2:守護神
さっきから、俺の足は竦んでいた。 何故なら、俺の目の前には一人の人間と、奇妙な物体が交戦しているのだから。
???:
「チャージ!!」
いきなり人間の方が叫び、手に持っている棒みたいな物を天高く上げた。 しばらくすると、その棒にバチバチというけたたましい音と共に、青白い屈折光が集まってきた。
???:
「フハハ…そんな攻撃、無駄だと言ったはずだ!! マッドシールド!!」
麻間の心の声:
「しゃ、しゃべりやがった!? あの奇妙な物体!!」
(ゴゴゴゴゴッ!!)
奇妙な物体が叫ぶと、そいつの目の前に地面から泥が上へ上へと上がっていき、やがて集まって大きな泥壁になった。
???
「ボルテックシューティング!!」
(ジバババババッ!!)
あの棒に集まった青白い屈折光が、瞬く間に相手の方向へ差していった。 しかし、その攻撃はアイツの泥壁に遮られてしまった。
その時、一瞬だけ太陽光が二つの間に差した。 そして、俺はようやく…あの奇妙な物体の詳細を知る事が出来た。
麻間の心の声:
「な…何なんだ、あの怪獣?」
体は黄土色で、四つん這いになっている。 更に、とても長い舌を出して口の周りを舐め回している。 動物で表すなら、カメレオンと大トカゲが合体した奴…。
???:
「マッドサラマンダー!! 何故、現実世界まで現れたのよ!?」
どうやら対立しているのは、女とマッドサラマンダーとか言う怪物らしい。
マッドサラマンダー:
「フッ…。 ドゥームディザスター様がどうしても、テメェが所持してる“アレ”を欲しがっているようでね。」
麻間の心の声:
「ドゥーム…ディザスター?」
???:
「ふざけないで!! あなた達にあげる訳にはいかないわ!!」
マッドサラマンダー:
「ふざけてなんかいねぇよ。 貴様みたいな小娘が持てる代物じゃねぇんだよ…フォーチュンクリスタルはよ!!」
???:
「絶対に…絶対に渡してたまるもんか!! アクアブリザード!!」
女がそう叫ぶと、マッドサラマンダーの上に、大きくて厚い、どす黒い雲が現れ、針千本のように容赦なくマッドサラマンダーに降り注いだ。
マッドサラマンダー:
「だから、無駄だと言っただろ!! アイアンウォール!!」
マッドサラマンダーが叫ぶと、今度は鉄の壁が出てきて女の攻撃を防いだ。
???:
「くっ!!」
マッドサラマンダー:
「フハハハッ!! 無駄な攻撃ばっかしやがって。 だが、俺は防御だけが専門じゃねぇんだよ!!」
???:
「っ?!」
マッドサラマンダー:
「死ねぇー、小娘!! マッドカウンター!!」
マッドサラマンダーの体が赤く染まり、女に超高速で突進していった。
???
「っ?! ぷ、プリズムガードっ!!」
麻間:
「あっ、危ないっ!!」
俺は大声で叫んだが…間に合わなかった。
俺の目の前で女はマッドサラマンダーに追突されて吹き飛び、高架橋の支柱にぶつかり中に食い込んだ。 その時、女の頭に被さっていたフードが外れ、顔が見えた。
その顔を見て瞬間、俺はフリーズした。
麻間:
「…いっ…委員長?!」
その女は紛れもなく、いつも俺を疎ましく思っているクラスの委員長…条王院 菜々佳だったのだ。