エリス、団長就任!?
先立つものが無いと話にならない。
そのため、食事処を再開。
合間合間にファングがエリスを肉体改造し、カティナとトウマは毎日手合わせ。
月一のファングとの手合わせで二人がボコボコにされ、セーネとレーネが何かを企む。
そんなわけで、気付けば、二ヶ月が経過。
そんなある日、セーネとレーネが企んでいた事を一同が知ることとなる。
「へえ、綺麗じゃない」
「だな、少し狭い気もするが、このくらいなら気になんねえよな」
それは、町のほぼ中心に、
「ま、今はこれで充分よ」「今はまだ、ね、ふふふ」
突如現れた『それ』のこと。
「いつもこうなのか、こいつら」
「うん、本気になるとね」
どこからどう見ても、町の酒場。
「でも、あれよね。ここに建てるのって凄くお金かかったんじゃないの?」
そう、ここは町の中心部。間違いなく一等地。
「ふっ、このイルファス姉妹に」「不可能は無いのよ、商売関係ではね!」
不敵な笑顔を浮かべる双子。
おそらく、人には言えないような取引が行なわれているのだろう。全員がそう思っていた。
セーネとレーネ、実は商売の天才。
『ベネスの双子姫』といえば、近隣の商売人が恐れ戦き震えあがるほどの超有名人。
最近はエリスに付き合っていたため半休暇状態だったが、今回の事を機に本格的に復帰。
つまりは、本気を出したわけだ。
「ところで『あれ』は何?」
「俺も気になってた。『あれ』って名前だよな?」
全員の視線が『あれ』に注がれる。
「そうよ。全員に聞こうかと思ったけど」「めんどくさいから独断でね」
『そこ』にはこう書かれていた。
“ 『エリゆか♪』 ”
「あの『エリ』はエリスの事よね?」
「『ゆか』ってなんだ?」
「なんで、ボクの名前が入ってるの!?」
三人が騒ぐ。
まあ、意味がわからないから仕方ない。
ファングは端から興味が無いようだ。
「あれは我らが傭兵団」「『エリスと愉快な仲間達♪』を可愛く略したのよ!」
静寂が空間を支配する……。
その支配は、凄まじく強固なもので、そう簡単には、
「何よ、その反応は」「可愛いでしょ?」
だが、双子がいとも簡単に食い千切る!
「そ、そうね、いいんじゃない?」
「お、俺は二人が決めたなら、賛成するぞ?」
「だっせ――」
「ああああああああ、あああああああ! 喉の調子が悪いんだよね、あはは」
双子除く三人が、ファングを制止する。彼女らの機嫌を損ねると厄介な事になる事を知っているからだ。
「ここは、傭兵団の拠点兼、食事処兼」「酒場兼、住居になるから」
「いろいろ兼ねてるわねえ」
「そういや鍛錬とか何処でやるんだ? こんな町中じゃ」
「ふふん、織り込み済みよ」「あんた達レベルなら、鍛錬してる姿で金が取れる!」
双子の発言に、カティナとトウマが顔色を変える、凄く嫌そうだ。
「ま、実際は客寄せだから安心しなさい」「演舞ってやつよ、いい宣伝になるわ」
「まー、それならいいか」
「でも、魅せる闘い方なんて出来ねえけど、いいのか?」
問題なし、と双子。むしろ実戦に近いほうがいいらしい。
「あんた達を見れば、暴れる奴は減るだろうし」「強い傭兵がいる所に、依頼出したいでしょ?」
そのためのアピールも兼ねる。なるほど、理に適っている。
「『喋る剣』もいる。話題性もばっちり」「月一で元の姿になるのもいいわね」
「おい、俺を巻き込むな、めんどくせ――」
「黙りなさい『狂剣』」「使えるモノは、何でも使うのが私達よ」
「「 何 か 、 文 句 あ る ? 」」
二人の、有無を言わせぬ凄まじい迫力に、さすがのファングも反論をあきらめたのか、
「ったく、仕方ねえ。あんまり、期待するんじゃねえぞ」
完全に折れる。
恐るべきは二人の胆力と商魂。
「セーネ、レーネ、聞いてもいい?」
そこにエリスが言葉を挟む。どうしても気になる事があるらしい。
「なんで、『ボクの名前』が看板に書いてあるの?」
「何でも、何も」「そんなの決まってるじゃない」
エリス以外の全員が、ちょいと意地悪な笑顔。
それを見て、エリスは確信した。
「ま、まさか、そういう事? なんで――」
そして、彼にしては、非常に大きな声で叫ぶ。
「 ボ ク が 団 長 ! ? 」
エリス、団長に就任しました♪