エリス、説く!?
「次から次と、なんなんだ、てめえ!」
「良い剣筋です、『橘』の名は伊達じゃないようですねえ」
トウマと『ヴァルディア』による黒い斬撃。
それはゲーダの『真器』を破損せしめるほどの破壊力。
しかし、破損させる度に、違う『真器』を次々と展開するゲーダ。
剣だけでなく、斧や槍、鎚など多種多様の兵装を高レベルで使いこなすため、有効な攻撃を加えられずにいる。
「ふふ、貴女もしつこいですね」
その膠着状態にある二人に割り込むは、五つの閃き。
トウマの身体を縫うようにすり抜け、ゲーダに襲い掛かる。だが、
「『それ』、卑怯だよね」
ゲーダに当たる寸前、その閃きが『何か』に弾かれる。
カティナは弓使い。接近戦では二本の小剣を使いこなす。
トウマを中心に戦う場合、カティナは後衛に徹する。つまりは本職の弓手となる。
その腕前はファングも認めるほどであり、凄腕と言っていい。
だが、いまだにゲーダには当てられずにいた。その理由は、
「『ワーナス』に『並』の飛び道具は効きませんよ?」
「はっ、言ってくれるね【悪神】。絶対に破るっっ!」
目の前の【悪神】に、『並』扱いされたカティナ、憤慨していた。
“ 『飛墜鎧 ワーナス』 ”
使用者の周囲に結界が自動展開され、飛来してくるものに――のみ――反応し、迎撃する。
特化型の『真器』は強力なものが多く、『ワーナス』もまた強力。
未熟といっても、仮にも『授名者』であるカティナの攻撃ですら弾くほどの、堅固な護りの力。
「『召喚師』の中でもこいつは特別だ。『真器』を『召喚』する奴は、他にはいねえからな。もっとも――《七剣》に比べりゃ雑魚だ。なあ、ゲーダ」
“ 『召喚師』 ”
『召喚』の『授名者』の総称。
“ 《七剣》 ”
『召喚師』最強といわれる女性。
そんなことを言いながら、トウマの左腕から『黒』を放つファング。
「《あの女》の話はしないでもらいたいですね、『狂剣』」
『黒』回避のために大きく退がったゲーダ。常に飄々としていた彼に苛立ちが見える。
「こいつが雑魚扱いとか。その《七剣》っていう女の人、すごいのね」
「ああ。俺と互角以上に渡り合える《女》だからな」
「おいおい……ファング以上って。どんな《化け物》だよ」
(で、どうすんだ? 正直、勝てる気がしねえんだけど)
トウマが弱音吐く。
(ほんとだよ。全然、破れる気しないし、いや、破るけどねっ!)
カティナも弱音吐く、が、強がる。
(無限に『召喚』できるわけじゃねえ。いつかは止まる。いつかは知らねえけどな)
ファングはやや投げやり。
そんなファングに、二人が文句を言う。
(ゲーダが来たという事は、すでに【あいつら】にエリスの『力』を知られてるって事だろうな。なんとも、手の早いこった。だが、今のノーリスの状況からすれば、それほど大きくは動けねえはず。しばらくは【こいつ】程度の駒が動くくらいだろう。しかし……こうもタイミングがいいと、なにやら作為的なもんを感じるな。ま、後はテメエ次第だ――)
そんな中、ファングは待つ。
この場に現れるに相応しい機を伺っている――『隠者』を。
…………
二人の攻撃はほとんど通じず、逆にゲーダの攻撃で確実に体力と気力を削られる。
「なかなか、手間取りましたが、これで終わりですね」
「カティナ! トウマ!」
そして、傷ついた二人が地面に倒れ、思わず声を上げるエリス。
「ああ、そういえば少年がいましたね。キミ、知っていますか?」
「え、な、何を?」
ゲーダが、怖気のする笑顔でエリスに告げる。
「我々【悪神】は――人が【大好物】なんです」
今から喰らうぞ、と。
「エリス、逃げて!」
「くそっ、身体がうごかねえ……ファング、何とかならねえのか!」
「…………」
トウマの問いに、ファングは無言。
その間もゲーダは、ゆっくりとエリスの元へ向かう。
「特に、純粋で穢れのない人間を【我々】は好みます。何故か?」
エリスは動けない。
「その無垢な心を絶望で染め上げたときの、あの表情がたまらないんですよ♪」
足がすくみ、その場から動くことができない。
「奇遇だな、『蒐集家』」
「っ!?」
ゲーダが表情を変え、慌てて後ろに飛び退く。
「私も、貴様ら【悪神】の絶望する顔が、あまりに無様な、あの表情が好きなんだ」
震えるエリスの傍らに、彼が現れる。
「ここで来ますか、『咎』」
「もう大丈夫だエリスくん。私に任せてくれればいい」
「……こいつら鍛えるためでも遅すぎやしねえか、『咎』」
「それが『役割』だ。従いたくはないが仕方がないからな」
彼が、『咎』のギルがゲーダを見据える。
「【裏切り者】であるあなたが、仲間である【我々】に敵意を向ける事の意味、わかってますよね、『咎』」
「当然だ。私はここで『消える』。だが、すぐに消える事はない。私の言葉の意味、わかってるな【蒐集家】」
ギルが腰の『剣』を抜く。
その『剣』は、ぼやけたような赤と滲んだ黒が混ざったような色の剣身。
形状は緩やかな曲線を描く。トウマの持つニホンの剣『カタナ』と同じだと思われる。
「ええ、わかっていますよ。『赤刀 紅蓮』が目の前にあり、私は【蒐集家】。当然『それ』を狙わないわけがない。正当防衛という奴ですよね」
そう、もしもここにいるのが【蒐集家】ゲーダでなければ、敵意を向けたその瞬間、ギルは消滅していただろう。
それが『世界』の『法則』だから。
「感謝するぞゲーダ。貴様がきたからこそ私は――」
だからこそ、この巡り合わせに――幸運にギルは感謝する。
「自分の意志で、初めて人のために戦うことができる。初めて、全力で戦える……」
忌まわしい『名』の枷を外せる事に、深く深く感謝しているのだ。
「『レン』、行くぞ!」
その手に握る『剣』が赤く輝きだすと同時に、ギルが動き出す。その動き、速力は『顕現』したファング以上。
即座にゲーダを間合いに捉えたギルから、三本の赤い線が描かれる。それは『赤刀 紅蓮』から放たれた三つの斬撃。
ゲーダは双剣による迎撃で相殺、瞬時に槍に持ち替える。
リーチを活かし攻勢に出ようとするゲーダ、が、ギルがそうはさせまいと間合いを詰め、乱撃で以って応える。
捌くゲーダ。槍を消し、手甲、脚甲を装着、手数を増やす。
その手数の多さに動じることなく、ギルが全ていなす。
二者の戦いは、膠着状態という名の激しい闘いが始まる。
「ファング、どういう事なの、レベリアスさんが消えるって何!?」
「あいつは消える。『名』が与えた『役割』を無視して『力』を振るえば、『世界』が『拒絶』する。『世界』から消されるんだよ」
「や、『役割』って何なの? 何も悪いことして――」
「あいつは『咎』。特性は『隠者』。『役割』は、【悪神】側につき、誰にも知られずに『人』を助けること。一応、仲間である【悪神】の敵に回ったら『役割』はこなせねえ、そういうことだ。今は既に、あいつが【人の裏切り者を演じてた】ってことは知られてる。三年前の争いでな。そうだろ、カティナ」
その言葉に頷くカティナ。ファングに、ここ最近の情勢を教えたのはカティナ。
「『咎』のギルは、五百年以上前から『役割』をこなしてきた。それがどれだけの苦難かわかるか? 目の前で【悪神】に殺されそうな奴を、本当は助けてえのに手を出せねえ。おそらく、あいつはそういう光景を見続けてきた。だからエリス、そろそろあいつを楽にして――」
「……うよ」
突然、エリスが駆けだす。向かうのは当然――
「バカか、てめえ! 何してやがる!」
「違う、違うんだ。それは違うんですよ、レベリアスさん!」
「なっ、ダメだ、来るんじゃない!」
「死んじゃ駄目なんです! レベリアスさんがいなくなったら――」
エリスが、その小柄な身体から、全てを搾り出すように吼える!
「 ボ ク は 泣 き ま す っ ! 」
その場の者全員、ゲーダですら呆気に取られる、その言葉。
「誰かを護る人は、その誰かを笑顔にしなきゃいけないんです。涙を流させちゃいけないんですよっ!」
そんな事を言いながら、ゲーダから護るようにギルの前に立つエリス。
だが、エリスの身体は……震えている。
そう、怖くないわけがないのだ。
けれどもエリスは、その小さな身体で阻もうとしているのだ、ギルの為に。
「はやく逃げてください、レベリアスさん!」
ギルは、自分が勘違いしていた事に気付く。
彼は、こう考えていた。
誰かを自分の意志で護りたい、と。そう在りたいと願っていた。
今この時、僅かな時間だけだが、それが叶う。
その事をなにより嬉しく思っていた、だが、
「エリス君、君は……」
それは違うのだ、と。
ギルが死ねば、消えれば――エリスは悲しむと、そう言った。
彼は思いだす。
自分は、人々の笑顔のために、戦ってきた事を。
自分が『授名』してから願っていたことは、人と共に在りたいという事。
そして、今この時芽生えた、新たな願いは――
「クックック、おもしれえことになってきたな」
ファングの言葉にカティナとトウマが首を傾げる。
「……そういうこと、だったのか」
僅かな時間押し黙ったギルが笑顔になり、
「――『英雄』よ……感謝する」
その笑顔に、涙が流れてゆく。
「《我が身躯、彼の玉体を、護りし為》」
そして彼が、涙混じりの声で《詠み上げる》。
「《総てを刃に変えるが、我が意》」
今この瞬間に、世界より《授かった新しい名》の《由来》を。
「《刃閃き、開くは王道》」
彼が変わっていく。
「《通りし道に、彼の敵、在らず》」
自らを解放に導いてくれた、仕えるべき『王』の傍に在る者として、相応しい佇まいへと変貌していく。
「《我刃王是》ギルフォード・レベリアス」
『名』に囚われていた者の、歓喜の咆哮が《世界》に轟く。
「《 私 は 、 こ こ に い る 》!」
彼は終えたのだ。
『咎』という『名』の【罰】を、今この時を以って、全て受け終えた。
そう、彼の長き【贖罪の旅】は、ようやく終わりを迎えたのだ。
これより彼が踏み出すは《王佐の旅路》。
己の意志で、『彼』を支え護りぬくための《王道》を往く。
「エリオット様、失礼します」
「え、ええええええ、あわわわわわ!」
ギルがエリスを担ぎ、トウマに向け優しく放る、見事にキャッチ。
「さて……待たせたな、ゲーダ」
彼がゆっくりと、
「エリオット様に対する無礼の数々」
ゲーダに近づいていく。
「たやすく許されると思うな!」
剣を、『赤刀 紅蓮』を構える。
そして世界に見せつける、その『色』の美しさを――自らの相棒の『真の姿』を!
「あの『剣』、さっきよりも赤くなってるわね」
「これまであの『真器』は、本気じゃなかったってことだ。おそらくは、ギルが『改名』して、その在り方に納得したんだろうな」
「『改名』?」
「言葉どおり、『名』を『改める』ってことだ。ほとんどの奴は単純に強くなるだけだが、あいつにとってはそうじゃねえ。『名』の呪縛からの解放。今のあいつに――」
熱が『赤刀 紅蓮』から届く、暖かく柔らかな熱が三人を包んでいく。
傷がゆっくりと癒えていくのを、カティナとトウマは感じていた。
「ぐうううう、くそっ! ここまでとは……」
その一方でゲーダが苦しむ。
「――新しい『名』を得たあいつに、もはや制約は存在しない。そして、その新しい在り方に『真器』も賛同した。つまり、『真器使い』としても全力を出せるってことだ」
『赤刀 紅蓮』が、真の姿をその場の者達に示す。
「キレイ♪」
「これはすげえな……」
「ふわぁぁぁぁ!」
空の青に映えるであろう、鮮やかな橙色の炎が、ふわりふわりと揺れ動く。
炎は刀身のみならず、ギル自身も覆っていた。
「あれって、レベリアスさんは燃えないの?」
「俺の『黒腕』と同じだ。使用者はもちろん、敵対しない者を傷つける事はねえよ。『真器』の能力ってのはそういうもんだ」
自身の間合いの一歩手前まで、ゲーダに近づいたギルが、
「提案だ、ゲーダ。おまえの持つ全ての『真器』をエリオット様に捧げるならば、その命、見逃してやってもいいぞ」
「キ、キサマ……」
そんな提案をする。
ギルの提案を聞いたゲーダが、苛立たしげに歯がみしていた。
「クックック♪ あいつ、結構性格悪いな」
「どういうこと?」
「ゲーダの、命よりも大切な『蒐集品』を差し出せば命は助けてやる。差し出さなければ、殺した後、『蒐集品』は頂く。そう言ってるのと同じ。どちらにしてもゲーダにとっては、最悪な選択肢しかねえんだよ」
三人がファングの言に納得。同時に、怒らせるとギルが怖い事も理解した。
「さあ、選べ。今のおまえに選べるのは、どちらかだけだ」
ゲーダは理解していた。
先ほどまでのギルならば、まだ勝ち目はあった。
『真器』の覚醒が不十分であったし、制約により、時が来れば消滅する事を、ゲーダはわかっていた。
だからこそゲーダは、無理に攻めずに、安全策を取っていた。
まさか、このタイミングで『改名』するとは夢にも思わなかったのだ。
膠着状態であった形勢は完全に崩壊。
ゲーダに、勝ち目は無い。
「帰りが遅いと思えば、何をしているゲーダ」
だからこそ、その場に『彼女』が現れたのは、ゲーダにとって紛れも無い幸運。上空より【青】が舞い降りてくる。
「ほう、こいつがいるという事は、【白き悪夢】の野郎が来てやがるのか!」
ファングが、飛竜に乗っている女の姿を見て興奮する。どうやら彼女が何者か知っているようだ。
「『黒の魔剣』――『狂剣』か。なぜキサマが『こんな所』にいる」
「さてな。案外、てめえのご主人様を殺すためかも知れねえな♪」
「口を慎めよ『狂剣』。我が主への不遜、二度は許さぬ」
「クックック。相変わらず、堅苦しい女だな【青槍】」
「ふん。ゲーダ、退くぞ」
その言葉を受け、ゲーダが素早く飛竜に乗る、そこに、
「っっ、ちっ!」
彼女、【青槍】が素早く背中の『槍』を振るい『それ』を防ぐ。
「女、その男をこちらによこせ。そうすれば――見逃してやる」
ギルが――『炎』を斬り放つ。
防いだものの、彼女の表情には焦りが見られる。
「一体なんなんだ、この『場』は。『狂剣』に加え、キサマのような化け物がいるとはな。ここは素直に退かせてもらう」
そういうと、慌てて【彼女】が飛竜を飛ばし始める。
「逃がすと思っているのかっっっ!」
ギルの気迫に応える様に、彼を覆っている炎が、大きく燃え盛る。
現れたるは、『炎の巨刃』。
一切のためらい無く、ゲーダらに振るう。
「厄介な。吼えろ『ヴェラート』!」
それに対し【彼女】が、襲い来る『巨刃』へと『槍】を振るう。
「なるほど、『真器』か」
次の瞬間、巨大な氷の壁が現れ『巨刃』と対する。
結果は相殺、いや、
「そうだ、『氷槍 ヴェラート』。まさか、防ぎきれんとはな」
ギルが手傷を負わせる。
腕に一筋の鮮血、それを舐めとり、【彼女】が微笑み、
「【青槍】ヅィーナ・ヴェリアンタだ。貴様は?」
目の前の敵に対し【名】乗り、『名』を尋ね、
「《我刃王是》ギルフォード・レベリアス」
ギルが応える。
「その《名》、覚えておく。この借りは、いずれ必ず――」
薄く笑いながら、そう言い放ち飛び去っていくヅィーナ。
さすがに距離が離れすぎたのか、納刀するギル、すかさずエリスの元に向かい、恭しく膝をつく。
「あの【外道】は討ち取れませんでしたが、今はこれで……エリオット様?」
「か……か、か……」
ぷるぷると震えているエリス、
「かっこいいよおおおお、レベリアスさん!」
これでもかと大・興・奮していた!
ギルの闘いを観て、色々と抑えきれない様子。
「剣から、ぶわああああって炎出して、ぼわあああああって振り回して、すっごくかっこいいなあ♪ ねーねー、ファング。ボクも、ああいうこと出来るのかな?」
「できるわけねえだろ。『アウター』になってから言え」
「うん、がんばって『アウター』になるよ! 楽しみだなあ♪」
「ええ、きっとエリオット様なら、立派な『アウター』になるでしょう」
「レベリアスさん、エリオット様は、恥ずかしいですよー、エリスでいいですよー」
「む、そうでしたか。では、エリス様と」
「様もいらないですよ~♪」
「しかし……」
困惑するギル、そこに、
「肩肘張らないでいきましょうよ、レベリアスさん」
「カティナの言う通りだ。ましてあんたは俺達の命の恩人。ホント感謝してるよ」
カティナとトウマが、感謝の言を述べる。
「そ、そうだよ。レベリアスさん、助けてくれてありがとう」
「お、おお……なんともったいない御言葉。骨身に染み渡ります。それとエリス……様。私の事は気軽にギルとお呼びください、二人もそう呼んでくれ」
「『やだっ! 名前に様つける人の言う事なんか聞かないもん♪』」
「え、えええ、ボク、そんなこと……」
「ぷっ! だな。エリスの言う通りだ。遠慮する奴の言う事なんて聞くな聞くな♪」
「おまえ、すげえな」
ファングが感心していた事。
カティナの特技の一つ、エリスの声真似。どう聞いても本人の声にしか聞こえない。
その完成度の高さに、エリス大好きカティナらしさが伺える。
「ふ、ふふふ、わかりました、わかったよ……エリス」
「うん、よろしくね、ギル♪」
そして、帰途に就く一同。
道中、ファングがあの時の、村での会話を思いだしていた。
…………
「――俺は、贖罪のため、彼を護りたいのではない。彼が、思いださせてくれたのだ」
「……」
「彼の店が、彼の料理が、『咎』になる前の平穏だった頃を思いださせてくれた。純粋に食事を楽しむという事の喜びを再び実感することができた。本当に……嬉しかったのだ。その恩義、返さねばならない」
(本当に、こいつはなんなんだ。結局、『咎』まで取り込んでたって事じゃねえか。ギルの《名》から推測できるのは、こいつが『王』って事なんだが、それ以外がさっぱりわからねえ………まあ、あの双子じゃねえが、今わかる事だけで整理すると、こいつがいずれ――巻き込まれる事になる――のは間違いねえだろうな)
ファングは思索していた。
(『王』、その名の重みは生半可じゃねえ。一刻も早く態勢を整えねえといけねえな)
未来の『王』を護り導くための――《道》を。