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ボクが団長!? ―黒き魔剣と傭兵王(未定)―  作者: 如月コウ
初めての【敵】との闘い!?
7/30

エリス、説く!?



「次から次と、なんなんだ、てめえ!」

「良い剣筋です、『橘』の名は伊達じゃないようですねえ」


 トウマと『ヴァルディア』による黒い斬撃。

 それはゲーダの『真器』を破損せしめるほどの破壊力。

 しかし、破損させる度に、違う『真器』を次々と展開するゲーダ。

 剣だけでなく、斧や槍、鎚など多種多様の兵装を高レベルで使いこなすため、有効な攻撃を加えられずにいる。


「ふふ、貴女もしつこいですね」


 その膠着状態にある二人に割り込むは、五つの閃き。

 トウマの身体を縫うようにすり抜け、ゲーダに襲い掛かる。だが、


「『それ』、卑怯だよね」


 ゲーダに当たる寸前、その閃きが『何か』に弾かれる。

 カティナは弓使い。接近戦では二本の小剣を使いこなす。

 トウマを中心に戦う場合、カティナは後衛に徹する。つまりは本職の弓手となる。

 その腕前はファングも認めるほどであり、凄腕と言っていい。

 だが、いまだにゲーダには当てられずにいた。その理由は、


「『ワーナス』に『並』の飛び道具は効きませんよ?」

「はっ、言ってくれるね【悪神】。絶対に破るっっ!」


 目の前の【悪神】に、『並』扱いされたカティナ、憤慨していた。


“ 『飛墜鎧ひついがい ワーナス』 ”

 使用者の周囲に結界が自動展開され、飛来してくるものに――のみ――反応し、迎撃する。

 特化型の『真器』は強力なものが多く、『ワーナス』もまた強力。

 未熟といっても、仮にも『授名者』であるカティナの攻撃ですら弾くほどの、堅固な護りの力。


「『召喚師』の中でもこいつは特別だ。『真器』を『召喚』する奴は、他にはいねえからな。もっとも――《七剣》に比べりゃ雑魚だ。なあ、ゲーダ」


“ 『召喚師』 ”

『召喚』の『授名者』の総称。


“ 《七剣》 ”

『召喚師』最強といわれる女性。


 そんなことを言いながら、トウマの左腕から『黒』を放つファング。


「《あの女》の話はしないでもらいたいですね、『狂剣』」


『黒』回避のために大きく退がったゲーダ。常に飄々としていた彼に苛立ちが見える。


「こいつが雑魚扱いとか。その《七剣》っていう女の人、すごいのね」

「ああ。俺と互角以上に渡り合える《女》だからな」

「おいおい……ファング以上って。どんな《化け物》だよ」


(で、どうすんだ? 正直、勝てる気がしねえんだけど)


 トウマが弱音吐く。


(ほんとだよ。全然、破れる気しないし、いや、破るけどねっ!)


 カティナも弱音吐く、が、強がる。


(無限に『召喚』できるわけじゃねえ。いつかは止まる。いつかは知らねえけどな)


 ファングはやや投げやり。

 そんなファングに、二人が文句を言う。


(ゲーダが来たという事は、すでに【あいつら】にエリスの『力』を知られてるって事だろうな。なんとも、手の早いこった。だが、今のノーリスの状況からすれば、それほど大きくは動けねえはず。しばらくは【こいつ】程度の駒が動くくらいだろう。しかし……こうもタイミングがいいと、なにやら作為的なもんを感じるな。ま、後はテメエ次第だ――)


 そんな中、ファングは待つ。

 この場に現れるに相応しい機を伺っている――『隠者』を。


 …………


 二人の攻撃はほとんど通じず、逆にゲーダの攻撃で確実に体力と気力を削られる。


「なかなか、手間取りましたが、これで終わりですね」

「カティナ! トウマ!」


 そして、傷ついた二人が地面に倒れ、思わず声を上げるエリス。


「ああ、そういえば少年がいましたね。キミ、知っていますか?」

「え、な、何を?」


 ゲーダが、怖気のする笑顔でエリスに告げる。


「我々【悪神】は――人が【大好物】なんです」


 今から喰らうぞ、と。


「エリス、逃げて!」

「くそっ、身体がうごかねえ……ファング、何とかならねえのか!」

「…………」


 トウマの問いに、ファングは無言。

 その間もゲーダは、ゆっくりとエリスの元へ向かう。


「特に、純粋で穢れのない人間を【我々】は好みます。何故か?」


 エリスは動けない。


「その無垢な心を絶望で染め上げたときの、あの表情がたまらないんですよ♪」


 足がすくみ、その場から動くことができない。


「奇遇だな、『蒐集家』」

「っ!?」


 ゲーダが表情を変え、慌てて後ろに飛び退く。


「私も、貴様ら【悪神】の絶望する顔が、あまりに無様な、あの表情が好きなんだ」


 震えるエリスの傍らに、彼が現れる。


「ここで来ますか、『咎』」

「もう大丈夫だエリスくん。私に任せてくれればいい」

「……こいつら鍛えるためでも遅すぎやしねえか、『咎』」

「それが『役割』だ。従いたくはないが仕方がないからな」


 彼が、『咎』のギルがゲーダを見据える。


「【裏切り者】であるあなたが、仲間である【我々】に敵意を向ける事の意味、わかってますよね、『咎』」

「当然だ。私はここで『消える』。だが、すぐに消える事はない。私の言葉の意味、わかってるな【蒐集家】」


 ギルが腰の『剣』を抜く。

 その『剣』は、ぼやけたような赤と滲んだ黒が混ざったような色の剣身。

 形状は緩やかな曲線を描く。トウマの持つニホンの剣『カタナ』と同じだと思われる。


「ええ、わかっていますよ。『赤刀しゃくとう 紅蓮』が目の前にあり、私は【蒐集家】。当然『それ』を狙わないわけがない。正当防衛という奴ですよね」


 そう、もしもここにいるのが【蒐集家】ゲーダでなければ、敵意を向けたその瞬間、ギルは消滅していただろう。

 それが『世界』の『法則』だから。


「感謝するぞゲーダ。貴様がきたからこそ私は――」


 だからこそ、この巡り合わせに――幸運にギルは感謝する。


「自分の意志で、初めて人のために戦うことができる。初めて、全力で戦える……」


 忌まわしい『名』の枷を外せる事に、深く深く感謝しているのだ。


「『レン』、行くぞ!」


 その手に握る『剣』が赤く輝きだすと同時に、ギルが動き出す。その動き、速力は『顕現』したファング以上。

 即座にゲーダを間合いに捉えたギルから、三本の赤い線が描かれる。それは『赤刀 紅蓮』から放たれた三つの斬撃。

 ゲーダは双剣による迎撃で相殺、瞬時に槍に持ち替える。

 リーチを活かし攻勢に出ようとするゲーダ、が、ギルがそうはさせまいと間合いを詰め、乱撃で以って応える。

 捌くゲーダ。槍を消し、手甲、脚甲を装着、手数を増やす。

 その手数の多さに動じることなく、ギルが全ていなす。

 二者の戦いは、膠着状態という名の激しい闘いが始まる。


「ファング、どういう事なの、レベリアスさんが消えるって何!?」

「あいつは消える。『名』が与えた『役割』を無視して『力』を振るえば、『世界』が『拒絶』する。『世界』から消されるんだよ」

「や、『役割』って何なの? 何も悪いことして――」

「あいつは『咎』。特性は『隠者』。『役割』は、【悪神】側につき、誰にも知られずに『人』を助けること。一応、仲間である【悪神】の敵に回ったら『役割』はこなせねえ、そういうことだ。今は既に、あいつが【人の裏切り者を演じてた】ってことは知られてる。三年前の争いでな。そうだろ、カティナ」


 その言葉に頷くカティナ。ファングに、ここ最近の情勢を教えたのはカティナ。


「『咎』のギルは、五百年以上前から『役割』をこなしてきた。それがどれだけの苦難かわかるか? 目の前で【悪神】に殺されそうな奴を、本当は助けてえのに手を出せねえ。おそらく、あいつはそういう光景を見続けてきた。だからエリス、そろそろあいつを楽にして――」

「……うよ」


 突然、エリスが駆けだす。向かうのは当然――


「バカか、てめえ! 何してやがる!」

「違う、違うんだ。それは違うんですよ、レベリアスさん!」

「なっ、ダメだ、来るんじゃない!」

「死んじゃ駄目なんです! レベリアスさんがいなくなったら――」


 エリスが、その小柄な身体から、全てを搾り出すように吼える!


「 ボ ク は 泣 き ま す っ ! 」


 その場の者全員、ゲーダですら呆気に取られる、その言葉。


「誰かを護る人は、その誰かを笑顔にしなきゃいけないんです。涙を流させちゃいけないんですよっ!」


 そんな事を言いながら、ゲーダから護るようにギルの前に立つエリス。

 だが、エリスの身体は……震えている。

 そう、怖くないわけがないのだ。

 けれどもエリスは、その小さな身体で阻もうとしているのだ、ギルの為に。


「はやく逃げてください、レベリアスさん!」


 ギルは、自分が勘違いしていた事に気付く。

 彼は、こう考えていた。

 誰かを自分の意志で護りたい、と。そう在りたいと願っていた。

 今この時、僅かな時間だけだが、それが叶う。

 その事をなにより嬉しく思っていた、だが、


「エリス君、君は……」


 それは違うのだ、と。

 ギルが死ねば、消えれば――エリスは悲しむと、そう言った。

 彼は思いだす。

 自分は、人々の笑顔のために、戦ってきた事を。

 自分が『授名』してから願っていたことは、人と共に在りたいという事。

 そして、今この時芽生えた、新たな願いは――


「クックック、おもしれえことになってきたな」


 ファングの言葉にカティナとトウマが首を傾げる。


「……そういうこと、だったのか」


 僅かな時間押し黙ったギルが笑顔になり、


「――『英雄』よ……感謝する」


 その笑顔に、涙が流れてゆく。


「《我が身躯玉体を、護りし為》」


 そして彼が、涙混じりの声で《詠み上げる》。  


「《すべてを刃に変えるが、我が意》」


 今この瞬間に、世界より《授かった新しい名》の《由来》を。


「《やいば閃き、開くは王道》」


 彼が変わっていく。 


「《通りし道に、の敵、在らず》」


 自らを解放に導いてくれた、仕えるべき『王』の傍に在る者として、相応しい佇まいへと変貌していく。


「《我刃王是がじんおうぜ》ギルフォード・レベリアス」


『名』に囚われていた者の、歓喜の咆哮が《世界》にとどろく。


「《 私 は 、 こ こ に い る 》!」


 彼は終えたのだ。

『咎』という『名』の【罰】を、今この時を以って、全て受け終えた。

 そう、彼の長き【贖罪の旅】は、ようやく終わりを迎えたのだ。

 これより彼が踏み出すは《王佐の旅路》。

 己の意志で、『彼』を支え護りぬくための《王道》を往く。


「エリオット様、失礼します」

「え、ええええええ、あわわわわわ!」


 ギルがエリスを担ぎ、トウマに向け優しく放る、見事にキャッチ。


「さて……待たせたな、ゲーダ」


 彼がゆっくりと、


「エリオット様に対する無礼の数々」


 ゲーダに近づいていく。


「たやすく許されると思うな!」


 剣を、『赤刀 紅蓮』を構える。

 そして世界に見せつける、その『色』の美しさを――自らの相棒の『真の姿』を!


「あの『剣』、さっきよりも赤くなってるわね」

「これまであの『真器』は、本気じゃなかったってことだ。おそらくは、ギルが『改名』して、その在り方に納得したんだろうな」

「『改名』?」

「言葉どおり、『名』を『改める』ってことだ。ほとんどの奴は単純に強くなるだけだが、あいつにとってはそうじゃねえ。『名』の呪縛からの解放。今のあいつに――」


 熱が『赤刀 紅蓮』から届く、暖かく柔らかな熱が三人を包んでいく。

 傷がゆっくりと癒えていくのを、カティナとトウマは感じていた。


「ぐうううう、くそっ! ここまでとは……」


 その一方でゲーダが苦しむ。


「――新しい『名』を得たあいつに、もはや制約は存在しない。そして、その新しい在り方に『真器』も賛同した。つまり、『真器使い』としても全力を出せるってことだ」


『赤刀 紅蓮』が、真の姿をその場の者達に示す。


「キレイ♪」 

「これはすげえな……」

「ふわぁぁぁぁ!」


 空の青に映えるであろう、鮮やかな橙色の炎が、ふわりふわりと揺れ動く。

 炎は刀身のみならず、ギル自身も覆っていた。


「あれって、レベリアスさんは燃えないの?」

「俺の『黒腕』と同じだ。使用者はもちろん、敵対しない者を傷つける事はねえよ。『真器』の能力ってのはそういうもんだ」


 自身の間合いの一歩手前まで、ゲーダに近づいたギルが、


「提案だ、ゲーダ。おまえの持つ全ての『真器』をエリオット様に捧げるならば、その命、見逃してやってもいいぞ」

「キ、キサマ……」


 そんな提案をする。

 ギルの提案を聞いたゲーダが、苛立たしげに歯がみしていた。


「クックック♪ あいつ、結構性格悪いな」

「どういうこと?」

「ゲーダの、命よりも大切な『蒐集品』を差し出せば命は助けてやる。差し出さなければ、殺した後、『蒐集品』は頂く。そう言ってるのと同じ。どちらにしてもゲーダにとっては、最悪な選択肢しかねえんだよ」


 三人がファングの言に納得。同時に、怒らせるとギルが怖い事も理解した。


「さあ、選べ。今のおまえに選べるのは、どちらかだけだ」


 ゲーダは理解していた。

 先ほどまでのギルならば、まだ勝ち目はあった。

『真器』の覚醒が不十分であったし、制約により、時が来れば消滅する事を、ゲーダはわかっていた。

 だからこそゲーダは、無理に攻めずに、安全策を取っていた。

 まさか、このタイミングで『改名』するとは夢にも思わなかったのだ。

 膠着状態であった形勢は完全に崩壊。

 ゲーダに、勝ち目は無い。


「帰りが遅いと思えば、何をしているゲーダ」


 だからこそ、その場に『彼女』が現れたのは、ゲーダにとって紛れも無い幸運。上空より【青】が舞い降りてくる。


「ほう、こいつがいるという事は、【白き悪夢】の野郎が来てやがるのか!」


 ファングが、飛竜に乗っている女の姿を見て興奮する。どうやら彼女が何者か知っているようだ。


「『黒の魔剣』――『狂剣』か。なぜキサマが『こんな所』にいる」

「さてな。案外、てめえのご主人様を殺すためかも知れねえな♪」

「口を慎めよ『狂剣』。我が主への不遜、二度は許さぬ」

「クックック。相変わらず、堅苦しい女だな【青槍せいそう】」

「ふん。ゲーダ、退くぞ」


 その言葉を受け、ゲーダが素早く飛竜に乗る、そこに、


「っっ、ちっ!」


 彼女、【青槍】が素早く背中の『槍』を振るい『それ』を防ぐ。


「女、その男をこちらによこせ。そうすれば――見逃してやる」


 ギルが――『炎』を斬り放つ。

 防いだものの、彼女の表情には焦りが見られる。


「一体なんなんだ、この『場』は。『狂剣』に加え、キサマのような化け物がいるとはな。ここは素直に退かせてもらう」


 そういうと、慌てて【彼女】が飛竜を飛ばし始める。


「逃がすと思っているのかっっっ!」


 ギルの気迫に応える様に、彼を覆っている炎が、大きく燃え盛る。

 現れたるは、『炎の巨刃』。

 一切のためらい無く、ゲーダらに振るう。


「厄介な。吼えろ『ヴェラート』!」


 それに対し【彼女】が、襲い来る『巨刃』へと『槍】を振るう。


「なるほど、『真器』か」


 次の瞬間、巨大な氷の壁が現れ『巨刃』と対する。

 結果は相殺、いや、


「そうだ、『氷槍 ヴェラート』。まさか、防ぎきれんとはな」


 ギルが手傷を負わせる。

 腕に一筋の鮮血、それを舐めとり、【彼女】が微笑み、


「【青槍】ヅィーナ・ヴェリアンタだ。貴様は?」


 目の前の敵に対し【名】乗り、『名』を尋ね、


「《我刃王是》ギルフォード・レベリアス」


 ギルが応える。


「その《名》、覚えておく。この借りは、いずれ必ず――」


 薄く笑いながら、そう言い放ち飛び去っていくヅィーナ。

 さすがに距離が離れすぎたのか、納刀するギル、すかさずエリスの元に向かい、うやうやしく膝をつく。


「あの【外道】は討ち取れませんでしたが、今はこれで……エリオット様?」

「か……か、か……」


 ぷるぷると震えているエリス、


「かっこいいよおおおお、レベリアスさん!」


 これでもかと大・興・奮していた!

 ギルの闘いを観て、色々と抑えきれない様子。


「剣から、ぶわああああって炎出して、ぼわあああああって振り回して、すっごくかっこいいなあ♪ ねーねー、ファング。ボクも、ああいうこと出来るのかな?」

「できるわけねえだろ。『アウター』になってから言え」

「うん、がんばって『アウター』になるよ! 楽しみだなあ♪」

「ええ、きっとエリオット様なら、立派な『アウター』になるでしょう」

「レベリアスさん、エリオット様は、恥ずかしいですよー、エリスでいいですよー」

「む、そうでしたか。では、エリス様と」

「様もいらないですよ~♪」

「しかし……」


 困惑するギル、そこに、


「肩肘張らないでいきましょうよ、レベリアスさん」

「カティナの言う通りだ。ましてあんたは俺達の命の恩人。ホント感謝してるよ」


 カティナとトウマが、感謝の言を述べる。


「そ、そうだよ。レベリアスさん、助けてくれてありがとう」

「お、おお……なんともったいない御言葉。骨身に染み渡ります。それとエリス……様。私の事は気軽にギルとお呼びください、二人もそう呼んでくれ」

「『やだっ! 名前に様つける人の言う事なんか聞かないもん♪』」

「え、えええ、ボク、そんなこと……」

「ぷっ! だな。エリスの言う通りだ。遠慮する奴の言う事なんて聞くな聞くな♪」

「おまえ、すげえな」


 ファングが感心していた事。

 カティナの特技の一つ、エリスの声真似。どう聞いても本人の声にしか聞こえない。

 その完成度の高さに、エリス大好きカティナらしさが伺える。


「ふ、ふふふ、わかりました、わかったよ……エリス」

「うん、よろしくね、ギル♪」


 そして、帰途に就く一同。

 道中、ファングがあの時の、村での会話を思いだしていた。


 …………


「――俺は、贖罪のため、彼を護りたいのではない。彼が、思いださせてくれたのだ」

「……」

「彼の店が、彼の料理が、『咎』になる前の平穏だった頃を思いださせてくれた。純粋に食事を楽しむという事の喜びを再び実感することができた。本当に……嬉しかったのだ。その恩義、返さねばならない」


(本当に、こいつはなんなんだ。結局、『咎』まで取り込んでたって事じゃねえか。ギルの《名》から推測できるのは、こいつが『王』って事なんだが、それ以外がさっぱりわからねえ………まあ、あの双子じゃねえが、今わかる事だけで整理すると、こいつがいずれ――巻き込まれる事になる――のは間違いねえだろうな)


 ファングは思索していた。


(『王』、その名の重みは生半可じゃねえ。一刻も早く態勢を整えねえといけねえな)


 未来の『王』を護り導くための――《道》を。



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