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MISSIONE 2‐1 記憶の改変


潜入開始。


到達したオオトリさんの夢の中は、俺の心と同様……漆黒の闇。

それを照らすように扉が開く。

一瞬の光に包まれた秘成は、まるで……

「サキチ?え、何?何で、真っ暗になるなの?」

扉が消え、漆黒の闇へと染まる。

このまま、まどろむ様な闇に留まるのも良いかもしれない。でも、それをオオトリさんが望んだのか?

「秘成、落ち着いて。」

夢の中への潜入経験が少ないし、こんな潜入になるとは、予想外だった。

何らかの欠陥は予想したが、まさか暗闇に包まれた記憶なんて……

オオトリさん本来の物なのか?

いや、彼の夢(ブリーフィングルーム) には光があった。だからこそ、ナルに似た女生徒を見る事が出来たのだから。

これが弊害?


「ね、サキチ?明るくした方がいいでしょ。光を具現化してみるね!」

普通はブリーフィングルームでしか行えない具現化。

その能力は、夢を夢と自覚することで自由に物体を出現させるなどコントロールを可能にする。

現実世界で固定化された潜在意識が妨げたり、まして他人の夢(記憶)の中でイメージしたりするなど。

物体を出現させる(具現化)には明確なイメージ。構造の把握……

それを覆すのは驚異の独創的な発想力。

天真爛漫な彼女だから出来るのか、俺には未だに理解できない。

暗闇に生じる小さな光が、秘成の顔を照らす。

目を閉じ、何かをイメージしているのか……具現化に成功して光は広がり、ソレは空中に浮かんだ。

ソレは……


秘成は額の汗を拭うような素振りで、満足げな表情を向ける。

「一応、訊くが……何だコレは?」

他人の意識下で暗闇に明かりを作成したのは特異で、凄い事。

しかし……何の変哲もない丸に棒線が何本かぐるりと一周した立体感のない物体。

確か工業団地だったか小学生で習った図記号のような……

何故それが光源になる?

秘成は得意げに踏ん反り、説明しながら指を動かす。

「サキチのお、ば、か、さ、ん。見たまんま、太陽なのです!」

太陽を具現化だと?

コレが秘成の太陽のイメージ……

「……残念だが太陽には見えない。その程遠い物体が何故、光を発するのか理解に苦しむ。」

秘成は俺の答えに対し、不満気に頬を膨らませて顔を背けた。

秘成の母は有名なキャラクターデザイナー。その遺伝なのか発想力や具現化に長けているが、デザイン力は皆無だな。


「サキチ、これって……。」

小さな光源は謎の威力で、徐々に階層を照らしていく。

広がる階層すべてに、アトラクタの箱が無数に点在し、空中を漂う複雑な数式や難解な言葉の羅列。

これがオオトリさんの……

言葉を失う俺と秘成。

そう言えば、オオトリさんが言っていた。

『“覚える”のは得意なんだ』

言い換えれば、忘れる事が出来ないのか?

そう言えば、システムの説明で『いっぱい覚えられるものは、なかなか思い出せない』と聞いた事がある。

「私、わけわかんない世界に酔いそうだよ。」

「そうだな。時間も無い……手がかりも。」

忘れたい事、隠したい事がオオトリさんに山ほど。

踏み込んではいけない記憶の中。

マウントされる取り戻したい記憶とは違い、触れてはならない倫理を侵す行為を……ナルなのか、誰かが…………。

一歩間違えば、俺達も侵してしまう危険な潜入。


「……ふふっ。待っていれば必ず来ると思っていたけれど。随分、慎重なのね。」

大きなアトラクタの箱に、大きな亀裂……音も無く生じた穴からナルが現れた。

言葉を失う。

オオトリさんの記憶が、無理やり破壊された。

それは改変などとは違い、復元できるレベルではない。

「お前、何を……ナルだよな。自分が何をしたのか、分かっているのか?」

ピスプレの限界を計ることも理解を超え、複雑な怒り。

冷静なナルが信じられず、何か、復元の糸口でもあるのかと願う。

「何をしたのか?ふっ。く……くく、ははは。あははっ……あなたは自分の存在が何なのか、知らないの?」


俺の存在が、何なのか。


「へー。本当に、知らないんだ。倫理を侵せると証明したのは、あなたなのよ。」

リンリヲオカセルトショウメイシタ……

俺が?

「そうね、あなたを見つけるための潜入だったから……倫理を侵すつもりなんて無かった。誰にも触れられたくない記憶に、私が触れられるなんて……彼を救えるなら救って欲しい。深層心理の奥深くに欠けたピースを戻せば、きっと…………。現実で会いましょう。その時は、あなたに無理強いしてでも協力してもらうわ。」

彼女はピースを持って近づいて来る。

最後の言葉に警戒心を強めたが、素直にピースを手渡すナルの行動が読めずに戸惑う。

その一瞬……

ナルの顔が近づいて、俺の唇に触れた柔らかい感触。

茫然とする俺に、企んだような笑みを見せたかと思うと、ナルは霞むようにして消えた。


え?今、俺……キス?

視線を感じ、はっとする。

「……ピナ?あの、その……これは不可抗力で……」

焦りと何かに駆られる様に言葉を増やす俺に、秘成は俺に近づいて腕を振り上げた。

ぎゃぁ、殴られる~~……?

俺は顔を背け、力の入った体。

しかし、意外な感覚に戸惑い、思考力は現状の把握の為に目を開けるように伝達した。

俺の口を柔らかい手掌でゴシゴシ擦る秘成。

その動きを止めようと、秘成の手首を掴む。

目に入ったのは、大量の涙を流して声を殺して泣いている秘成の悲しみの表情。

悔しさと憎しみの交じる様に、俺の心を揺さぶる。痛みが伝わるように苦しみを引き起こした。

「ごめん。秘成……泣くな、……泣かないで。お願いだから笑ってよ……君が願うなら、痛みを受け入れる。」

「うっ……く。ふ……うぅ……イヤだ。酷い……苦しいよ、サキチ……何も分かってない。あなたは何も……。」

泣き崩れるのを支え、自分にも込み上げる涙を我慢する。

「そうだな。何も知らない……秘成、君は何を知っている?今は、それを知るべき時だろうか。受け止めると誓う……真実すべてを……。だから笑って欲しい。」


記憶の改変……

倫理を侵せると証明したのは俺だと言う彼女の目的も分からないが、このピースでオオトリさんの記憶を復元するのが先決。

それが今、俺達に出来る事。

夢をコントロールする能力『小片遊戯ピース・ プレイ』で、記憶の復旧を行うピース・ プレイヤーの務め。


そう俺はピスプレ……記憶改変などしない…………



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