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狂悖

「…すっかり体が冷えたよ…」



実際汗は冷たく、熱帯夜に似合わず鳥肌が立っていた。



「しかし…自分だって蝶を殺した経験はあるんだ。なぜ君らだけ呪われているのかい…??」



彼は真顔で考えていた。



「おそらく…あ…ちょっと待ってくれ…あぁ、そうだ…」



賢二の頭は、走馬灯のように当時の記憶が廻っていた。





あの時、五時間目の休み時間…図書室のドア…蝶を殺してすぐ…羽をもぎ取った安藤…手には…そうだ鱗粉…彼は手を洗ってはいなかった…鱗粉…図書室…ドアを開けたのは安藤…ドアノブに安藤の手が…ドアを開ける…鱗粉……『鱗粉』??





「…わかったぞっ!!!」



彼は大声を出した。唖然とする僕の肩をつかみ、激しく揺する。



「聞いてくれっ!!ドアを開ける時に安藤の手には鱗粉が付いていたんだ!!だからあの部屋が現れた!!!だが蝶を殺し、直後に教室に戻る際に僕が、僕がドアを開けたが何も起こらなかった!!…なぜか??なぜその時呪いの部屋は現れなかったのか??僕の手には鱗粉がついてなかったからだ!!」



彼は興奮して一気にまくし立てた。



「つまり雄磨、こう言うことだ!!蝶を殺したことがある人間が手に蝶の鱗粉を付けたままドアを開けたら、あの呪いが始まる!!呪いが始まれば、もうただ単にドアを開ければ殺されるんだ!!蝶の呪い!!そうだ……ドアを開けたら……」



その時店に置いてあるテレビから『臨時ニュース』という言葉が聞こえ、僕らは勢いよく振り向いた。



今までテレビの音など耳に入らなかったのに、その臨時ニュースだけはしっかり聞こえたのはなぜだろうあ。



「臨時ニュースです。本日A県B市のC病院が火事になりました。火は既に消火されましたが、逃げ遅れた患者が数名、死亡した模様です。しかも遺体の中にどうやら、人為的(・・・)に殺された遺体があるとのことです。」



キャスターはチラッと資料をみる。



「遺体は両足を切断、もしくはもぎ取られた上、完全に血を抜き取られているようです。これは9年前のA市児童虐殺事件と非常に酷似しています。この遺体の名前は20歳の『日高弓彦』さんと見られ…」



「…ゥウワアアァァァアアッッ!!!!」



そこで賢二は絶叫した。





周りの客が何事かと彼を見る。賢二はそれでもなお叫んだ。



「おい落ち着け賢二!!大丈夫か…??」



声をかけても賢二はしばらく叫び続け、やめると同時にギロッと雄磨を睨んだ。



「何の問題もない。僕は帰る。ドアを開けてくれ。」



賢二はドアの方に近づいていった。



雄磨は動揺し頭が正常に働かなかったが、賢二にドアを開けさせてはならないという事だけは判断できた。言われた通りにドアを開けようと、賢二より先にドアに近づこうと歩み寄った。



しかし、誰かに腕をつかまれる。



「お客様、代金を頂かないと…」



「あ…あ~…そうですね、いやそうでした。どうも済みません。」



会計をすまそうと財布を出した時だった。



ちらりと賢二を見ると、なんとドアに手をかけ、今にも開けそうになっているではないか!!



雄磨は即座に叫んだ。



「賢二!!ドアを開けちゃいけない!!!!」



それでも賢二には聞こえていないようだった。指に力を込めるのがわかる。



ドアが静かに開こうとしている…!!



「賢二ィ!!死にたいのか馬鹿野郎!!!!」



雄磨は財布を放り投げて賢二に駆け寄ろうとした。



賢二の肩に手をかける。しかしその時だった。



ガラガラ…



「賢……ジ…」



賢二はドアを開けてしまったのだった。


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