12
日曜日は書く暇がないので更新しました。
「うわぁ〜〜」
船の上からカルツの町並みが見える。ヴルカ大陸の建物は山が多いからか、石を切り出して作った平屋造りが多い。しかし、カルツは従来通りの建物だけではなくロッジや瓦屋根の和風建築が、絶妙に配置されている。
「壮観だろ。カルツは昔から物流の交わる場所なんだ。木で作られた建物はヴィントの、もうひとつの変わった建物はヴァンサの伝統建築だそうだ。」
ロイドさんが説明してくれた。
「なつかしいわねぇ〜。こっちに来て何年にもなるけど、みんな元気かしら……。」
テレスティナさんは故郷を思い出したようで、微笑んでいたが目に郷愁を浮かべていた。同じ様にハナダさんも、カルツを見つめている。
船を降りて町中を歩くと、ところどころ店が閉まっているのに気づく。どうやら海が渡れなくなって久しいため、ヴィントやヴァンサからやってきた商会は店をたたむはめになった様だ。
ハイスへ向かう船は明日の朝になるので、今日はカルツに宿をとって泊まることになった。今日は、それぞれ自由に過ごす。
私とローナは早速、町を観光することにした。宿を出る時にハナダさんに会ったのだが、川に釣りに行ってくると竿を持って出かけて行った。しかも、竿は槍の中に仕込みで入れてあるそうで、相当な釣り好きらしい。
「ハナダさんって、何考えてるのか分かんないだよな。話をしてるとさ〜、たまに目を逸らされたりするんだよ。」
「そうなんだ。(それさ……きっとあれだよ。恋愛っぽいやつじゃないかな。)」
心の中で、ローナに突っ込みつつ店をまわる。建物を見ているだけでも楽しい。ヴァンサの着物を売っている店もあった、ヴァンサの商会で生き残っている数少ない店らしい、古着を買い取ったり、同じ様にこの大陸に残された人達の着物を直したりして続けているそうだ。
それにしても、いつ海が渡れる様になるんだろうか……。レベルが上がれば何時か来るんだろうけど、こういうのを見るともどかしくなってくる。
夜はハナダさんが釣って来た魚を、宿屋の料理人がアクアパッツァ風にして出してくれた。肉続きだったので、口が魚に飢えていた気がする。他にも、魚にレモン風の輪切りをのせた蒸し料理も出て来た。魚も美味しかったが、蒸した際に出たスープも胃に優しい味で気持ちがほっこりした。
翌朝、ハイス方面への船に乗り込みカルツを後にする。海が渡れる様になった後、もう一度来たい場所になった。
対岸の町であるメルツェンで再び1泊してからハイスへ歩を進めることになった。あと半月程でハイスへ到着することになる。
河を越したことにより、出てくる魔獣が変わって来た。グラウンドディアは同じ鹿だが、こちらは灰色の毛皮で体の大きさがフォレストディアの2倍近くある。基本群れないので、黄のランクでも2人いれば狩れるそうだ。ハナダさんとロイドさんで倒してしまうので私たちは出番がなかったが…。
メルツェンを出て1週間経った頃、総力を挙げて仕留めるほどの魔獣に出会った。アングリーベアといって、固い毛皮に守られた火に耐性のある魔獣で鋭い爪を武器にする。しかも立ち上がると3メートルくらいありそうだ。
私は隙を見て、麻痺毒を塗ったナイフを目に投げてみるが、動きは多少鈍る程度で効果がなさそうだった。逆に激高させてしまい、悪手になってしまった。
『水矢』
テレスティナさんが、アングリーベアの腹部を狙って矢を放つ。多少だが効果がある様だ。私も水属性の魔法で、戦うことにした。
『水纏』
アングリーベアの背後にまわり、水の鞭を首に向かって伸ばして窒息を狙ってみる。抵抗が強すぎて効果がないので、両手を拘束して動きを押さえる方法をとることにした。身体強化をかけてあるが、なかなかしんどい。
その隙に、ロイドさん、ローナ、ハイドさんの前衛陣が攻撃を与えていく。テレスティナさんも『水矢』で攻撃を行っている。数の暴力にアングリーベアも力尽きた。
アングリーベアの毛皮はとても良い防具になるということで、ロイドさんが私とローナの為にハイスで売らず、フラウへ持ち帰ることを提案した。皆が了承してくれたので、ありがたく防具にさせてもらう事にした。もちろん私が収納するんだけどね。
「はぁ、とんでもないのがいるんだな。」
ローナが疲れたのか、その場に座る。
「私のナイフで激高させてしまって……一歩間違えると全滅の危機でした。」
私の言葉にロイドさんが申し訳なさそうに話す。
「説明が足りなくて悪かったね。アングリーベアは名前の通り、攻撃すると激高するんだよ。逆に麻痺毒が効いたおかげで動きが鈍くなって助かったくらいだ。」
ちょっとロイドさんの頭をハリセンで叩きたくなった。悪手を打ったと悩んだ私はなんだったんだろう。こういう所はローナと兄妹だと思う。
ハナダさんは私をなだめるように、私の頭をなでながら話す。
「ミイコはよくやったと思う。魔法でのフォローがなければ、私たちはもっと消耗していただろう。アングリーベアに出会って無傷というのはそれだけですごい事だ。聞いた話では黄ランクのパーティーが、命からがら逃げたが半数死んだらしい。」
『セイランと違って、ハナダは良いこと言うね。ミィお疲れさま。』
そんな怖い魔獣だったのか……。ホウはどうでもいいことを言っている、どっと疲れた。
今日は安全な場所を探して、早めに野営をすることになった。
その後の旅は、アングリーベアに遭うこともなく、おなじみのハードボアなどを狩りながら、ハイスまで後数日というところまでやってきた。
歩いていると、グラウンドディアの気配がした。1頭だけでなく小さい気配も1頭する。
「ロイドさん、グラウンドディアが少し行った先に居ます。子供づれっぽいですが、どうします?」
「おっ、グラウンドディアの子供は高級食材だぞ。高く売れるから、ハイスに持ち込むか。」
高級食材なのか…。ちょっと今日の夕飯に食べれたりは、ーーーーーしないですよね。
親のグランドディアはロイドさんとハナダさんが受け持ち、子供はローナと私で仕留めることになった。
『水纏』
皮を焦がさない様に、水属性を使う事にした。足を引っかけて、転倒させる。ローナに素早く押さえてもらって、麻痺毒を塗っていないナイフで喉を切る。
ホウが、子鹿の魂を食べた瞬間、久々の声が聞こえた。
『汝に問おう。ヴィントとヴァンサ、どちらの海を解放せん。』
カルツでヴァンサのお店が頑張っているので助けてあげたいが、それでも私はテレスティナさんの郷愁の目が気になる。
自分勝手かもしれないが、個人的な理由で決める事にした。
『ヴィントでお願いします。』
ヴィントのある方角が光ったような気がする。一瞬だったので誰も気づかなかった様だ。フラウへ帰った頃には、海が渡れる様になった情報が届くのだろうか。
ホウが外に出て来て、私に寄り添った。
「僕はミィの選択を支持するよ。」
私が罪悪感を感じていることを、ホウも感じ取った様だ。
「ミイコ、ホウも出て来てどうしたんだ?」
ローナが不思議に思ったみたいで、話しかけて来た。
「グラウンドディアを入れる為に、容量を空けてもらったんだよ。」
とっさにごまかしたが、ローナは不自然さに気づかなかった様だ。
「あっ、ミィに言い忘れてたけど。収納の枠が5つ増えてるよ。」
レベルアップの恩恵がこんなところに。私は、グランドディアを仕舞った。そして、ホウも中に入ってもらって移動する。
ハイスに着いたら、ギルドに行かないとな。そんな事を考えながらハイスへと向かう道を歩く。
やっと海が渡れる様に…。
解放されたのはーーーヴァンサ→ヴィントです。こっから間違えてた。




