エピローグ
「本当にお世話になりました」
「何、良いってことよ。結局最後に諸々の代金を押し付けられちまったし」
「先に絵の代金を押し付けたのはアマンダさんですよ?」
レフは門まで見送りに来てくれたアマンダに、改めて礼を言った。
「しかし、可愛い助手を手に入れられるかと思ったんだけどなぁ。彼、物覚えも凄く良いし。将来良い商人になるよ」
「フフフ、うちの可愛い仲間をあげませんよ?」
「ハハハ、良く面倒を見るんだよ」
そう言ってレフとアマンダは振り向いた。クライヴは新しくもらった皮製の鞄を提げ、ガチガチに緊張している。
ロックスは、そんなクライヴを面白がって、周りをグルグル回っていた。
「ほれクライヴ、そんな緊張してたってしょうがないだろ」
「そうだぞクライヴ、これからは楽しい冒険の始まりだぞ!」
「だ、だって、街の外なんて初めてだし」
そういってクライヴがレフに近づくと、レフはその緊張をほぐすように頭を撫でた。
「俺たちが一緒にいるんだ。大丈夫さ」
そうクライヴに言うと、少しだけ肩から力が抜けるのを感じた。
うん、大丈夫そうだな。ポンポンとクライヴの頭をまた撫でてから、リュックを背負う。
「それじゃ、俺たちはもう行きます。お世話になりました!」
「気を付けるんだぞ。またいつでも寄っていいからね」
「ヴォフ!」
「あ、ありがとうございました!」
クライヴもアマンダに頭を下げて、歩き出したレフの後を追う。そしてアマンダに見送られ、彼らは、門の外へと踏み出した。
「さぁて、次はどんな場所かな!」
「ねぇ、そういえばこれからどこへ向かうの?」
「知らん! 気分と筆の赴くままに!」
「えぇ!」
クライヴが驚きの声をあげるのを見てレフは笑い、ロックスは楽しそうに跳ねていた。
「あ、でもクライヴ、旅の仲間になったからには、もうスリをしちゃダメだからな?」
「え! し、知ってたの!?」
「ハハハ!」
そうして一行は街を離れていく。新たな景色を、新たな出会いを求めて。
最後まで『筆と遠吠え』を読んでいただき、ありがとうございます。
本作は私が初めて書いた複数話に及ぶ小説です。
稚拙な箇所が多々ある文章になってしまったにも関わらず、ここまで読んでいただい皆様には感謝してもしきれません。
実は本作を書くにあたって、思いの外長い準備期間がありました。
こんな短い話ですが、何度もプロットを考え直したり、幾つもの資料を調べるといったことをしました。
どうも自分はそういった書き方が合うんだと思います。
次回作についてですが、現在まさに前述した準備期間に入っております。
いつになれば皆様にお見せできるようになるかは分かりません。ごめんなさい。
とはいえ、この準備期間中も活動は精一杯続けて参ります。
複数話ではなく一話完結のショートショートの投稿などもしていきますので、ご興味あれば下記のリンクを覗いてみてください。
X(旧ツイッター):https://x.com/Menoht_Noslocus
note(ショートショート等):https://note.com/menoht
改めまして、ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。
またお会いできる日を楽しみにしてます。
メノウト