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ボクが団長!? ―黒き魔剣と傭兵王(未定)―  作者: 如月コウ
許せない【現実】を知る!?
9/30

エリス、空を飛ぶ!?



 ギルとレンの『エリゆか♪』加入から一ヵ月と少々。

 エリスが多くの感動を生み、トウマとカティナが、ギルとレンと毎日手合わせし、ファングに対し、以前よりは抵抗できるようになり、ギルが町の女性を癒し、レンが町の男達を虜にし、双子がギルとレンを活かし、荒稼ぎしていた。


 そんな、ある日。


「これって、二人の仕業?」

「いいえ、違うわ」「むしろ教えてほしいわ」

「すげえ数だなあ」

「流石にこれだけの数を、一度に見るのは初めてね」

「ふむ……ファング、これはやはり?」

「だろうな。ノーリスは少ねえって話だからな。思わず集まってきたんだろ」

「か、可愛いですねえ♪」


 店の軒下に集まっているモノ達をみて、全員が素直に驚く。


「Zzz……」


 その中心には、彼女がいた。

 彼女こそ、近い将来ノーリス中に勇名を轟かせる傭兵団、伝説の創始メンバー最後の一名。

 始まりは近い。


 …………


 とりあえず、彼女を店の中に引っ張り込んだ一同。

 椅子に座らせ事情を、と思ったのだが……。


「はい~、おはようございまZz」

「寝るんじゃない」(頭をはたく)「目を開けなさい」(無理やり目を開ける)

「はうぅぅ、いたいでZzzzzz……」


 双子の睡眠妨害は、まさに眼中に無い彼女。

 凄まじく長い――直立すれば、くるぶしに届くほどの水色の髪の艶やかさが素晴らしい、のだが、ろくに手入れしていないのだろう、ボッサボサである、が、ろくに手入れしないで、この髪の艶やかさを保っていることに女性陣が驚く。

 着ている物は布……ボロボロの。

 はっきり言ってしまえば浮浪者である。

 とりあえず湯浴み決定。

 実行――――――終了。


「カティナやレンさんとは違った美人さんだね、ファング」

「なんでおまえは、いちいち女の寸評を俺にさせんだ? まあ、綺麗なんじゃねえか」

「(そう言いつつ、律儀に答えるんだよな、ファングは)なあ、ギルはどう思う?」

「ふむ。美しいのは間違いないな」


 小奇麗になって出てきた彼女に男性陣がコメント。好意的な意見。

 どことなく浮世離れした雰囲気を纏う彼女。

 間違いなく美しいのだが……。


「Zzzzzzz……」

「また寝てるわよ」「どこでも寝られるのね」

「すごいのよ彼女。少し目を離したら湯船で寝てるからね」


 目を閉じ、涎を口元から溢れさせ、立ち寝する彼女。

 なんというか……実にもったいない。

 

「たいへん、ごめいわくを、おかけ、しまZzzz……」

「そう思うなら」(右頬、つまむ)「いい加減に」(左頬、つまむ)

「「 目 を 覚 ま し な さ い ! 」」(同時に思いっきり引っ張る)


 双子による気付け攻撃の痛みで、ようやく会話可能に。


「おなかが、すいたんです……」

「まともに話したと思ったら」「いきなり食べ物要求とはね」


 仕方がないので食事提供。

 朝食前だったので彼女の分も用意。

 営業時間外というのも好都合ではあった(『エリゆか♪』は昼と夜の営業)。


「とってもおいしいですぅ……」


 彼女が恍惚とした表情で一心不乱に頬張る。目尻に涙。


 10分後


「ごちそうさまでしたあ、とってもおいしかったですぅ……」

「てっきり、また寝るかと思ったわ」「さすがに、起きた……ん?」

「………………すぅすぅ」

「「 随 分 器 用 ね っ !」」(二人が同時にもみあげを引っ張る)


 眠そうな表情のまま寝ていた彼女を、双子が間髪いれずに起こす。

 会って間もない者に対し、情け容赦の無いセーネとレーネ。

 目の前の双子がなかなかに危険な少女達である事に気付いた彼女、寝ないように何とか踏みとどまる事を決めた模様。

 そんなわけで、ようやく色々と事情を聞けることに。


 …………


「頭が痛くなるわね」「一応、証明したわね」

「しっぱい、しっぱい~」

「す、すごい……のかな?」

「ある意味、凄いんじゃねえか」


 彼女の名前はウミ。

 少し前までアルシア大陸にいた彼女。

 二人の弟を探しにノーリス列島群にきたそうな。

 ノーリス最西端のアデリアにいる事からも間違いないだろう。アルシア大陸はノーリス列島群の遥か西に存在するからだ。

 エリスの作る朝食の匂いに釣られ『エリゆか♪』到着。そのまま、店の軒で気を失ったらしい。

 話を聞いていて、彼女にはある特技がある事が判明。


「山盛りね」

「ああ、てんこ盛りだな」

「使い方はわかったわね」「ええ、便利といえば便利ね」

「ほめられると、てれちゃうよ~」

「「 褒めてないわよ! 」」


 彼女が特技を披露した結果が、テーブルの上になぜか大量に盛られた砂。

 彼女の特技、それは、


「名前負けしすぎよっ!」「きんの気配が微塵もないのよっ!」

「ごめんなさ~い」

「自称『錬金術師』は結構見てきたけど、いろんな意味でずば抜けてるわね……」


“ 『錬金術』 ”

 物質を組み替え、または組み合わせ、新たな物質、性質、現象を生む魔術。


 彼女は試みた。

 店の銀の食器を金に変えようとっ!

 失敗。鉄の板に変わりました。


 彼女は試みた。

 鉄の板を元の銀の食器に戻そうとっ!

 失敗。石塊に変わりました。


 彼女は試みた。

 石塊をせめて鉄塊にっ!


「……とってもさらさらね」「……きめ細かいのが、評価できるわね」

「せ、せいこう?」

「「 大失敗よっっっっ! 」」


 そんなわけで、テーブルの上に、こんもりと砂が盛られたわけだ。

 そう、彼女はへっぽこ錬金術師なのだ。


「ねえねえ、ウミさん?」

「なぁに?」


 エリスがどうしても気になる、アレの事を聞く。


「なんで、ウミさんの周りに――動物達――があんなに集まってたの?」


 そう、軒で寝ていたウミの周りには、おそらく町内外全ての動物達が集まっていた。


「えっとねえ、わたし――『竜』なの♪」


 全員、いや、ファング、ギル、レン以外の五人が驚く。


「ど、どうみても人……『器』が違うって事、ファング?」

「半分正解だな。力ある『竜』ってのは人型に――変身――する奴が多い。『竜』は基本『人族』が好きだから『器』の形を、自分で『人型』に変えんだよ。もっとも。こいつはそれだけじゃねえ。そうだろ、ウミ」

「うん。わたし――『神族』でもあるの~」

「ど、どういうこと?」

「パパが『竜族』で~、ママが『神族』なの~」


 ウミは『混血者』。そういった者は少なくない。


「『竜』ってのは『魔素』の塊みてえなもんだからな。近くに寄ると心身共に休まる。特に動物ってのは『竜』の『魔素』が好きだ。ノーリスでは『竜』は滅多に『下界』に降りてこねえんだろ? そりゃ、群がるわな」


『竜』

 世界最強の生物。強靭な肉体と、高い知性を併せ持つ。

 その多くが、他の種族に寛容であり、特に人族を好む。

 また、他の種族に害をもたらす者達の『天敵』となるのが、彼ら『竜族』。


「ねえ、ウミさん、『竜』になってよ~♪」

「うん、いいよ~♪」

「まちなさい、外でなりなさい!」「店でなったら、エリス共々、見世物にするわよ!」


 双子の言葉に、エリスとウミが怯える。


 そんなわけで外に。

「がお~ん♪」という、なんとも気の抜ける掛け声と共に、ウミの身体が光を放ち、ものの数秒で『竜』に変わる。足元には、ボロボロになった服を見て、見繕った双子、軽くイラついていた。


「おおおお、かっこいいよ、ウミさん!」

「色からいって『青竜』なのかな?」

「よくわかんねえな。ニホンには『竜』がいないからな」

「へえ、飛竜なのね。なかなか便利そうじゃない」「服が台無しになる事を除けばね」


 淡い青の竜鱗が特徴的な姿。

 大きさは中型。背丈は『エリゆか♪』よりも大きい。

 突然現れた『竜』に町の人と動物達が集まる。

 双子が住民を追い払い、ウミが動物達に話をつける。

 眼をキラキラさせ昂ぶっているエリスに、


「空とぶ~?」


 ウミが提案、即実行。

 中型の飛竜ならば十人程度は乗れるので全員騎乗した。

 …………


 そんなわけで、現在地、ベネス上空。

 長くなりそうなので昼間の営業は臨時休業。


「風が気持ちいいね、カティナ」

「ホントだねエリス(エリスを膝の上に乗せて飛竜騎乗……最高♪)」

「へえ、意外ね」「高い所、ダメなのね」

「ん、んなことねえ、お、押すなああああっ!?」

「はわ~、飛竜って凄いんですね~」

「いい経験が出来てよかったな、レン」


 ベネスの町並みを見下ろしながら、ゆったりと空を進む一同、そこに、


「ねえ、ウミさん。雲の上ってどうなってるの?」


 なんてことを、エリスが言い出したものだから、


「いってみる~?」


 ウミが応えてしまう、急上昇する。


「あわわわわわわっ!?」

「エリス、伏せるね?(あわわわ、エリスの顔がこんな近くに!? は、鼻血でそう)」

「寒っ!?」

「レン、頼む」

「うん……」


 一同に、風圧と寒さが襲う。

 レンの炎で寒さ改善。『真器』同様、敵以外を燃やす事は無い。

 ほどなく到着。

 眼前に広がる光景に、全員が息を呑む。


 青と白と光と影。其処にはそれ以外、存在しない。

 その簡素ながらも純粋な美しさに、皆の心が奮えていた。


「くうきがおいしいよね~♪」


 ウミの言葉で、我に返る一同。


「な、中々やるわね、ウミ」「我を忘れるなんて何年振りかしら」

「ほえ?」


 突然双子に褒められ戸惑うウミ。


「あれ~?」


 そんな彼女が何かに気付く。


「どうしたの、ウミさん?」

「ええとね~――ソラ――のにおいがしたの~」

「はい?」

「空の匂い?」

「びゅうううううん♪」


 突然急降下するウミ。あっという間に、地上へ到着。


「……私の眼がおかしいのかな」

「安心しなさいカティナ」「私達も自分の眼を疑ってるところよ」


 そこはアデリア王国のみならず、


「強そうな奴がわんさかだな」

「ですねえ。『授名者』もいますね」


 ノーリス列島群に知らぬ者などいないであろう、ある傭兵団、その本拠。


「ソラはっけん~♪」

「お久しぶりです、ウミ――姉さん」


 三年前の戦いに於いて、『世界』の『常識』を覆した彼らが在る場所。


「まさか、彼女の弟が『大魔』だったとはな」

「世の中、広いんだか狭いんだかわかんねえな、おい」


『暁光』傭兵団、その傘下の傭兵団『黒の忌鋏』。


 そう、ここは彼らの本拠地である。



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