60 腐女子と文化祭の話。6
小籠包を食べながら豚汁に並び、それも食べ終わって、今はデザートを探しております。
校舎に戻って歩いてるんだけど、相も変わらず視線が突き刺さる。でももう吹っ切ったわ。仕方ねえ。断りきれなかった私が全責任を持とう! 友達と回って何が悪い!
……透香と偶然会えたりしないかな……。あはは、意志が弱い。
「もう三時間も経つのか。早いね」
「え、もうそんなに?」
もう十三時なんだ。
午後ってことは、透香は教室にいるのか。……あと、瀧田くんも。
「うん。あ、もしかして、ダンス部の……」
今日の午後はダンス部のパフォーマンスがあるんだ。体育館でやるんだけど、ダンス部は人気過ぎて一時間前から並ばないと席がなくなっちゃうんだよ。
「ううん。ただ、藍沢くんと一緒だと時間が早いなと……」
色々と考えちゃって、気付いたら時間が過ぎてるんだよね。あと、ただ単に、推しを眺めてたら時間なんて忘れちゃうじゃん?
「えっ、あ……。そっ……か」
えっと、ちょっと待ってください?! 何故に赤面?!
良く分からんけども、供給ありがとうございます! 合掌!
♪(通知音)~~
「あ」
私のスマホだ。
てか、周りこんなガヤガヤしてんのに聞こえたなんて、着信音爆音過ぎやしないか?
「良いよ、全然確認して」
はい、優男。
「ありがとう」
確認する前に音ちょっとだけ落としとこ。
お、柿ピーからだ。
『瑞穂ちゃん! 聞いたわよ~、健人と回ってるんですって?』
はい、そうですが……。まさか、それだけで連絡してきたっていうのかい?
あ、また来た。
『そこで! ちょっとお願いがあるんだけど』
『なにー?』
なんだろ。買ってきて欲しいものとか? いや、シフトじゃないんだから、自分で買ってくれ。
『健人が誰かに写真撮ろうって迫られてたら、瑞穂ちゃんのスマホで撮ってほしいのよ!』
『え、いいけど……なんで?』
『健人のスマホで撮らせて、後で送ってもらうために連絡先を交換しよう、って言われることがしょっちゅうなの』
『な、なるほど……』
怖。そんな手口があるんやな。
『あと、後で写真送りたいから交換しよう、っていうのもあるから気を付けてね。そういうときはいらないって断ること!』
『おけ。任せろ(^^)d』
『ありがと! よろしくね』
……うん、……これまでも色々、あったんだろうな……。
「ありがとう。終わったよ」
私はスマホから顔を上げ、藍沢くんに話しかけた。
っ! ……目…………! 目が合ってしまった……! 推し、目がうるうるだ。ハイライトがエグい。昨日のメイドも思い出されてヤバいかも! いやかもじゃない! 普通にヤバイ!
「うん。じゃあ行」
「あの!」
ん、突然誰じゃ。藍沢くんの尊きお声を遮るとは……!
「はい」
藍沢くんが振り返った。と同時に私もそっちを見た。
そこには、女の子が二人。ネクタイ、上履きが緑だったから、私たちと同じ学年だと分かる。
あ、話しかけた方のこのおなご、藍沢くんのクラスTシャツの裾を摘まんでいるぞ。
「……あ」
? 知り合いなのかな?
あれ、でもその反応見ておなごめっちゃ喜んでおる。ということは、そんなに親しくはなさそう……?
認知されてるやったあ! って感じに見えた。同士なのかもしれない。
「あの、一緒に写真撮ってくれませんか……?」
……はっ! 早速きた!
「……あ、うん、いいよ。藤咲ごめん、ちょっと待ってて」
おなご、いいよって言われて嬉しそう。もしかして、恋なのか! 恋をしているのか?!
そうかそうか、恋する女の子ってこんなにキラキラするもんなのか。奏音もこんな感じにキラキラしてたし、この説絶対合ってるわ。
「うん! 全然構いませんよ」
……ん? …………いやああ……! 睨まないで!
もう一人の子、これでもかというぐらい目が細くなっとる! というかもはや目を閉じてないか?!
やめてくれ! 私は今この子のこと肯定的に見てただけだからさ!
……いやいや、そんなこと気にしてる暇はない! 柿ピーとの約束を守らなくては!
「あ! じゃあ私が撮りま……」
…………待てよ。私が撮ったら、せっかくの写真が台無しじゃないか? ただ純粋に、好きな人との思い出が欲しい、とかかもしれないじゃんね。
私、推しと写真が撮れる、って時に瑞穂に写真頼むの嫌だもん。
「藤咲?」
「わ、私のスマホ、写真がキレイに撮れるんですよ! ですから、ぜひ使ってください! ね!」
これはガチ。無駄に高性能である。しかし、私はスマホを連絡取るときとマンガ読むときしか使ってない。無駄すぎる。
キョトン顔の付き添いの子に、私のスマホを押し付け……いや、託して! 少し距離を取ることにします。
写真取り始めましたな。
あ、ちゃんと私のスマホ使ってくれてる。すみませんね……。
距離にして、だいたい十メートル。
……うん、こういうときに痛感するよね。次元が違う。我の推し、ほんとは二次元に生息してるのではないだろうか。
その隣の子も、すごいかわいい。こっちも二次元住みか?
あれ、なんか人だかりができ始めたな……。
ちょっ、ちょ! 痛い痛い! どんどん追いやられてく! あ、うわ! 転ぶ……!
「おーおー、取られちったか」
トスっ、と背中が誰かの体にぶつかった。というか、支えられた……?
で、声と共に頭に重さを感じる。誰かが私の頭に手を乗っけた、ってことか。
「……」
はあ。やっぱり……。
見上げれば、予想通りの人だった。なんで来てるんですか。お、今日は私服着てる。まあそうか。制服で来たら怖がられるもんね。
……す、すみません。もう言いませんから目を細めないで黒木さん。
「やめてください。あと、取られたとかいう概念は存在しません」
手を払い、反論しておいた。
はっ! まずい! そういえばこの二人! 印象最悪だよね?!
……頼む…………! 藍沢くん、頼む! この人に気付かないでくれ!
「とか言って。寂しそうにしてんじゃん」
「そりゃこういう状況は誰だってそういうものでは?」
「……じゃあ、そういうのから逃げようか」
「はい?」
ガシッという効果音がつきそうな、華麗な握り。ちょっと強いっす。腕折れるとまではいかないけど、強いっす。
「学校、案内して?」
いくら可愛い子ぶろうが、私には通じんぞ。
「いや去年も来てるでしょ――」
……こんなん誘拐じゃん。
お祭り系、黒木さんと回らないといけない呪いにでもかかってんのかな。
……いや! 今日は絶対回らないからな! 離せ!
お読みいただきありがとうございます!




