68 腐女子と文化祭の話。14
時刻は三時四十分。私は一人で保健室のベッドに座っております。
生徒はこの時間、……えっと、半から四時までだから、三十分間! だけ、ちょっと片付けをするんだ。明日の午前中に本格的にやるんだけど、今日も進めとこう! っていう感じ。あと多分だけど、後夜祭の準備のための時間稼ぎでもあると思う。
「はあー。疲れたー」
地味にデカイ声を出しながらベッドに寝転んだ。
ほんの少し前、やっと涼平兄さんと黒木さんが帰ってくれた。マジで大変だったよ……。現にこの時間まで一人になれてないわけだからね……。
あ、そうそう。保健室の先生いないんだけど、どこ行ったのかな。他の先生みたく文化祭回ってたり、……ああ、職員室いたりする? ……はっ! もしかして、こういう時って出勤すらしてないのか……? いやそれはないか。
氷とかそういうのは兄さんたちが準備してくれたから良いのです。ただ、勝手に使っちゃって良かったのか、それだけ怖い。怒られませんように。
一応職員室行って確認取ろうかな……。事後報告だけども。でも職員室行くのが辛すぎるんだよな。
「……あ、や、違う。その前に連絡しないと」
重大な事実に気が付き、寝転んだ時に放ったスマホを手探りで取る。
LIMEを開けば、結構前に藍沢くんからメッセージが届いていた。
も、申し訳ねえ! それもこれも、兄さんたちが早く帰ってくれないから……!
『松井さんから見つかったって聞いた。どこにいる? 大丈夫?』とのこと。
うー、どうしよう。藍沢くん優しすぎて、保健室って言ったら心配してくれちゃいそうだし……。かといってどこにいるって答えれば良いか浮かんでこない。
♪(通知音)~~
お、瀧田くんだ。
『今健人に「藤咲は先生の手伝いに連行されたらしい」って連絡した。あいつは教室で資源ごみと燃えるごみを分けてるよ』
『ありがとう』
いやー、やはり察しが良い! ナイスタイミング! とにかくすごい! さすが!
……では、私は藍沢くんに謝罪と感謝を述べたいと思います。
『ご迷惑をおかけして、本当にすみません。一緒に回れて楽しかったよ。ありがとう』
こんな感じで良いかな……? うん、やっぱ推しとLIMEなんぞ慣れる日は来ないな。
「はあー」
ため息をつきながら、またベッドへダイブ。仰向けでね。
この後の後夜祭どうしよう。楽しみにしてたんだけどなあ。後夜祭ってもはやライブだからさ、みんな飛んだり跳ねたり結構激しいんだよね。
だから足が持つかどうかが懸念点。控えたとしても絶対アドレナリン出て、そのうち痛いの忘れて跳び跳ねちゃうもん。
……最後列から見るか? いや、でも入る空間あんのかな。
後夜祭って体育館でやるんだけど、三年生が一番ステージに近くて、その後ろに二年、一年生と続いてくんだ。うーん、一年のときの記憶がないな。後ろどうなってるかとか気にしてなかったし。当たり前か。
というか最後列だからって、跳び跳ねないとは限らないよね。それよりなにより、一人で見てもね。つまらなくはないけど、なんか寂しいからさ。
四時半には後夜祭始まるし、それまでに決めないと。
あ、その時間は校舎に入れない……というか、後夜祭終わったら打ち上げ花火もあるんだけどね、……花火を中庭で見るじゃん? その後、校舎戻らず帰らないといけないんですよ。
要は、後夜祭の時間からは校舎に来んな! 後夜祭行かないなら帰れ! ってこと。だから、保健室にもずっといるわけにいかないのです。
でも、最大の理由は跳び跳ねちゃうとかじゃなくて。
……みんなにこのこと知られちゃうのが嫌だから、なんだよね。
だって私の友達、みーんな優しいんだもん。心配しないでって言ったとしても、気にしない振りするだけで、私が気付かないように気を遣ってくれるのが目に見えてる。
せっかくの後夜祭、目一杯楽しんでほしいもん。だから、見るにしても一人前提、で考えてたんだ。
……うん、今日はもう帰るって、透香に連絡しとこ。
私はスマホを手に取る。LIMEを開いて、透香とのトーク画面へ。『連絡してなくてごめん。今日は兄と一緒に帰ります!』と、入れておく。片付け始まってからそれなりに経ってるから、即レスは来ないでしょ。
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