65 腐女子と文化祭の話。11
「!!」
振り向き、目を見開いて固まっております、藤咲です。
「その反応はどう捉えれば良いわけ?」
「えっと、……感謝、かな?」
「なわけあるか」
いや、うん、嘘だけど。いや嘘じゃないよ?! めちゃくちゃ感謝してる!
でも、この反応に関しては見たまんま、『驚き』っすよ。
何て言うのかな、あのね、今の状況を分かりやすく言うと、えっとね、あの……、バックハグ状態です。…………なんか、自分の状況を説明する時にこの単語使うの、とっても恥ずい。
で! そのままの姿勢で振り返ってみたら、そこにいたのは絶賛私と喧嘩中の瀧田氏ですよ。そりゃ驚くよねって話ですよね?!
……あー! 着替えちゃってるじゃん! メイド服見たかったのに! どうせならメイド服のまま探してくれて良かったよ?!
「……安心感すごいね。どうやって鍛えたのさ」
うん、まーじで安心感。包容力っていうの? 絶対過去の恋愛で培われてきたっしょ。
「は? 鍛える? お前筋肉好きなの?」
「え?」
なんでそうなる?
「ていうかそんなのどうでも良い。で? 誰なんだよ、この人たちは」
「あ、えっと、それが……うわっ!」
痛!! 引っ張られて足がもつれたよ!!
ぐえっ! その抱き寄せ方雑すぎ! 腕がお腹にめり込んだ!
ちょっ! 瀧田くんそんな怖い顔しないで! この人怪しい人ではないんです!
あ! 兄さんも応戦しなくていいから! 急に私を引っ張ったから瀧田くんに怖い顔で見られてるだけだよ?!
……もういいや。二人はほっとこう。
あれ、さっきの女性は…………あ、立ち尽くしてるわ。確かに、こんなことになったら誰だって放心するよね。
「兄さん、痛いんよ……」
全部雑。全部強い。ちょっと耐えきれないんで放してくれ。
てかなんで抱き寄せた。久々スキンシップ気まずいかもしれん。
「あ……、悪い……」
……兄さん、明らかシュンとしたね。厳つくなったけど、そういうとこはあんまり変わらない。
放していただけました。けど、支えててもらってた方が良かったかもな。……腕は掴まれたまま、か。壁に寄りかかることもできないんだけど。
「お兄、さん……?」
おうおう、瀧田氏。そなた『全然似てない』って心底思っとるじゃろう。安心せい、私もそう思う。
「うんそう、兄です。で、階段にいるはずなのが黒木さん。兄さんの友達」
「……優、落ち込んでないで出てこい。そいつどうにかしろ」
え、黒木さん落ち込んでんの? 珍しいですねえ(ニヤニヤ)。ちなみにそいつというのは、かの女性です。
あ、出てきた。確かになんか元気ない? ……いや、なんか怒ってね?!
「お前……どういうつもり?」
ヤバい! フレンド(※多分)の人に対しての怒りが頂点だ!
「え、……そ、それは……」
何て言うか悩んでる。ど、どうしよう。私が助け船出した方が良いのかな。
……! ま、待て待て! フレンドさん! 黒木さんを睨み返すな! この流れは良くな――
「優弥! こいつなんなの?!」
指、指された。私がいるのあなたの後方なのに、こっち向かずによく私の位置を正確に指せましたね……。
「こいつ! 藤咲くんの妹とか言って、優弥にまとわりついてるんだよ?!」
「「は?」」
兄さんと黒木さんハモりました。私も心のなかで言ってたから、実質三人でハモってるけどな!
てか、どういうことっすか? 今さっき私さ、瀧田くんに『兄です』ってはっきり紹介したよね。それで兄さんも否定してなかったよね。
あ、あれか。放心してて聞いてなかったんだ。絶対そうだ。
「夏祭りだって、私とはぐれた後こいつと一緒にいたじゃん!」
あ……。その件は、本当にすみませんでした……。
「その後合流できたと思ったらすぐ帰っちゃうし! きっとやなことされたんでしょ?!」
どちらかといえば……いや、止めます。
それにしましても、黒木さんあの後帰ったんですね。祭りなんてアレのためにある、みたいなことほざいてませんでしたか?
「それに!」
なんだ、まだあるのか。……今回のことか? それ目撃してるなら、私が誘ったんじゃないって分かってほしかった。
「藤咲くんの妹さんが、こんなに不細工なわけないもん」
……はは。それかい。自覚はしてるんだけどね、他人からの評価がそれだとめっちゃクるわ。第三者目線でブスってことだからな。
「は? お前頭沸いてんの?」
沸いてはないんじゃないですかね……?
まあ確かに、この状況でそんなこと言ったら火に油だ、とは判断できなかったみたいですが……。
「優、そいつ貸してくんない?」
お、兄さんの手が離れたぞい。
待て待て、完全に人殺す目してない……? あら、拳が握られてますけれども、相手は女性ですからね……?
こうなった兄さんは、私にはどうにもこうにもできません。が、どうにかはしないといけません。その責任があるでしょう。
ということで、まずは、そろそろと瀧田くんの方に向かいます。
「え、うん。てか別に最初から俺のじゃないし」
「え? 待って優弥どういうこと?」
うん、泥沼。
こんなところ、みんなのアイドル瀧田くんに見せるべきではないですね。しかも、この騒ぎで先生が駆けつけちゃうかもしれんし。
「瀧田くん」
ん、瀧田くんいつになく険しい顔してる。
「……なに?」
あれ? 思い違いだったかな。いつもの顔かも。
「立ち去りません?」
「ああ、その方が良さそうだな」
すぐさま同意してくれてありがとう。
足痛いけど、頑張って走ります。
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