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今日は忙しくて、少し短め。

 首都ヴィーダへはハイキングのような気軽さで、厄介な魔獣に遭う事も無く到着した。


 ヴィーダは、山の斜面に沿って石造りの建物が建っている。ひな壇のように、一番上に大きな建物が1棟あり、次の段にはその建物の半分くらいの大きさの建物が5棟並んでいる。更にその下には住宅地があり、町に近い側は商業地となっているようだ。


 今回の納品先は、商業ギルドになる。ギルドはその町の各商店への卸しの役目もあるそうだ。

 門で納品先である商業ギルドへの行き方を聞くと、どうやら2段目の5棟並んでいる建物の向かって左から2番目で、ついでに聞いた魔法士ギルドは右端の建物らしい。

 門から真っ直ぐ登り坂になっている道を歩いて行く、ギルドがある場所は門から続く道を挟んで左側へ3棟、右側へ2棟並んでいる。特に特徴的なのは、左側の建物の前が運動場サイズの広場になっている所だ。そこでは、荷の上げ下げをしている馬車が所狭しと並んでいた。

 3棟並んだ中央の建物に私たちは入って行く。納入と書かれたカウンターへ向かうと、奥の倉庫へと案内される。


「いやぁ、ここ1ヶ月納入が遅れてたんですよ。ハイスから運んで頂いて助かりました。ハイスからの木札をお預かりします。面倒ですが、こちらを持って冒険者ギルドで報酬を貰ってください。」


 そう言って、別の木札を渡される。ロイドさんが受け取ったのだが、それと共に2枚硬貨も渡されたようだ。


「あとこれは、商業ギルドからのお礼です。これを見せると宿と食事処と雑貨屋が安くなりますよ。毎月変わるので、来月のもお渡ししますね。町を出る時は、そのまま記念にお持ちになってください。」


 首都へ来るついでで受けた依頼なのに得した。でも、安くなると聞いたらお財布の紐がゆるくなるよな……。さすが商業ギルドかもしれない。



 冒険者ギルドに寄って報酬を貰い、道々で狩ったグラウンドディアなどを買い取ってもらった。

 ハナダさんが釣った虹色の魚の、買い取り価格の高額さには驚いた。どのくらいかというと、虹色の魚1匹が高級食材であるグランドディアの子供2頭分でした。ハナダさんは私たちは何も手伝っていないのに魚の買い取り分も、防具の足しにしてくれと人数の均等割りをしてくれた。

 いい人だ…お礼にローナが寝てる時、耳元でハナダさんの名前をささやいとくよ!!


 

 おすすめの宿屋をギルドに教えてもらったので、ロイドさん達には先に行ってもらって、私だけ魔法士ギルドに行く事になった。


「ようこそ、魔法士ギルドへ」


 豊かな白髭をたくわえ、見事な意匠の赤いローブを身に纏った男性がただ一人その場に居た。

 

「こ…こんにちわ。」


「お嬢さん、名前を伺ってもよろしいかな? 私は魔法ギルドの長でゼーゲンと言う。」


「ミイコと言います。ハイスで魔法ギルドに行ったほうが良いと聞いたのできました。」


 2人以外誰も居ないホールに声が響く。ゼーゲンの無表情な顔に、幽霊が現れたかとびびってしまった。


「わざわざ、ありがとう。それでは確認したいので、ドラゴンに出てもらっても宜しいかな。」


 ゼーゲンの言葉を受けて、ホウを呼び出す。ホウをみて、ゼーゲンがひざまつく。


「これは……、赤き根源の君。久しゅうございます。」


「あまり嬉しくない再開だね。記憶があることを否定はしないけど、積極的に思い出してないんだ。もう何度生まれて何度会ったのかさえ覚えてないよ。」


 どちらかというと人当たりの良いホウが冷たい声を出していることにも驚いたが、毎回生まれ直してるんだ……。


「今世は良き主にて重畳ではございませんかな。私は長く生きただけの老人でございます。何も致しませんよ。」


「しらじらしい気がするね。君たちは僕のミィを辛い目に遭わせそうで嫌なんだ。」


「前の主ならともかく、今の貴方様や大陸の現状を見て私は喜んでおりますよ。貴方様を悲しませることなど、私たちに出来る訳がないのです。」


(僕の為でも、君たちがしたことは赦せないんだ。)


 ホウとゼーゲンの会話に加われない私は、ギルド内を観察していた。だから、私はホウがつぶやいた言葉を聞き逃した。


「ミィ、みんなの元に戻ろう。ここは嫌な気持ちになる。」


「あっ、うん。行こうか。」


「ミイコ殿、何かあれば協力は惜しみませんよ。いつでもお越し下さい。」


 ゼーゲンは、ホウの態度に気にも止める事なく私に声をかけた。だが、答えるよりも早くホウが外へ出てしまう。私は慌てて追いかけるのだった。


「ホウ……。」


 はっきり言ってものすごく気になるけど、聞いていいものか悩む。


「今は何も聞かないで。ミィにはこの世界を楽しんでもらいたいから、あんな奴らに煩わされるのは嫌なんだ。」


 いや、気になって余計楽しめないんだけどって言ったら駄目かな。でも、ホウが辛そうだから、聞かない事にした。



 ホウが手の中に戻ったので、宿屋へと向かう。前の主の時に、何かあったのだろうか……。最初の頃は大陸が消えていってたらしいし……。


 考えながら進んでいると、あっという間に宿に辿り着いた。夕飯を食べながら気もそぞろになる私に、皆が心配そうな顔を向けていたが、私はそれすらも気づいていなかったようだ。


「ミイコちゃん、何かあったのかしら? お姉さんが相談にのるわよ〜。」


 テレスティナさんに話しかけられて顔を上げると、皆が私を見つめていた。


「あっ、ごめんなさい。魔法士ギルドが個性的で疲れて……。職員が、ギルド長だけなんて初めてですよ。」


「確かに変わってるわねぇ。ヴィントの魔法士ギルドは特に変わったところは無いわよ〜。大陸によって違うのかしら。」


「ヴルカは魔法士が少ないらしいから、人手不足はあるかもな。旅の疲れもあるんだろうし、しっかり寝るんだぞ。」


 ロイドさんは、お母さんみたいだな。料理上手だし、面倒見いいし。たしかに疲れてるかも、こんな事考えてる事態おかしいよな。


 

 翌朝も気分が優れなかったので、気分転換に町を観光する事にした。せっかく食事処も割引がきくので、首都で人気の菓子屋に女子で行く事になった。


「ふふふ、ヴルカは菓子が豊富で嬉しいわぁ。」


「酒を飲めない人が、自らの為に菓子を作り出したって聞いた事あるよ。ドワーフの酒好きは病的だから、飲めない人にとっては酒に代わるものが欲しかったのかもな。」


 そんな歴史があったなんて…。そのおかげで今、美味しいお菓子が食べれているのか。首都の人気店には、ヒッツで聞いたゴウトカウの乳で作った生クリームのショートケーキがあった。私はこれぞケーキってイメージなんだよな。久しぶりのショートケーキを堪能して気分があがった。


 そして、フランへの依頼が見つかり次第帰るという事になった。ホウの為にもあまり滞在はしたくない。早くフランへの依頼が見つかるといいのだけれど。


 あの日から、ホウは呼びかけても反応が薄いので心配だ。早く、フランに戻りたくなった。最初にあそこへ召喚されてよかったかもしれない。首都に現れていたらどうなっていたのだろうか……。ゼーゲンの表情の薄い顔を思い出して、悪寒が走った。

ほのぼのが…。


ブルカになっていた…。ヴルカです。似ていて気づかなかった。

ヴァンサ→ヴィント

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