第23話 抵抗と妥協
「疲れたぁ....」
煙草をくわえ、大きく吸っては大きく息を吐く。
夫の顔は、かなり疲労の色が色濃く見える。私は、はやる気持ちを押さえて、夫の言葉を待った。
夫は時間をかけてゆっくり煙草を味わっている。大きく吸っては肺一杯に満たすことで、落ち着きを取り戻そうとしているようだった。
煙草を一本吸い終わる頃、夫はゆっくり話し始めた。
まず始めに、従姉のお姉ちゃん夫婦は私の実家へ赴き、父一人を連れ出した。
そして私の夫が追いかけるようにお姉ちゃん夫婦宅へ向かい、そこで父、夫、お姉ちゃん夫婦の四人で顔を合わせての話し合いが始まった。
話し合いと言うより、父をお姉ちゃん夫婦が説得する、という構図になっていく。そして、
「このままでは自分の娘夫婦と縁を切ることになる。それでもいいのか?」
ということを父に問いただした。
父は、お姉ちゃん宅で母親の監視が解かれると、素直に話し出したという。
「お母さんはダメだ。頑として何も聞かない」
父の姿は今までの怒りに任せた姿とはまるで違っており、随分と疲弊したようだった。
夫の目には、母親の言う通りにしか行動できず、まともに人と会話が出来ない父が哀れに映った。
父自身は、現状を収めて関係を修復することを願っていた。それには夫に謝らせさえすれば、それが叶うと信じていた。
「それには今までのこと全部水に流してやり直すしかない」
父はそう言うお兄さん(お姉ちゃんの旦那さん)の言葉に戸惑った。
「お母さんが『うん』って言うわけがない」
そう首を降りうつ向く父に、更にお姉ちゃんが被せた。
「それでも叔父さんが言い聞かせなくちゃ駄目!」
お姉ちゃんは私の母親の性格をよく知っている。
子供の頃に、まだ結婚前の若かりし頃の私の母親と一緒に暮らした経験がある。
そして私の母親が "自分はいつでも正しくてトラブルはすべて相手のせい" と問題を起こすことも理解しているのだ。
父がまだ「気持ちが...」とか「言われた言葉が...」等とグズグズしていると、
「あのね叔父さん、この人達は会社で問題おこされて会社にいられなくなるかも知れないのに『水に流してもいい』って言ってくれてるんだよ。『やり直したい』って。娘夫婦がそう言ってるんだから親としてそれに答えてあげなきゃないんじゃないの?本当なら、親なら、何より子供や孫の幸せの方が大事でしょう?」
父はぐうの音も出なかった。
そうしてしばらくの間、お姉ちゃんから説得され続け、ついに
「...わかった」
ようやく父が折れた。
父からその言葉が出た瞬間、父に念を押し、確認して、お姉ちゃん夫婦はすっくと立ち上がった。
「んじゃ次、今から叔父さんの家行くから」
お姉ちゃん夫婦は次の作戦に移った。




