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今回は少し下品な表現がでます。
ハナダさんを加えての初の依頼は、ハイスへ向かう商会の護衛になった。ハイスは首都ヴィーダへの玄関口のひとつだそうだ。片道2ヶ月かかる道のりになる。
一昨日、ギルドで打ち合わせをした際にロイドさんから話があった。
「ローナとミイコちゃんに心構えしておいて欲しい事がある。ここ最近、各地で盗賊が出ているそうだ。少人数の場合は近くの村に引き渡しをするが、盗賊団にあった場合は躊躇無く命を奪え。手加減をしていると自らの命が危ないからな。」
前回の護衛は魔獣が多かったため、盗賊に遭う事がなかった。フランほどの大きな町に住んでいると盗賊に襲われる事もないそうで、ローナも私と同じ様に初めての経験になる。私はいざという時の為に一計を案じることにした。
出発当日は旅にふさわしい気持ちの良い天気だ。赤熊亭の皆とビルさんに見送られ、集合場所へ向かう。
今の私は前回の護衛の時と装備が変わっている。まず、ブーツを魔法を通り易く加工したグリーブにした。これで靴にも魔法を出す事が出来る様になって、手数が増える事になる。
そして、投擲ナイフを手に馴染むサイズにオーダーしたので、腰ベルトに沿う様に左右に2本ずつと右足に3本付いている。
「おっ来たな。こいつらが黄のランクになります。問題がなければ出発しますか。」
ロイドさんによって、今回の護衛相手である商人に紹介される。フランで作られる良質な武器類を仕入れて帰るそうだ。ファイウェンへ向かう護衛でもそうだったが、商人達は徒歩で馬に荷馬車を引かせ行商している。私たちは1台の馬車を前後で挟む様にしながら歩を進めて行く。
フランを出てから3日は魔獣どころか物取りも出なかった。森の側を通る際に何度か人の気配を感じたが、護衛の居る馬車を襲えるほどの人数ではないから出てこないのだろうとのことだった。
今日は久しぶりに村の宿屋で休む事ができる。夕食時にロイドさんが村で仕入れた話では、この先で小規模の商会の馬車が教われているそうだ。しっかり休みをとって明日からに備える事にした。
それが起こったのは、この森を抜けると祝福の影響が届かなくなるだろうという話を、森の入り口の休憩場所で休みながら話をしている時だった。
「ロイドさん、斥候と思われる二人が森の際までやってきて、再び森の奥へと向かって行きました。」
「ミイコちゃんありがとう。おそらく例の盗賊だろう、気を引き締めていくぞ。ミイコちゃんは斥候役を頼む。旅の前にも話したが、躊躇するなよ。」
森の半分を進んだ頃、囲む様に進んでくる十数人の気配を感じる。
「ロイドさん、来ました。」
「テレスティナさん、馬車を頼む。ハナダと俺は前方、ローナとミイコちゃんは後方を陣取ってくれ。」
「わかったわ。姿が見えたら広範囲に『風刃』を放つからぁ。巻き込まれない様にね〜。」
「承知した。」
「了解。」
「わかりました。」
それぞれ、位置について現れるのを待つ。
「おぉ、今回は女が多いな。子供は好き者に売るか…。エルフがいるじゃねぇか、ラッキーだな。」
他のものより身なりのいい男が、下卑た笑いを浮かべながらくだらないことを言っていた。おそらくこいつが頭なのだろう。
『風刃』
テレスティナさんがさっそく先手を打つ。それによって、一気にその場は混乱し始めた。
「魔法士がいるじゃねぇか。くそっ、誰か早くそのエルフを抑えろ!」
男の言葉に、数人が手が薄いと感じた私たちの居る後方へ向かってくる。
『炎纏』
ガントレットに蛇が巻き付くような感じで炎が現れる。この『纏』は武器に属性を付与する魔法らしい。私のは、蛇が巻き付くイメージにしたためか、鞭の様に巻き付いた炎が動く。
炎を自在に操りながら足を引っかけて転がしたり、目を焼いたりしながら、投擲のナイフで傷をつけて行く。
「きゃっ」
ローナの普段聞かない声が聞こえた。振り向くと、地面に倒れて盗賊に乗りかかられているところだった。
私は慌てて、炎を伸ばし相手の目を焼く、視界を奪われた男は痛さと驚きで手にした武器を取り落とし自らの目を抑える。私はみぞおちを蹴り上げ、ローナから離してナイフで沈める。
「殺したの?」
ローナが震える声で私に問いかける。
「死んでないよ。このナイフに1日は動けなくなる麻痺毒が塗ってある。魔獣に襲われない限りは生きてるだろうね。」
私は、この時の為に薬屋で強力な麻痺毒を購入しナイフに塗り込んだ。少しでも心の負担を減すことが出来るかもしれないと思ったからだ。実際は、冷静な自分がいてびっくりしている。
ローナの頬をたたいて正気に戻すと、盗賊の足を狙う様に言った。その後、私がナイフで麻痺させていく。
私たちが後方に向かって来た盗賊達を全員昏倒させた頃、ロイドさんとハナダさん達は頭と残りもう一人を相手にしていた。どうやら、残りの2人は少なくとも他より腕に覚えがある様だ。
ハナダさんが用いているのは日本では鎌槍と呼ばれている種類のものだ。柄の中程を持ち、相手の刃を鎌の部分で弾いたあと石突きでみぞおちを攻撃した、出来た隙を利用して的確に止めを刺す。
ハナダさんの戦闘を見ている間にロイドさんも倒し終えていた。腕に覚えがあったとしても二人には及ばなかった様だ。
「少し強行軍になるが、森を抜けた先にある町まで休憩を持たずに向かう。」
ロイドさんはそう言って歩き始める。その後は、フォレストウルフの2頭づれや、ラビットマウスに遭った程度で少し日が暮れたころ町に辿り着いた。この町はもうひとつの玄関口であるヴェルメンへ向かう中継地になるため、大きめの町である。
「この町の冒険者ギルドに先ほどの盗賊の話をしてくる。先に宿屋に行ってくれ。」
ロイドさんの言葉に従って、宿で部屋をとり、湯の入った桶で汚れを落とす。
「ミイコ、今日の怖くなかったのか?」
ローナにそう聞かれて、思い出す。先ほどまでは緊張で忘れていたが、落ち着いたせいか少し手が震えている。
「怖いよ。今になって手が震えている。焼いた肉のにおいも夢に出るかもね。」
「ふたりとも今日はよくやったわ。誰でも通る道よぉ。気持ちを吐き出して明日に備えなさい。おそらく2日程この町で休むと思うわ。」
テレスティナさんにそう言われたので、ローナと話をして休む。さすがに食欲は出なかった。
翌朝、ロイドさんに会うと、テレスティナさんが言った通り2日間はヒッツで滞在するそうだ。ローナと連れ立って、この町で評判の菓子屋に向かうことにした。未だに食欲の無い私たちを心配してロイドさんが宿の人に聞いてくれたらしい。
「これ美味しそう……。なんだろう。(チーズケーキに似ているな)」
「これは、ゴウトカウという魔獣を家畜として飼育に成功した人が居ましてね。その人が卸している乳を加工したケーキなんです。」
牛なのかヤギなのか分からない魔獣だな……。私はそのケーキと、紅茶の様なお茶であるポラール茶を飲む。味はとても濃厚なチーズケーキだった。
「ローナ落ち着いた? 私は何度も夜起きたよ。」
「わたしも同じく。男にのしかかられた感触を思い出してさ……。」
お互いすぐには元通りという訳にはいかなかった様だ。今日は辛くてもしっかりご飯を食べて体を慣らさないと、この先が続かなくなる。テレスティナさんも、『この旅が終わる頃には落ち着くわよ〜。』と言ってた。
あっという間に休みが終わり、再びハイスに向けて出発する。体の調子もこの町に来たときより良くなった。
その後の旅は、いつも通りの魔獣が襲ってくる、至って普通の道のりだった。ホウも私が本調子でないのが分かるのか、休憩中に外に出て私に寄り添ってくれる。
ひと月と少し立った頃、シュメルに着いた。シュメルは、ハイスの手前にある大河を渡るために出来た町である。
「対岸が見えない……。」
「はは、この大陸で一番大きい河だからな。しかも、中州でハイス方面行きに乗り換えるんだぞ。中州も町として栄えているんだ。」
ロイドさんが説明してくれた。今日はシュメルで休んで、朝一の船でカルツ(中州の町)に向かい1泊してから、ハイス方面へ渡るそうだ。
船は馬車を乗せるだけあって、大変大きな物だった。ヴィント大陸の魔法士が風を使って船の補助をしているそうだ。男性の魔法士もいるらしいが、今回は女性の魔法士だった。そして、改めてみたエルフの女性は、ーーーーーテレスティナさんと一緒でした。うぅ、もげろ。
こういう話は難しいです。あくまで想像ですから。
町の名前が途中で変わってたので修正しました。もうひとつの玄関口の名前がかぶっていたので修正




