表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/14

プロローグ

 春風に揺れる草の香り。交じる絵の具の匂い。狼のロックスは、くしゃっとあくびをした。

 青空の陽気に身を任せてしまおうか。ぼんやりする頭をスクっとあげ、ロックスはもう一度辺りを見渡した。


 視線の先では、馬の群れが寛いでいる。仔馬たちが野を駆け、親達は彼らの遊びを眺めながら、日向を楽しんでいるようだ。

 右へと視線を向けると、牛の群れが草を食んでいる。ぴょんぴょんと跳ね遊ぶ仔牛たちの中に、時々馬達に近づくものもいる。だが親牛達も馬達もそのことを気にしている様子はなく、辺りにはゆったりとした時間ばかりが流れていた。


 やはり過敏に警戒する必要もないな。こんなにも広い草原だ、何かあればすぐに気づけるだろう。

 ロックスは再び大きくあくびをし、相棒の隣で横になる。


 鼻歌交じりの筆の音が止んだかと思えば、ロックスは優しく撫でられていた。頭から首元へ、毛並みをすくように往復する指先。その手に体を擦りつけるようにして、ロックスは相棒の組んだ足に顎をのせた。

「フフッ」と頭上から笑う声に、ロックスは一鳴き抗議した。


「ハハ、分かったよ。でも手を止めさせたのはお前だからな」


 喜色の含んだ返事。もう一度だけ頭を撫られた後、手がするすると離れていく。その感触を少し惜しみながら、ロックスは再開した鼻歌と筆の踊りに、耳を傾けた。

 後一日で久しぶりの街だとはしゃいでいたが、この様子だと今日はもう動かないな。今からでも移動を再開すれば間に合うだろうが、楽しそうだし、いいか。後のことは、後で考えよう。そう結論付けると、ロックスはゆっくりと目を閉じた。


今はただ、このポカポカ陽気と相棒の温もりに身を任せ、うたた寝を満喫しよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ