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最終章

私は、卑屈になりすぎているのかしら?


あなたとは、委員会で二言三言、言葉を交わす程度だったけれど、事あるごとに、秘書の方が、オペラや相撲の招待状を送ってきて下さったわ。

あなたが、努めて、私に共通体験の機会をつくって下さってたことは、痛いほどわかっていたの。


そんなによくしてもらって、この上、何をためらう必要があるのか・・と思われるでしょうが、男女の仲は、友人関係とは違うわ。


私は、もう、あの頃のように若くないわ。

あなたが、かつて愛して褒めてくれたものは全て失われてしまって、私は、かろうじて残った形骸を引きずって生きているような状態よ。

あなたに、愛される自信なんて、どこを探しても見つからないわ。




順子、君を好きなことに、いちいち理由がいるのだろうか?


君の言うことを聞いていると、僕はガッカリするよ。

昔の君は、よく僕に言ったよな。

「こんな美人で、聡明で、将来性のある女性は、あなたなんかには勿体無い」って。


君は、本当にうぬぼれ屋で、平気で僕の心に土足で踏み込んできて、僕を夢中にさせておいて、僕を翻弄し尽くした挙句、最後は何も告げず去って行った。・・・本当は、君は僕にひどいことをしたんだよ。


でも、僕は、君のことが好きで好きでたまらなかった。だから、惚れた弱みだろうな。最後まで、僕は君を責められなかった。



順子、年をとったのは君だけかい?

相変わらず、君は、稚拙なうぬぼれ屋さんのままだな。

大体、綺麗で、賢くて、実力があって、優しい女なんて、僕の周囲を見渡しただけでも、ごまんといるんだぞ。


じゃあ、なぜ君なのか・・・。

君は知りたくてたまらないらしいが、僕も解からないことを、君が解かると思うかい?



いいかい、直感を素直に信じるんだ。

何が正しくて、何が誤りだったかなんて、多分、僕らがいなくなった後世で、世評が勝手に決めてくれることなんだよ。


今、正直に、僕を愛してくれているのなら、絶対に、つないだ手を2度と離さないで欲しい。


僕は、必ず君を守るから。そして、必ず幸せにするから。

だから、信じろ。

今の君には、それしかないんだよ。


目をつぶって、激流に飛び込む勇気を持つんだ。


後に残る抵抗勢力は、僕に任せろ。

ケンカして、あいつらをぶっつぶすのは僕の仕事だ。心配するな。



順子、過去にとらわれるのは、もうやめよう。

僕も君も、もう既に、再び回帰しない旅に出発する心準備を終えたはずだ。

違うのかい?



さて、これからのスケジュ−ルだが、君と再び出会えたら、まずブロ−ドウェイに行こうと思う。

そして、眠らない街、ビッグ・アップルで、ひからびた感性に充電して、夜が明けたら、今度こそ、ケンカしないで、二人でエスプレッソを飲もう。


そして、その後は・・・

うん。

ずっと、ゆっくり、君と・・・そう、愛し合いたいんだ。僕らの最終章まで・・。


おわり

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