1話 どん底
ここは日本。皆んなが思っているなんら変わらぬ背景の日本。そんな日本に【兎 葉月】という成人男性がいた。彼には4年付き合っているパートナー、いわゆる彼女ってやつが居た。そう、居たのだ。
互いの両親とも仲良くやっており家族絡みのイベントも参加して普通に幸せな時間を過ごしていた。結婚を考えた理想の彼女だ。賑やかで何かあればずっと喋っている太陽の様な存在だった。
毎日笑顔が絶えないほんの少しの幸せでも大きな幸せだった。
具体的に話せって?
ここではこっちの話しはメインじゃない。
パートナーが居た人ならわかるだろう?
ほんとなんちゃないごく小さな幸せの存在がデカかったってだけの話し。彼女の存在が太陽だったって話し。ここではただの冒頭に過ぎない。
ある日その太陽を失った。
最愛の人を失ったのである。もう二度と会えない。会えないのだ。
失恋といったなまぬるい表現ではあらわせない形だった。どん底だ。
想像できるか?いままで俺の中心で太陽のような存在がある日急に、突然に、唐突に、無慈悲に失うこの感情が理解できるか?そりゃ世の中広いからな。そういう境遇の人もたくさんいるだろう。だが大半は、この世界の95%と言っても過言ではない。理解出来ないと俺は思った。むしろ理解なんてしてほしくなかった。
カーテンの閉まった暗い部屋の中ずっとこんな事を考えている葉月であった。
今までの些細な出来事がどんなに幸せでこんなに尽くしてくれたのにと後悔に似たような感情で押し潰された。死にたい、死のうとも思った。
【過去に戻りたい】そんな想い以外考えられなかった。
1週間、なにも喉を通らなかった。水分だけの生活。もちろん睡眠もろくにとれなかった。
仕事も暫くは行けなかった。
体重計に乗るとたった数日で5キロも痩せていた。気力の抜けたまるで抜け殻の様な見た目だった。
このままではダメだと何度も思ったが行動に移せない。なにも考えられない。全てがネガティブな方向へと進んでいく。
『きっと何したって悪くなるだけだ、もう俺には何も無い。』
しかしこんな状況でも10日も飯を食わないと流石に腹は減るもんだ。10日ぶりの飯。
『これ以上は食えない。吐きそう』
口にしたのはおにぎりたったの半分。
身体は欲しっているのに受け付けなかった。
腹は鳴るのに食えない。食えば吐いてしまう。
吐けばまた腹は減る。だが食えない。
なんと悪循環なのだろう。
そんなこんなで175センチ67キロあった体重が
57キロにまで落ちてしまった。堕ちてしまったという方が正しい気もする。
ここまでくると堕ちるところまで堕ちてしまおうと自然に思ったのである。
飯を食ったせいか睡魔に襲われた。
ここまでろくな睡眠をとれていなかったからな。
『すこしは寝れそうかな。寝ないといよいよヤバそうだし。』
そう言って葉月は少し寝たのであった。
『……』『…』
誰かの声が聴こえた気がした。




