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MISSIONE 2‐3 記憶の復元


右手には輝く欠片。

遠く離れた場所にいる彼に近づくには、どうすればいいのだろうか。

安易に近づいて拒絶されれば、俺達の意識は無事で済まないかもしれない。

答えの出ない疑問が次々に浮上して不安を募らせる。


「サキチ、おいでよ!何してるの~~?」

ピナの声が近くではないことに気付き、目を向けた。

どうやって……

ピナはリズミカルに跳ねながら、彼の間近で手を振る。

この不安定な足場も気にせず、突き進むのは勇気なのか無謀なのか。

カッとなって、生じる熱が自分を突き動かす。

さっきの事などどうでもいい。何かあったら、どうする?

秘成……俺は、この想いが伝わらないとしても……笑っていて欲しい。

それは変わらない願いなんだ。


そう、ここはマウントされた夢の中……感覚なんてあってないようなもの。

……感覚…………?

夢は見る人によって異なる。

そうだ、ある人の夢の中で食べ物の美味しそうな匂いを嗅いだこともあった。

俺に触れたナルの柔らかい唇。ピナの柔らかい手掌が俺の口を擦る痛み……これは夢だよな?

未だにシステムが理解できない。

頭は難しい事で一杯になり、先ほどの不安など消えて足早に歩き続けた。


彼は妨害などすることも無く、階層の真ん中なのに、年齢は深層心理の表れなのか同年代の背格好。

「久しぶりだね。サキチ君……君の本当の名前を今ここで聞いても……この夢の中では現実と異なるのかな。」

笑顔で、ここが夢なのだと理解している。

生じた寒気。嫌な予感。

「あなたの夢をマウントし、潜入しました。俺達は迎えに来たんです。今、あなたが理解しているように夢の中。あの日から起きないままで……」

「うん。俺は起きる事を願わない……だから、彼女にあげたんだ。いや……利用したのかな。彼女の目的も、俺にはどうでも良い事。自分から捨てたんだよ。」

捨てた?

それなら、この大きな『アトラクタの箱』の中身は、誰にも触れられたくない隠したい事……

ピースは手元に一つ。

共鳴する鍵など、見つける時間は残されていない。

考えろ、とにかく突破口を探すんだ!

「俺の名前は雅世まさせ 佐起知さきち。約束でしたよね、名前を教えて下さい。」

ナルは安易に琴線に触れた。

「……鳳城ほうじょう 祥智よしとも。オオトリは、そこからだよ。何らかの意図があったかは知らない。サキチ君……君が持っているのは母の記憶だ。」

母親……?

「どうして、不思議そうな顔をするの?」

ドウシテ?

ハハオヤ……お母さん……俺の記憶は…………


「止めて!今は、関係ないでしょ?……考えないで!」

俺と鳳城さんとの間にピナが割って入り、俺の手を引いて必死で訴える。

「……ピナ、もう後戻りはできない。そうか、消されたんだ……記憶にも残らないものは思い出せない。……君が恐れている事。」

俺はピナを避け、俺達の会話を傍聴している鳳城さんの前に近づいた。

「見てもいいですか?影に覆われた……この記憶を。」

光に透かすと、記憶を見せる欠片。

それは何かの影が覆っているようで、闇ではない。

光と影……心を照らすような幸せを人は味わい、それを失った時の悲しみは闇のように包む。

切っても切り離せない……それは表裏一体。


自分の後ろにいるピナは、どんな表情をしているのだろうか。

ごめんな、俺は……以前を知らないんだ。

「見るって、どうするの?」

『アトラクタの箱』の中身は隠したい事のはずなのに、鳳城さんは焦らない。

もしかすると、心の奥深くに隠しているうちに、忘れてしまったのかもしれない。

「俺はピース・ プレイヤー。倫理を侵し、記憶を覗いたり改変したりすることが出来る。それが復元に繋がるのであれば、俺は……実行する。」

記憶の欠片を両手で持ち、胸の位置に留める。

目を閉じて、その記憶の告げる言葉に耳を傾けながら意識を集中。

「見えるのは、優しそうで綺麗な女性。その近くに居るのは、小学生の鳳城さんだね。あなたは覚えているかな。この記憶は隠したいことかもしれないけれど、それほどまでに心を占める大切な思い出でもある。」

彼の記憶からは、懐かしいような温かさが風になって流れてくる。

泣きそうになるような心を揺らす香りを運んで、それは忌まわしさなど感じない。

俺には無い……

幼い頃に亡くなったと聞いた。

記憶に残らないような時期だったのか?

違う……それならピナは、この記憶に過剰な反応を示さなかっただろう。


突如、男性の声。

『鳳城の家に入るなら、母親の事は忘れろ!』

その言葉と同時、欠片は一瞬で闇に包まれ……切ない声が響く。

「『もう、二度と……お母さんから愛情を受けることはないんだ。』」

重なるのは、記憶の欠片から聴こえる幼い声と、目の前に居る鳳城さんの声だった。

胸を刺すような小さな痛みが生じるのに、共感できない複雑な心。


記憶の欠片は“彼ら”の言葉に反応し、鍵への具現化を始めた。

特定の記憶を思い出させる脳の高次領域から同時に加わるトップダウン信号が具現化され、開ける鍵となる。

『アトラクタの箱』を開いたのは一つの欠片と、共鳴を促すのに不可欠な記憶。

“きっかけ”となった言葉も、彼の触れられたくない記憶。そして中身も。

『アトラクタの箱』に入っていたパズルのピースとして愚見化された『記憶の断片』は、ナルの持っていた欠片と合体する。

俺には不揃いに見えるが、彼は完全な記憶を思い出したんだ。

良かった……時間制限内に、記憶は復元できたから。

しかし鳳城さんは声を殺して泣き崩れる。

彼は、目覚める事を願ってくれるだろうか?


マウントされた夢は、目覚めるのを暗示するかのように景色を変えていく。

暗闇に光が生じ、浮遊していた文字列が消えた。

点在していた『アトラクタの箱』は、彼の手にある記憶に反応して開いていく。

そして、俺達ピース・プレイヤーの任務完了を知らせるように、自分達の夢に通じるドアが現れた。


俺は白い世界に戻る。


倫理を侵す『小片遊戯ピース・ プレイ』は、人を救えた。

記憶の復旧が出来るピース・ プレイヤー。

そう、俺はピスプレ。

鳳城さんのピースを完成させて記憶の復元をした。

記憶にあるものは思い出せる。

自分の記憶にない中学生のピナが、どうして俺の夢に居るのか。


出来るかもしれない……記憶の復元が…………



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