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遅くなりました。
ハイスは首都への玄関口というだけでなく、大陸で一番古い温泉地でもある。町には硫黄臭が漂っていて、流れる小川からは湯気があがっている。私は活火山なのかとホウに聞いてみたが、この世界では山からマグマは出てこないらしい。不思議すぎる……。
ハイスに辿り着いた私たちは、商人と別れて宿へ向かう。首都への玄関口と言う割に人が少ないと思ったら、フラウの祝福の影響で人が少なくなっているらしい。どうやら首都からの流れが主にフラウへ向かっているそうだ。いつもなら、温泉を楽しむために訪れる人も多いと商人が言っていた。
「う〜ん、久しぶりに体が休まるなぁ。ここの温泉はいいぞ。みんなも初めてだろ? 最低2日は休むか。フラウへ帰るのに、首都経由にするかどうかは後で決めるか……とりあえず宿取って温泉行こう!」
ロイドさんを見ていると、この世界でも温泉はテンションの上がる物なんだと思った。気持ちいいもんなぁ〜。
宿泊する宿にも温泉があるようだが、町の各所にもあるという事なので、女子3人で連れ立って回ることにした。
町の温泉フリーパス券なるものがありました。もちろん購入しましたよ。
「おっ、ここは露天風呂だって。あっちは、温泉の温度を変えてある風呂を何種類も揃えてるって。どこから行こうか。」
「ふふ、ローナちゃん楽しそうね。私はお酒が飲めないのは残念なのよね〜。」
どうやらドワーフ達はお酒を飲む量が多いせいか、昔はよく風呂の中で昏倒する人がでたそうで、そのため今は温泉の中でのお酒は禁止になっている。
私たちは、露天風呂から行く事にした。
「ふわぁ、生き返る〜。」
「気持ちいいよなぁ〜兄貴の言う通り温泉っていいな。」
お風呂は石を組んで出来たものだった、大きさは12畳くらいだろうか。たまたま人が居なくて3人で貸し切り状態である。
「やっぱり〜2人はお肌がピチピチしてるわよねぇ。若いっていいわね〜。」
テレスティナさんがそう言っているが、年齢は怖くて聞けない……。鬼教官再びになりそうで。
「テレスティナさんだって、胸が大きいのに重力に負けてないってのがすごいですよ。どうなってるんですか……。」
「ふふふ、秘密よ。」
がたっ、ガラガラン
ん? 壁の向こうから、桶を落とす音が聞こえる。ーーーーなんだろう。
「ローナもいいよな〜。筋肉質なのに、出るとこは出て締まるところは締まってるとか羨ましすぎる。」
「はは、ミイコは色々とかんばれ。」
バッシャ〜ン、ゴトッ
次は、人が落ちた様な盛大な水音と何かにぶつかった音が聞こえる。もしかして…隣は男湯だったか?
気になったので、テレスティナさんとローナに少し涼んでから次に向かうから先に行く様に言って、素早く建物の陰に入り出入り口を確かめる。
顔の赤いロイドさんと、頭に傷が出来ているハナダさんが出て来た。私は2人に気づかれない様に、次のお風呂へと向かう事にした。
その日はお風呂を堪能した後、みんなで食事をして休んだ。終始、ロイドさんとハナダさんの目が泳いでいたのはしょうがないよね。意図して風呂に入っていたんだったら、お仕置きだけど…たぶんこの2人は違うだろう。ーーーー2人は私を見て震えた。そんなに殺気出てたかな?
次の日は、冒険者ギルドにカードの更新に向かった。レベルアップしてるんだよな。どうなってるかな。
ヨシザキ ミイコ
18歳 女
ヒューマン
出身地不明
武闘魔法士 Lv6
火Lv2 刃 纏 盾(100%)
水Lv1 刃 纏 (40%)
風Lv1 刃 纏 (20%)
土Lv1 刃 (20%)
光 治癒 「促進」
投擲Lv14
身体強化Lv6
収納魔法Lv2
どうやら、大陸に色々な影響が出てくるのはレベル2ごとらしい。やっと土の『刃』を覚えたんだよな。火の属性は『盾』を覚えたけど、これって『纏』と被らないか?付与と防御だから違うのか……。効果的に使う為にもしっかり考えないとね。温泉に心惹かれるけど、ギルドの訓練場を借りて早速練習する事にした。
「ミイコさん、首都へ行かれますか?」
ギルドの職員に呼び止められる。
「いえ、まだ決まって無いです。」
「それでしたら、首都で魔法ギルドに登録されて行く事をお勧めします。期限は決まってないのですが、魔法士は必ず魔法ギルドへ一度は登録に向かう必要があるんですよ。フラウを拠点にされているようですから、首都へはそう行かないでしょ。この機会に行かれてはいかがですか。」
「ありがとうございます。相談します。」
とりあえず、練習してからロイドさんに相談する事にした。もう訓練場を借りたので時間がもったいない。
練習を終えて宿に戻ると、夕食をみんなで取る事に決まったので、そこでロイドさんに話す。
「ロイドさん、今日ギルドに行ったら、首都の魔法士ギルドへ行くよう話があったんですが。」
「ーーーあっそうか、忘れてた。サオリさんにも頼まれてたよ。明日、首都へ行く依頼が無いか調べとくよ。」
忘れてたんだ…。収納に入れてあるハリセンを机下からローナに渡した。
訓練して温泉を繰り返す事5日目、ロイドさんが首都へ向かう依頼があったとのことで、明日から移動する事になった。今回は魔法士である私たちの収納の魔法で割れ物を運ぶ仕事らしい。
グランドディアの子供は首都で売った方が高いってことで、入ったままなんだけど容量大丈夫かな。
翌日、依頼主である工房へ向かった。
「いやぁ、よかったよ。今は魔法士がフランへ行っちまうから、納品できなくて困ってたんだ。これが納品の木札で、その箱達を頼む。中身はガラスだから出し入れに気をつけてくれよ。」
ヴルカ大陸は武器・ガラス・陶器が特産品だそうで、ガラスや陶器の食器も日常的に用いられている。テレスティナさんが『他の大陸では高級品なのよ〜』と言っていたのにビックリした程だ。
箱に手をかざして収納してから、ギルドカードをみると箱となっている。中身が出ない? なぜだろう。
「テレスティナさん、前にお金を入れたときは硬貨ごとに分かれたんですけど、何故これは大丈夫なんですか?」
「あら…。そういえば、普通のことすぎて言い忘れてたわねぇ。ミイコちゃんにこれをあげるわ〜。ヴィントの特産品なのよ、収納魔法で中身が分かれない様になっている袋なの。この箱もそうみたいね。付与術らしいんだけど、魔法士が出来る事ではないから原理が解らないのよね〜。」
そんな便利なものがあったなんて、早くテレスティナさんに聞いておけばよかった。部屋の隅に移動して、お金を袋にまとめる。これで3つも枠が空いて助かる。
門で、ロイドさんとハナダさんと合流して、一路、首都ヴィーダへ向かう。ヴィーダは、この大陸で一番大きい山の中腹にある町で、ハイスはその麓にあたる。私は、眼前にそびえる山をみつめてゲンナリした。
「この辺りは、魔獣が少ないわね〜。散歩してるみたいだわぁ。」
ハイスを出て2日目、今は山の3合目ってところだろうか、小鳥程度の魔獣が居るだけなので無理に相手にせずに歩を進めている。
「ヴィーダ・ハイス間は、人通りが多いから討伐隊が定期的に出ているそうだ。どうりで護衛依頼がないと思ったよ。」
テレスティナさんの言葉にロイドさんが答える。
途中で、カルツのあった川の上流を渡ったのだが、ハナダさんがどうしてもと言うので早めの昼食にした。そのまま川岸に行き釣り糸を垂らすと、嘘の様に魚が釣れていく。それは虹色で良い香りがして、しかも食べると体の疲れがとれる不思議な魚だった。(後ほどヴィーダで幻の魚と分かるが、あまりにも簡単に釣れていたので、私たちはレア感を感じる事ができず、複雑な気持ちになる。)
4合目にある山小屋で、今日は休むことになった。私は夕食後ひとり外に出ると、星が近くに感じるほど広がっていた。月もひとつで、まるで地球で山に登っているだけのように感じる。こちらへ来て、もう3ヶ月というか…まだ3ヶ月というか…地球で感じる事の出来ない、内容の濃い日々に私は楽しくなってきている。明日は大陸の首都か、どんなところか楽しみだな。
ちょっとお色気回??
読んでいただきありがとうございました。
グランドディアの所に「子供」を足しました。
フラン→フラウ
ヴァンサ→ヴィント




