)
次の日、依頼者と待ち合わせをしている門へと向かった。ホウもこの町から離れるという事が決まったので、少し気分が上がって来てるようだ。
門の手前に止まっている馬車の側に、男女の2人組が居る。男性の方は眼鏡をかけて赤毛をローナのように三つ編みにしている、どこか既視感を覚える風貌だ。女性の方は肩までのストレートの赤毛で男性より身長が高い。2人とも動きやすい旅装束を着ている。
「げっ」
ローナがいきなり振り返り、来た道に引き返そうとしている。そこをロイドさんによって阻止された。
「大人げないぞ、久しぶりの再会じゃないか。」
門に辿り着いたところで、男性の方が声をかけてきた。
「ローナちゃん、あいかわらずのようね。」
「ロイ兄貴に言われたくないよ。その喋り方どうにかなんないか?」
私も思わず笑ってしまいそうになって、今も顔に力をいれて我慢している。ロイドさんより端正な顔立ちだけど、それでも似ているからロイドさんの顔がちらついて……。駄目だ逃げたい。
「ミイコちゃん、我慢できてないぞ。大丈夫だ慣れてる。」
「ロイド兄さん、事実ですけど私にひどいわよ。ローナちゃんの雑な言葉遣いをなおせるよう頑張ったのに、どうしてこうなっちゃったのかしら。」
そうかローナの為か、残念としか言いようがないね。
「これで、いいんだよ。わたしの性にあわないし。」
まぁ、夏・海・水着って感じの健康的な美少女だもんね。今の方がしっくり来る気がするよ。
「えっとぉ、紹介してもらってもいいかしら?」
「テレスティナさん、すまない。こいつは俺の弟のロイだ。女性の方は…。」
「カレンと申します。この度のフランの祝福で町が人手不足という事ですので、フラン出身のロイと共に役所の助っ人に向かう事になりました。お世話になります。」
「そうなのよ、兄さん達もフランが拠点でしょ。よろしくね。」
「えぇ〜! ロイ兄貴戻ってくるのかよ。ミイコのとこに転がりこむかな。」
ローナは本当に嫌そうに言っている。私は苦笑で返すことしかできない。
「こんなところで話していると、今日宿泊する予定の村につけないぞ。忘れ物がなければ出発する、つもる話は道中でしたらいい。」
ロイドさんが出発を促す。2人と馬車を真ん中にして、ロイドさん・ローナは前方、私は馬車の横、ハナダさん・テレスティナさんは後方を守りながら進む。
私の索敵能力はカードには載らないが、レベルが上がる度に鋭くなってきている。現在は、倒した種類の魔獣は判別できるし、500m周囲まで分かる。自分でも人間離れしてきた気がするなぁ。
今日は、途中の村で1泊して明日にはもう一つの玄関口のヴェルメンに着く予定だ。ヴィーダからフランへは、ヴェルメンを経由するのが一番早いそうだ。フランへ行く人が多い為か、魔獣が出てこない。
「今回も散歩ねぇ〜。ところで、ローナちゃんはお兄さんが沢山いるのかしら?」
今は、昼の休憩中である。男性陣が料理の準備をして女性陣が話に花を咲かせている。……まぁ、そういう日もあるね。
私は、最近はロイドさんに褒められるくらいには成長しました。
「5人もいる。ロイド兄貴は3番目でロイ兄貴は5番目。」
テレスティナさんがローナに聞いていたが、多いと感じるのは私だけかな。
「ドワーフ族は子供が多いのかしらぁ?エルフ族だと、兄弟が居る事自体が珍しいのよね〜。」
「たしか役所の調べでは各家庭3人でも多い方だと思います。」
テレスティナさんの疑問にカレンさんが真面目に答えている。どこの世界でも少子化なのだろうか。
(実際は寿命が長いので、異母や異父の兄弟はたくさん居るため人数の減少がないのだが、ミイコは知らない。)
休憩を済ませて、再び移動する。今日は魔獣にすら会う事無く宿泊する村に着いた。そして、こんな調子で次の日にはヴェルメンに着くのだった。
ヴェルメンはヴィーダへの玄関口という特色以外は何も無い町だった。1泊だけしてヒッツへと向かう。
ヴェルメンを出て1週間がたった。野営の場所は森と森の境になっている様な場所で、開けているため他にも馬車が止まって休んでいる。
ん?人の気配がするのだが、行動がおかしい。両側の森から囲むように移動してきている。
「ロイドさん、様子が変です。あと10分ほどで40名くらいに周りを囲まれそうです。」
私の話を聞いたロイドさんが、その場に止まっている馬車に声をかける。馬車によっては、笑って話を聞いてくれない。仕方なくロイドさんがその場について、代わりにハナダさんが、集まってくれた方の指揮を取る事になった。
「魔法士の方々は馬車の保護をお願いします。ミイコ、得物は何を持っているか分かるか?」
「う〜ん。もう少しすれば弓が居るかどうか分りますけど…。両方の森から20名ずつで挟むように来てます。」
「わかった。とりあえず、半数に別れて対峙しよう。」
森の端までやって来た気配のうち5名ずつが殺気を放っている。
「弓が居ます。5名ずつです。まもなく矢が飛んできます。」
「盾持ちは構え、矢だ!!」
声が終わるかどうかで矢が飛んでくる。
『炎盾』
私の前に1メートルほどの炎の盾が現れる。飛んで来た矢が瞬時に燃える。火属性は相性がいいため詠唱破棄が出来るので、こういう時は役に立つ。
『風よ数多の刃となりて舞え、風刃』
投擲ナイフの要領で左右の手に3枚ずつ出せるようになった。命中力は1枚より劣るが、ひるますのには十分だ。
「お前は、あの時の……。おい、こいつは変な魔法をつかうぞ。集中的に叩け!!」
前回、襲われた時の生き残りが居たのか。自分の弱さが招いたこととはいえ厄介だ。
『炎纏』
余裕がないので、迷わずに顔を狙っていく。ちっ弓が飛んで来て肩に刺さりそうになる。
「うっ。」
横を見ると、ロイさんがいた。
「気にしないで倒してちょうだい。」
『水よ集まりて我が爪となれ、水刃』
いま気にしていては危ないので、足に集中して魔法を出す。足先に水で出来た爪が出来た。蹴りで刃を腹部に埋め止めを刺して行く。『炎纏』で周囲の牽制を行いながら、次々と倒して行く。
テレスティナさんの言った通り、前程の変な冷静さが無い。平気なわけではないが……これは慣れないほうが良いと思うし。
他の馬車に護衛でついていた冒険者もいたので、そう長くない間に盗賊達を殲滅できた。
私は傷をおったロイさんの側に向かう。
「先ほどはありがとうございました。肩を見せて下さい。治療します。」
ロイさんによって既に矢は抜かれて、布で止血をしようとしていたが、赤い血で布が真っ赤に染まりきっている。いい状態とは思えなかった。
深呼吸して、魔法を行使する。
『促進』
詠唱は、思いつかなかったのでイメージだけで行使する。まだ威力が弱いので時間がかかるが、少しずつ傷が塞がって行く。
「ミイコちゃん、治癒が使えるの?これは大分前に失われたものだと聞いた事があるわ。」
「祝福の時の祭祀で手に入れました。」
「良い魔法をいただいたわね。そのおかげで私は助かったようね……。」
やはり、良くなかった様だ…。ロイさんの青白かった顔が血色を帯びてきた。他にもけが人が居ないか確かめたが、皆そこまでの傷のものはいなかった。
ロイドさんを探すが見当たらない。奥に人だかりがあるので胸騒ぎがして向かうと、テレスティナさんに止血されているロイドさんが居た。
「大丈夫ですか?治療します。」
「よかったわ、お願い。」
テレスティナさんが焦っている。ロイドさんは背中に刃を受けていた、どうやら移動しなかった馬車の商人をかばったらしい。
『促進』
ロイドさんの治療を終えたところで、めまいが起きた。他の属性と違って、何かが減るのかもしれない。気をつけないと……。
「ミイコちゃん!!」
そう思いながら、私は気を失った様だ。
読んでいただきありがとうございました。
チーズの名前を付け足しました。
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